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創造力と技術とセンスがぶつかる――トップパティシエへの登竜門的コンクールで感じた音楽と似たエンタメ性

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)
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新人バンドのデビューへの登竜門的なオーディションや、大きなフェスへの出場権をかけたオーディションは、何度か観る機会があったが、先日、あるコンクールの最終審査に誘われ、でかけてみた。それは音楽とは関係ないが、しかししっかりと自己主張をして、顧客を満足させて、自身の“ブランド”を確立、ファンという存在を作り上げるのが「アーティスト」であるならば、シェフやパティシエも「アーティスト」だ――ということを感じさせてくれる時間だった。

お菓子に携わるすべてのプロフェッショナルを対象に、「キリ クリームチーズ」を使ったスイーツで、技術と創造力を競う「第14回キリ クリームチーズ コンクール」だ。2年に一度開催され、今回で14回目を迎えるという伝統あるコンクールだ。女性を中心に人気が高いクリームチーズスイーツは、日々進化を遂げ、その可能性は広がっている。その可能性を拡げる次世代のパティシエ育成を目的にスタートしたこのコンクールは、トップパティシエへの登竜門的存在でもある。

今年は「生菓子部門」「焼菓子部門」「ファクトリー部門」「ジュニア部門(経験年数3年未満)」の合計4部門に、一次審査の時点で213作品の応募があり、最終審査には20作品が選出された。いずれも『「キリ クリームチーズ」の味がよく出ていること』が重要な審査基準となっている。審査を担当するのは各分野で活躍する、スイーツ界を代表する6名のスターパティシエと、食品情報ポータルサイト「もぐナビ」の会員に、消費者目線での審査を依頼。「一般消費者特別賞」が、ファクトリー部門の中の1作品に贈られた。

右:阿部由香氏
右:阿部由香氏
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『Fleurette(フルレット)』で「生菓子部門」の最優秀賞を受賞した阿部由香氏(パティスリー アテスウェ)は、「キリクリームチーズと柑橘系を組みあわせることによって、その味を引き立てることができると考え、オレンジと、そして日本にしかない日向夏を使うことにこだわりました。日向夏を使うことでオレンジも引き立ちます。『Fleurette』というネーミングは、小さい花という意味で、かわいらしいケーキにしたかった。商品化した時に、お客さんに覚えてもらいやすいようなものを考えました。これからもっと感性を磨きながら、パティシエとしても成長してきたい」と、それぞれの食材がそれぞれを引き立て合う、絶妙なアレンジとハーモニーにこだわった。

右:向慶一氏
右:向慶一氏
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『Stollen ARIMA(シュトーレン アリマ)』で「焼菓子部門」を制した向慶一氏(ハイアット リージェンシー東京)は、「賞味期限が2週間という条件と、生地の発酵の部分で審査時間内でできるのだろうかという、“時間”に非常に苦労しました。時間を残り5秒ギリギリまで使って、しっかりしたものを作りました。ネーミングは、地元が兵庫県の温泉で有名な有馬で、そこで昔よく使われていて、今また復活した有馬特産の「有馬山椒」を商品に使用し、そのこだわりを商品名に入れました」と、時間との闘い、そして地元への食材のこだわりを語っていた。

2人のコメントを聞いていて感じたのが、音楽でいうと「タイアップ曲」を作るような感覚なのだろうか。テーマ、お題があって、その中で創造力と技術とセンスを駆使する。そして自由かつ、個性という名のこだわりを発揮して、多くの人から愛される作品を作る――まさにエンターテイメントだ。そして「アーティスト」への第一歩を踏み出した優勝者にとって、このコンクールが、人生の中の大事な1ページになる。

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音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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