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なぜレアルはベンゼマ不在で苦しんでいるのか?エムバペの獲得失敗と後釜を確保しなかった代償。

森田泰史スポーツライター
マドリーの攻撃を牽引するベンゼマ(写真:なかしまだいすけ/アフロ)

ストライカーの不在が、響いている。

レアル・マドリーが苦戦している。直近の公式戦5試合で2勝1分け2敗。リーガエスパニョーラではバルセロナに首位の座を明け渡し、2位に位置している。

得点を喜ぶベンゼマとバルベルデ
得点を喜ぶベンゼマとバルベルデ写真:なかしまだいすけ/アフロ

マドリーが苦しんでいる理由は明らかだ。カリム・ベンゼマの負傷離脱である。

ベンゼマは筋肉系の負傷でリーガ第10節エルチェ戦に出場したのを最後に戦列から離れている。以降、マドリーはセビージャ戦(3−1)、ライプツィヒ戦(2−3)、ジローナ戦(1−1)、セルティック戦(5−1)、ラージョ・バジェカーノ戦(2−3)と調子を崩している。

■エムバペの獲得を逃して

マドリーは今夏、キリアン・エムバペの獲得に失敗した。「レアル・マドリーへの移籍は夢だ」と語っていたエムバペだが、最終的には2025年夏までの契約延長でパリ・サンジェルマンと合意。残留を決めた。

エムバペを逃したマドリーだったが、ベンゼマの後釜について考えていなかったわけではない。ガブリエウ・ジェズス(現アーセナル)、エディン・ジェコ(インテル)、ラウール・デ・トーマス(ラージョ)、クリストファー・エンクンク(ライプツィヒ)...。複数の名前が候補に挙げられていた。

しかしながら、マドリーはベンゼマの代役を確保しなかった。現有戦力でカバーできる。それがカルロ・アンチェロッティ監督の算段だった。

パリに残留したエムバペ
パリに残留したエムバペ写真:ムツ・カワモリ/アフロ

ベンゼマは現在、34歳だ。次の12月には、35歳を迎える。当然、年齢を重ねてきて、コンディションの調整は難しくなっている。また、代表戦との兼ね合いがある。

マテュー・ヴァルブエナとの“セックステープ事件”があり、およそ6年間、フランス代表から遠ざかっていたベンゼマだが、2021年夏に行われたEURO2020の直前に代表に復帰。そこからは再びマドリーと代表でプレーすることになり、稼働が増えた。

■ベンゼマの稼働とコンデイション

今季、ベンゼマは公式戦12試合に出場して6得点1アシストを記録している。出場時間は954分で、全体の53%だ。

ベンゼマは2009年夏にマドリーに加入。それ以降、ゴンサロ・イグアインとの激しいポジション争いに身を投じた2012−13シーズン(プレータイムは全体の52.6%)を除けば、今季のプレータイムの割合はワーストの数字になっている。

レアル・マドリーのアンチェロッティ監督
レアル・マドリーのアンチェロッティ監督写真:ロイター/アフロ

一方、指揮官は自信を失っていない。

「ベンゼマの不在は、ヴィニシウス、ロドリゴ、バルベルデといった選手たちがクオリティを示す機会になった。彼らのおかげで、ベンゼマがいない問題は解決できた」とはアンチェロッティ監督の弁だ。

「ワールドカップと休養期間を経た後、我々にはベンゼマが必要になる。彼が昨シーズンのようなレベルに戻ることを確信している」

決定力を上げたヴィニシウス
決定力を上げたヴィニシウス写真:なかしまだいすけ/アフロ

アンチェロッティ監督の言葉通り、今季のマドリーはヴィニシウス・ジュニオール(10得点5アシスト)、ロドリゴ・ゴエス(7得点5アシスト)、フェデリコ・バルベルデ(8得点4アシスト)が活躍している。

ただ、エムバペ獲得の失敗に関しては、その代償を指摘せざるを得ない。いや、エムバペを獲得できなかったのが悪いわけではない。しかし他の選択肢を含め、ベンゼマの代役を確保しなかったツケは回ってきている。

無論、ベンゼマのコンディションが戻れば問題はない。だが、11月と12月にはカタール・ワールドカップが控えている。

そして、W杯後には冬の移籍市場が開く。マドリーが、どのように動くのかーー。目が離せない状況になりそうだ。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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