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【大阪/天満】飲み物をそそぐと…!グラスの中がキラキラと万華鏡のように変化する「天満切子」の魅力

旅人間はらぺこライター

はらぺこライターの旅人間です。今回は…飲み物をそそぐとグラスの中がキラキラと万華鏡のように変化する大阪生まれのガラス工芸「天満切子」について。

ところで、知ってますか?

大阪天満宮の門前に「大阪ガラス発祥之地」という碑があるのを…。なんだこれ?と感じた人も多いのではないだろうか。

現在、この大阪天満宮の周辺を歩いてもガラスと結びつくような風情はほぼ見当たらないが、戦前は数え切れないほどガラス関連工場があったそうだ。

戦後になり、市街の発展とともに公害問題や消防法などの規制が強化、また後継者難などの問題もあって大阪のガラス産業は衰退したという。

尚、この碑は江戸中期に天満界隈でガラスの製造を始めた長崎の商人・播磨屋清兵衛と深い関わりがあると伝わっている。

今から9年ほど前、私は大阪ガラスの伝統工芸を取材したことがあった。大阪天満宮を参拝しながら「懐かしいなぁ~」と感じながら、北新地の方に向かって歩いた。

そんなある日、気になる店が目に入った。

そう、「天満切子」だ…。

吸い込まれるように店の扉を開けると…

そこには美しく、気品に満ちたガラスの器がズラリと並んでいた。

思わず「おぉ~」と声がでる。

…と同時に「使ってなんぼ!」という言葉が、記憶の片隅から蘇ってきた。

そうだ、そうだ、思い出したぞ。天満切子の特徴は、光の反射を巧みに利用した実用的な芸術グラス。飲み物を注ぐと底の模様が側面の削っている部分に映し出されるのだ。飾って観賞するのではなく、使うことで魅力がグッと上がるのだ。

「これ、水を注いだら、美しく変化するんですよね?」とお店の方に話しかけたら、「良くご存知で」と笑顔でボトルに入った水を持ってきてくれた。

あれれ?もしかして…。実は、偶然だったが、目の前にいた女性は、私が以前、取材をさせて頂いた西川さん本人だった。

西川昌美さんは切子師だ。

かつて、「ガラスは大阪の文化、天満の地からガラスを消したらあかん」と大阪ならではの切子を作ろうと試行錯誤し、従来の切子とは違う『天満切子』を生み出した宇良氏の兄弟(宇良榮一氏・宇良武一氏)の想いを引き継ぐ一人。

工房名の「昌榮」(しょうえい)は、師である宇良 武一氏から授けられた切子師としての名で、榮一氏の「榮」と、西川昌美さんの「昌」の字を合わせられている。

西川さんは、「光の映り込みを見ながら使ってもらうのが天満切子なんですよ。そやから飾っとくだけやなく、ドンドン使って欲しいって思いで作ってるんです」と私に教えてくれた方だった。

天満切子は、デザインがシンプルなのも、光を美しく映す出すため。まさしく「使ってなんぼ!」の大阪らしい切子なのだ。

水を注ぐと…まるで魔法のように輝く。

万華鏡のようなグラス。まさに大阪が誇る伝統工芸だ。

当時の取材の思い出話などした後、西川さんから現在の話を聞いた。

この「天満切子工房 昌榮」は切子技術の追求と、その切子技術を楽しく伝えることを目的に2017年に創業したそうだ。

店舗に併設されている工房に目を向けると、そこには教室に通う人達が青や赤といった色のついた色被せガラスガラスを手に持って作品をつくっていた。

ウィーンウィーンと、グラスを削り磨く音が絶え間なく鳴り響く工房内、ダイヤモンドが埋め込まれた円盤を回転させ、グラスを押し当て粗く削り、砥石で滑らかにしてゆく。

黙々と作業に熱中する姿を覗き込む。「手元だけ写真撮っていいですか?」と声をかけるとニコッと返してくれる。

とっても楽しそうだ。皆さん大人だが、少年少女のような目をしていた。

改めて西川さんに話を聞いた。

9年前にお会いした頃と、「作品も随分と変わったのですか?」と率直にきいてみた。展示品の全てが洗練され、とっても美しかったからだ。

「すっごく進化してますよ」と即答で返ってきた。

以前は基本的な作品が多かったが、現在は新たにデザインし、光の入り方が”より美しく”なるように映り込みを重視した作品が大半だという。「クリスタルガラスはカットの仕方、磨き方で変わるんですよ」と。

「だから、従来の天満切子に、もっと輝きを与えてあげたい。もっと輝きを引き出してあげたい」と目をキラキラと輝かせて話す西川さん。

もっと、もっと追求していきたいと「まだまだ挑戦」だという。

西川さんの作品を手に持つと、重量感の中に心地よさがある「持ちやすさ」が瞬時で分かる。ここに飲み物を注ぐとキラキラと輝きを増すのだ。

これで日本酒など飲んだら「たまらない」だろう。お酒の弱い私ですら、そんな気分になる。世間でいう「うまい酒」に出会った時よりも、天満切子を手に持った時の方が、お酒を飲みたいと思った。不思議な魅力に満ちている。

天満切子工房 昌榮
住所:大阪市北区西天満5丁目14−7-103
電話番号:06-6131-0100
営業時間:9:00~18:00
定休日:日曜・祝日
公式ホームページ(外部リンク)
公式instagram(外部リンク)
地図(外部リンク)

取材協力:天満切子工房 昌榮

はらぺこライター

旅行好きのライター。各地に伝わる伝説や民話、古くから地元で大切にされているモノを親しみやすく紹介|地元で人気の食堂やレトロな喫茶店巡り|人を笑顔にする珍スポット探し|個性的な旅本を出版するかも…|フォローして頂けたら嬉しいです。毎週金曜にLINEニュースで記事配信もしています。

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