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京都国際高の優勝 韓国では一気に注目度UP 大統領がコメント ネットでは「驚くべきディープな分析」も

写真はイメージ 2018年優勝時のもの(写真:岡沢克郎/アフロ)

「京都国際高校の韓国語校歌が甲子園決勝戦の球場に力強く響き渡りました。京都国際高校の甲子園優勝を心からお祝いします」

23日の試合後、韓国の尹錫悦大統領がメッセージを残した。全国高校野球選手権で初優勝を果たした京都国際高校についてのものだ。同校は在日韓国人向けの民族学校だったが、04年に日本の学生も募集し始めたことは知られるところだ。尹大統領によるコメントはこう続いている。

「厳しい条件の中で成し遂げた奇跡のような快挙は、在日同胞たちに誇りと勇気を与えました」

「野球を通じて日韓両国がさらに近づくことを願っています」

ポータルサイトでも多数上位入り…「校歌」絡みのタイトル多く

23日の決勝戦前の韓国での反応はやや静かだった。しかし優勝を果たすや、一気に韓国での関心が高まった。

同国最大手のポータルサイト「NAVER」では、全81媒体のうち、じつに10媒体で関連記事がデイリーアクセスランキングベスト5入りした。そのうち「アイニュース」「釜山日報」では関連記事が1位を獲得した。

「【速報] 韓国系の京都国際高校、日本の『甲子園』で優勝…日本の球場に韓国語の校歌が響き渡る(アイニュース)」

「韓国系の京都国際高校が日本甲子園で初優勝… 日本に響き渡った韓国語の校歌」(釜山日報)

決勝戦前は「コアな野球ファンの関心事」だったが、優勝により一気に「一般層の関心事」となったといえるデータだ。

一方、YouTube上のニュース動画の視聴回数も跳ね上がっている。

「[今日のニュース] 京都国際高校『奇跡の優勝』涙の海に 日本全国で"東海の海"生中継」(MBC)…31万回再生

「本当にやり遂げた。京都国際高校が甲子園決勝で勝利し優勝カップを掲げる」(JTBC)…11万回再生

韓国では「校歌関連」の話と関連付けて優勝を伝えるニュースが多い。ユーザーの反応は当然のごとく歌詞の内容に触れるものも多く…この話題をタイトルに入れず、選手の健闘を称えたJTBCの「本当にやり遂げた。京都国際高校が甲子園決勝で勝利し優勝カップを掲げる」のコメント欄を覗いてみよう。韓国のユーザーたちはどんな反応を示しているのか。読者の反応が多いものから順に紹介していく。

「160人しかいない学校で...攻撃練習もできないグラウンドで...古い野球ボールにテーピングして使う野球ボールで...本当にすごい...」

「拍手! 映画になるかも? 校歌が胸に染みたけど。結局やり遂げたんだね」

「レベルの高い野球をした京都国際高校の選手の皆さんに本当に感謝します。最高でした!! 優勝心からおめでとうございます。来年も甲子園に出場して良い成績となることを応援しています」

「なぜか涙が出てくる。困難な状況の中でも歴史を作った学生たち、とても感動的で胸が熱くなる。日本人であれ在日韓国人であれ、韓国系学校の名を輝かせた誇らしい君たち、前途に良いことだけがあることを願う。とても感動的でドラマチックな勝利だった。監督さんもありがとうございます」

「感動ですね....まるで子供の頃に見たH2の漫画のような内容と画面ですね....高校生たちの情熱とロマンが感じられます....でも韓国の高校野球はなぜこんなに衰退したんでしょうかㅠ 母校の野球部を応援しに東大門球場に行って声が枯れるほど応援していた時代が思い出されます...あの頃は4強から卒業した先輩たち、会社員たちまで応援に来ていたのに.....今はそういうのがないですね..(涙)」

コアなファンのディープ分析

コメントの中に「漫画」というフレーズが出てくる。やはり韓国では「日本=漫画」というイメージもあるようだ。高校野球にもそれを重ねる雰囲気はあるという。

「韓国内での野球人気は、1970年代の自国の高校野球から始まりました。今は無くなった東大門野球場などで大きな注目の下、熱戦が繰り広げられたのです。当時、韓国で多くの野球漫画が出版されましたが、それらの漫画は日本の甲子園を題材にした漫画の影響をかなり受けたものでした。特に80年代はあだち充先生の影響が大きかったと見ています」(元韓国スポーツ紙デスクのチェ・ミンギュ氏)

今回の優勝、まるで漫画みたい。そんなイメージもあるようだ。ちなみに23日の試合前後から、韓国の大型ネット掲示板ではある漫画の一コマが話題になっている。

韓国でも大人気の「未来少年コナン」の登場人物で、京都泉心高校の百人一首チャンピオン大岡紅葉のセリフだ。

青山剛昌/小学館
青山剛昌/小学館

黒髪の登場人物が「わたし達、東京から修学旅行に来てて…」と切り出すや…

「へえー 東京ですか… そらわざわざ地方からようこそ おいでやす」

と紅葉(セリフ訳は漫画オリジナル版より)。

これ、何なのかというと、「京都の人たちに多いとされる気質まで理解されているということ」「今回、京都代表と東京代表の決勝戦だったという点が認識されていた」ということだ。

コメント欄には「地方均等発展がうらやましい(韓国は中央集権型の発展)」といった内容が書き込まれている。筆者はこれを韓国の野球ファンから紹介された。「そんなことまで知ってるの?」と聞くと「毎年、どれだけの韓国人観光客が日本に行ってると思ってるんだ?」との回答。今回の京都国際高の優勝の意味、本当にコアな韓国の野球ファンの層にはかなり深いところまで知られているというところか。

(了)

吉崎エイジーニョ ニュースコラム&ノンフィクション。専門は「朝鮮半島地域研究」。よって時事問題からK-POP、スポーツまで幅広く書きます。大阪外大(現阪大外国語学部)地域文化学科朝鮮語専攻卒。20代より日韓両国の媒体で「日韓サッカーニュースコラム」を執筆。「どのジャンルよりも正面衝突する日韓関係」を見てきました。サッカー専門のつもりが人生ままならず。ペンネームはそのままでやっています。本名英治。「Yahoo! 個人」月間MVAを2度受賞。北九州市小倉北区出身。仕事ご依頼はXのDMまでお願いいたします。

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