プロ野球キャンプ地の感染症対策ー阪神タイガース・ファーム(安芸)
■徹底している阪神タイガースの感染症対策
阪神タイガース・ファームのキャンプ地、高知県の安芸市営球場に取材に行ってきた。
昨年3月のオープン戦以来、約1年ぶりのタイガースの“現場取材”である。昨シーズンはコロナ禍により取材メディアの人数制限があり、球場取材がかなわなかったのだ。
今キャンプも1軍の宜野座には行けなかったが、ファームのキャンプには1クールだけ、サンスポの取材で行くことができた。通常なら地元の方にお会いし、食事に出かけて高知の郷土料理に舌鼓を打ち、いろいろな話に花を咲かせるのだが、今年はそれができない。無観客のスタンドも静かでとても淋しい。
プロ野球界では感染症対策が徹底されている。取材陣はまず、現地に入る前3日以内のPCR検査が必須だ。キャンプ地の受付にて、その陰性証明を提示することが義務づけられている。また長期滞在する場合は、休日ごとに現地でのPCR検査が課せられる。
受付には体温検査の機器も設置され、出発前の検温と併せて「体調モニタリング表」に記入する。37.5以上または発熱症状の自覚、強い倦怠感や感冒症状(喉、咽頭痛、息苦しさ等)、味覚・嗅覚異常などの異変、また体調不良があるという場合は、当然、取材は遠慮しなければならない。
そして、選手はもとより球団関係者とも極力接することがないよう、ゾーニングがきっちりとされている。「取材可能区域」「移動可能区域」「取材禁止区域」がマップに示され、報道陣に周知されている。メイン球場のスタンド、ブルペン、プレスルームには立ち入り可能だ。
球場のいたるところには、消毒用のスプレーが置かれている。目に入るとついついシュッシュとしてしまうものだ。
サブグラウンドの出入り口付近には「ミックスゾーン」が設けられていて、選手や首脳陣に話を聞くのはその場所に限られている。もちろんお互いにマスク着用で、ソーシャルディスタンスを保った上で、だ。
ただ、選手や首脳陣がそこを通るのは一日に一度、安芸ドームに引き上げるときだけなので、タイミングが合わず逃してしまうこともある。
練習後にドーム内で話を聞くチャンスがあったこれまでと違って、なかなか厳しい取材環境ではある。しかし「ミックスゾーン」があるだけでも大いに助かる。
■他球団も同じく…
2月21日は社会人チームの三菱自動車倉敷オーシャンズとの練習試合だった。ドラフト候補の廣畑敦也投手の取材を申し入れたが、「緊急事態宣言が出ている区域からのメディアの直接取材はNG」という同社の規定により、代表による電話取材となった。しかたのないことだ。話が聞けただけ、よしとしなければ。
同23日は春野総合運動公園野球場で埼玉西武ライオンズ・B班のと練習試合が行われたが、同じく感染症対策は徹底されていた。検温やPCR検査による陰性結果の提示もタイガースと同じだ。
取材可能エリアはスタンド席のみで、カメラマンもグラウンドレベルでの撮影はできず、スタンドからになる。青いフェンスはなかなかの強敵で、反射防止テープが貼られているところやフェンスの上から撮れる場所を探すなど、カメラマンも苦心の撮影をしていた。
記者席が利用できないので充電環境がないのは不便だが、それもあらかじめ通達されていたので対処して赴いた。
試合後は、選手バスの駐車場にて臨時の取材エリアを設けてもらい、話を聞くことができた。両チームの配慮がありがたかった。
■一日も早い終息を祈る
どのチームも絶対に感染者を出さないよう、細心の注意をはらっている。メディア側ももちろん同じ思いでいる。どうか一日も早く終息して、日常が戻ってほしい。
「秋には普通にお客さんに入ってもらっての秋季キャンプが見たい」。
高知県観光コンベンション協会の坂本龍馬スポーツ課長は、そうつぶやいた。坂本氏は現在の職に就いて8年半、毎年プロ野球のキャンプに携わっている。
「今年こそはタイガースに優勝してもらいたい。ライオンズの優勝は見てるんだけど…。タイガースが優勝するまでは、この仕事、辞められないなぁ(笑)」。
そう言って、にっこり笑った。
今回のキャンプ取材で、あらためて現場取材はいいなと感じた。とくにキャンプは朝も早く、必然的に夜も早々に眠りにつく。移動の歩数も多く、安芸市営球場のアップダウンはかなりの運動量を与えてくれる。健康的な日々を送れた。
なにより選手と対面で話ができるのがいい。ときにはその表情が、息遣いが、言葉より雄弁であったりもするからだ。
間もなくキャンプも打ち上げだ。オープン戦を経てシーズンに入るが、一日も早く通常の球場取材ができる日が来ることを願う。
(撮影はすべて筆者)