【自民党派閥のパーティー券問題】 岸田首相、宏池会を離脱したからといって、その責任は免れませんよ!
岸田首相が宏池会を離脱を表明
岸田文雄首相が12月7日、会長を務めていた宏池会(岸田派)を離脱することを表明した。清和会(安倍派)などの派閥が20万円超のパーティー券の大口購入者名を記載しなかった問題で、国民から厳しい視線が向けられているためだという。
この問題をいち早く報じたしんぶん赤旗によれば、自民党の5つの派閥で2018年から2021年までの不掲載事例は合計94件に及び、記載されなかった金額は合計3908万円にのぼるという。不記載金額の最多は清和会の1946万円だが、宏池会も212万円分の不記載が確認されており、岸田首相も会長として刑事告発を受けている。
そもそも総理大臣に就任すれば、党内での中立な立場を担保するため、派閥を離脱するのが通例だ。故・安倍晋三元首相も在任中は派閥を離れていたが、健康上の理由で2020年9月16日に総理大臣を辞任した後、それまで会長職を務めていた細田博之氏が衆議院議長に就任したのをきっかけに、2021年11月11日に清和会に復帰して会長に就任した。
首相就任後も会長職を手放さず
それに比べて岸田首相の宏池会会長の地位に対するこだわりは、非常に強いものだ。2012年10月に古賀誠元自民党幹事長から同派を継承して以来、岸田首相は11年間もその地位にあった。あたかも会長職を手放せば、誰かに蹴落とされてしまうと信じているかのようだ。
たとえば今年9月13日に内閣改造が行われたが、「宏池会のナンバー2」と見なされている林芳正前外務大臣が更迭され、後任に上川陽子元法務大臣が就任した。林氏は他の大臣にも党の役職にも就かず、無役のままに宏池会座長に就任。宏池会に近い筋によれば、「林氏は岸田首相から、派閥の仕事に専念してほしいと言われた」とのことだったが、それならなぜ岸田首相は会長職を林氏に譲らなかったのか。単なるまとめ役にすぎない座長は代表権を持たず、いかにも軽すぎるポストだ。
林氏を警戒か
これではまるで岸田首相が林氏を警戒しているように見えるが、それには理由がないわけではない。参議院議員だった林氏は、2021年の衆議院選に転出し、山口3区で当選した。それまで山口3区を選挙区にしていた河村建夫元官房長官は政界引退を余儀なくされ、河村氏の長男の建一氏は、いったん党本部によって決定された中国ブロックでの公認を取り消されている。
もっとも建一氏の中国ブロックからの出馬が阻まれたのは、林氏だけが原因ではない。だが林氏は自民党山口県連を制覇し、故・安倍元首相の後継として今年4月の山口4区補選で当選した吉田真次衆議院議員を押しのけて、新・山口3区を獲得した。
こうした光景を、山口県の隣の広島県から岸田首相が見ていないはずはない。ましてや「人事の岸田」であるから、何でもって林氏を制するのが最も効果的かは十分すぎるくらい知っている。
ましてや林氏は岸田首相と4歳しか違わず、参議院議員でありながら岸田首相に先んじて2012年9月の総裁選に出馬したこともある。だから岸田首相にとって林氏は、後継ではなくライバルという関係なのかもしれない。そうでなければ、「ポスト岸田」として林氏の後任の上川外務大臣の名前が挙がるはずがない。
実際に「ポスト岸田は上川大臣」の噂は首相官邸側から聞こえている。その背景には、「もし退陣してもキングメーカーとして傀儡政権を操りたい」という岸田首相の思惑が見える。「野心のない上川大臣なら、それが可能だ」と判断したのだろうが、果たしてどうか。
派閥を離脱しても責任からは逃げられず
なお、派閥から離脱したからといって、その責任から回避できるわけではない。宏池会会長であった岸田首相は、在任中に発生した問題について国民に説明する義務がある。そうでなければ、下降傾向が止まらない内閣支持率は、さらに低下していくだろう。
今回の派閥のパーティー券の問題では、今のところ関係者の誰ひとりとして責任を果たさず、ひたすら逃げ回っている状態だ。これではますます政治に対する信頼は、失われるだけではないのか。わざわざその先陣を切っているのが首相というのが嘆かわしい。