なぜリヴァプールは不振に陥っているのか?サラー、マネ、フィルミーノの得点力ダウンとクロップの悩みの種
何かが、おかしい。
リヴァプールが不振に陥っている。現在、プレミアリーグで勝ち点43で7位に位置。首位マンチェスター・シティとの勝ち点差は12ポイントだ。
2019-20シーズン、圧倒的な強さでプレミアリーグを制した。チャンピオンズリーグでは2017-18シーズンに準優勝、2018-19シーズンに優勝を達成している。そのリヴァプールが、今季は非常に苦しんでいる。
不振の理由は、いくつかある。
第一にアタッカー陣の得点力ダウンだ。ロベルト・フィルミーノ、サディオ・マネ、モハメド・サラーの3トップはリヴァプールの要になっていた。ただ今季は3月3日時点で38試合をこなしていたリヴァプールにおいてサラー(24得点)、マネ(11得点)、フィルミーノ(6得点)という得点数だ。
チェルシーではタミー・エイブラハム(12得点)、オリヴィエ・ジルー(10得点)、ティモ・ヴェルナー(10得点)、パリ・サンジェルマンではキリアン・ムバッペ(23得点)、モイーズ・キーン(15得点)、ネイマール(13得点)、バイエルン・ミュンヘンではロベルト・レヴァンドフスキ(34得点)、トーマス・ミュラー(13得点)、レロイ・サネ(8得点)、マンチェスター・シティではラヒーム・スターリング(13得点)、イルカイ・ギュンドアン(13得点)、ガブリエウ・ジェズス(11得点)とビッグクラブの前線の選手たちは得点を量産している。
「人々はサラー、フィルミーノ、マネに対する信頼を失ってしまったようだ。私からすれば、あまりに早いがね。私は彼らの働きぶりを実際に見ている。チームの全員と同じように、解決策を探しているよ」とはユルゲン・クロップ監督の言葉だ。指揮官の信頼は揺らいでいないが、数字の面では3トップに物足りなさが残る。
そのクロップ監督といえば、”ゲーゲンプレッシング”を代名詞とする指揮官である。
2008年から2015年まで指揮を執ったボルシア・ドルトムントでは、マッツ・フンメルス、マリオ・ゲッツェ、マルコ・ロイス、ギュンドアン、レヴァンドフスキらを擁して2010-11シーズンと2011-12シーズンにブンデスリーガで優勝を果たし、2012-13シーズンにチャンピオンズリーグで準優勝した。
プレスにプレスをぶつけるカウンタープレスの源流はその時からあった。しかしながらリヴァプールでは、速攻に傾倒しなかった。以前、マネがこう語っている。
「クロップにとっては、ボール保持時とボール非保持時のいずれも重要だ。だけど、僕たちは巷で言われているようなカウンター頼みのプレーをしているわけではない。できる限りポゼッションをしたいと考えている。そうすれば、確かな状況をつくれるからだ。僕たちがスペースに走るのは、ボールを持っている味方の選手がパスを出しやすくするためなんだ」
また、アシスタントコーチのペーター・クラビーツは次のように話している。
「リヴァプールでのファーストシーズンを終えて、我々はポゼッションにフォーカスしようと思った。ボールを保持しながら、プレースピードをコントロールする。それが我々の考えだった。ただ一方で、完全なるボール支配は不可能だということを忘れてはいけない」
そこで、クロップ監督が注力したのは中盤の構成だ。
クロップ監督は2018年1月にフィリペ・コウチーニョ(バルセロナ/移籍金1億2000万ユーロ/約153億円)、2018年夏にエムレ・ジャン(ユヴェントス/フリートランスファー)を放出した。
クロップ監督はジョーダン・ヘンダーソン、ジョルジニオ・ワイナルドゥム、ジェームズ・ミルナー、そして2018年夏に移籍金5000万ユーロ(約64億円)で獲得したファビーニョを回しながら起用していった。
そして、この夏にはバイエルンからチアゴ・アルカンタラを移籍金3000万ユーロ(約38億円)で獲得した。バイエルンでジョシュア・キミッヒやレオン・ゴレツカと中盤を組み、昨季のチャンピオンズリーグを制した選手の満を持してのプレミア移籍だった。
クロップ監督はドルトムント時代のギュンドアンのような選手を欲していたのだろう。だが今季はフィルジル・ファン・ダイクやジョエル・マティップの負傷離脱があり、ファビーニョやヘンダーソンをセンターバック起用せざるを得ない試合が続いている。
前線の決定力不足、負傷者続出、強いられる中盤の構成のプラン変更...。コロナ禍の過密日程の影響は否定できない。だが、その中で勝利を求められるのが現在のリヴァプールであり、世界最高峰の指揮官と謳われるようになったクロップ監督の宿命なのかもしれない。