シーズン序盤、ホームラン激減はどれほど異常なのか?
1試合あたり1本以下
2015年のプロ野球が開幕して2週間経とうとしています。5節を終了したので、ちょうど対戦カードが一巡したことになります。こうしたシーズン序盤で目につくのは、投手戦の多さです。昨年まで投壊が目立ったヤクルト・スワローズは、開幕から14試合連続で相手チームを3点以内に抑えるというプロ野球記録を更新したほどです。各チーム、エースの踏ん張りが目についています。
まだ涼しい春先は、そもそも投手陣にとっては有利な季節です。これから梅雨を迎え暑くなる夏にかけて投手陣が打ち込まれるのはいつものとおり。しかし、それにしても今シーズンは投高打低のような印象があります。
実際、それを証明するデータもあります。両リーグともホームランがとても少ないのです。現在(4月12日)、1試合平均のホームラン数は、セ・リーグが0.8本、パ・リーグは0.97本です。今年からソフトバンク・ホークスの本拠地であるヤフオクドームには、昔のラッキーゾーンにあたるホームランテラスが設けられました。しかし、それでも全体的には増えるどころか減っているのです。
もっとも少ない広島カープなどは、14試合を経過していまだに2本のみです。昨年ホームラン王のエルドレッドが離脱しているとは言え、あまりにも少ないのです。
どうもおかしくないでしょうか?
低反発球時代に逆戻り
ここでしっかりと確認しておきたいのは、これまでの推移です。ホームランは、打球の飛距離を示す指標のひとつとなります。それはどのように増えたり減ったりしたのでしょうか。1986年から今シーズンまでの1試合あたりのホームラン数をグラフにしてみました。
こ30年間には、さまざまなことがありました。たとえば、大型ドーム球場の増加によるホームランの減少(1980年代後半から1990年代)、それに対応するための飛ぶボール使用によるホームランの増加(2000年代前半)、その抑制のための低反発球による統一化(統一球)によるホームランの激減(2011~12年)、そして反発係数を少し戻した新しい統一球の使用による揺り戻し(2013年~)といった動きです。2000年以降は、とくに変化が多かったように感じます。
そこで押さえておきたいのは、今シーズンの序盤戦です。セの0.8本、パの0.97本という数字は、2011~12年の低反発球をも下回る数字です。セは昨シーズンの半分以下です。日本プロ野球の歴史をさらに振り返っても、戦後の2リーグ制以降で1試合あたり平均1本以下となったのは、1953、54、57、58年のパ・リーグ、そして統一球時代である2012年のパ・リーグだけです。
まだ全試合の1割ほどしかシーズンが進んでいない春先ではありますが、これは明らかに低い数字だと言えます。
NPBへの不信感
今シーズンは、統一球の基準が、反発係数の範囲値(0.4034~0.4234)から目標値(0.4134)に設定されました。つまり、より厳格に検査してボールの統一性を上げたはずなのです。しかし、それでも残念ながら生じてしまうのは、「本当に去年までと同じボールなのか?」という疑問です。あるいは、反発係数の測定方法そのものになにか問題があるのではないか、などとも考えてしまいます。
日本プロ野球機構(NPB)には申し訳ないのですが、こうした疑問が生じるのは、やはり2013年のシーズン途中に発覚した不祥事があるからです。前年(2012年)まで2年間使っていた統一球が、こっそりとモデルチェンジされていたという一件です。このことにより、結果的に当時のNPB・加藤良三コミッショナーは辞任に至りました。加藤氏は、このモデルチェンジを把握していなかったと弁明しましたが、把握して隠していても、把握していなくても、どっちにしろ問題があったのです。
この一件は、日本プロ野球の信頼をひとつ損なう結果となりました。NPBが組織として上手く機能していないことは、2004年に起きた球界再編問題のときからファンは強く感じています。あのときは古田敦也選手会長をはじめとする選手の力によって、なんとか悪い方向には進みませんでしたが、それでも近鉄バファローズが身売りではなくオリックスに吸収され、一方で楽天イーグルスが誕生するという不透明な決着を見せました。ファンは、そうした過去を決して忘れていません。
今シーズンのこのホームラン数の減少がいったいなにを意味するか、現段階で結論づけるのはまだ時期尚早でしょう。たまたま今年は春先に投手陣が極端に良く、エルドレッドやバレンティンといった長距離砲が離脱しているからかもしれません。
しかし、やはりこのホームラン数の減少からは決して目を離してはならないでしょう。もちろん杞憂であればいいのですが──。