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一人暮らしの「寒い冬もシャワーだけ」が変わる

櫻井幸雄住宅評論家
コンパクト住戸にのみボディシャワーを設置した「プラウド牛込柳町」。筆者撮影

 寒さが身にしみる冬は、家に帰ってから温かいお風呂に入りたい。そう思う人が多いのだろう、冬は入浴時間が長くなるもの。湯船につかっている時間が長くなる結果だと考えられる。

 しかし、「冬でも、あまり湯船につかっていないなあ」というのが一人暮らし、なかでも仕事と夜のつきあいで忙しい独身男性は、ゆっくりお風呂に入ることより、早く寝たいとなりがち。睡眠を優先すれば、湯船を洗うのが面倒で、お湯はりの時間がもったいない。一人暮らしは、仕事と家事を一人でこなさなければならないため、省かれるモノが多くなる。バランスの取れた手作り料理、こまめな掃除や洗濯……湯船にお湯をはっての入浴も、ついつい省略されがちだ。結果、寒い冬もシャワーだけで済ますことが多くなってしまう。

 学生用の賃貸住宅では、スペースを節約するため、はじめから湯船なしでシャワーだけという間取りもある。シャワーだけなら半畳ほどのスペースで設置できるので湯船+シャワーよりも設置しやすいからだ。この場合も、否応なく「冬でもシャワーだけ」の生活を強いられる。

シャワーだけでも、十分温まる浴室設備とは

 世の中には、寒い冬でもシャワーだけの生活をしている一人暮らしが少なくない。

 そこで、近年増えてきたのが、「シャワーだけでも十分に温まる浴室」。たとえば、浴室にミストサウナの機能を加えた浴室だ。

 ミストサウナは、浴室換気乾燥機の付帯機能として登場した(今は、単独で後付けできるものもある)。お湯を細かい粒子にし、熱風とともに噴霧し浴室全体を温かくしてくれるものだ。公共浴場にあるドライサウナのように高温にならないし、乾燥もしない。

 銭湯に行くと、洗い場全体が湯気で覆われていることがある。あのような状態を我が家のお風呂でつくり出す装置と思えばよい。

 ミストサウナが噴霧するミストには、「マイクロ」と「スプラッシュ」の2種類がある。マイクロは非常に細かい霧状で、そのなかで本を読むこともできる。これは、半身浴に向いたものだ。これに対し、スプラッシュは盛大な噴射となり、温かい雨で全身がびしょ濡れになるような感じ。このスプラッシュを作動させれば、湯船に入らなくても十分に体が温まる。

マンションの販売センターに設置されていたミストサウナの体験コーナー。筆者撮影
マンションの販売センターに設置されていたミストサウナの体験コーナー。筆者撮影

 入浴の3〜5分前にスプラッシュを作動させておけば、浴室内は熱帯気分。盛大な噴射のなかで、シャワーを使って髪や体を洗えば、湯船で温まるのと洗いを同時に行うようなものだ。湯船を洗ってお湯をはるよりも大幅に手間と時間が省かれ、それでいて体がポカポカに温まる。水道代やガス代も安上がりだ。

さらに、ボディシャワーの機能を加えた浴室も登場

 シャワーとミストサウナの併用は、一人暮らしの大きな味方となる。が、最新のマンションでは、さらに高性能の浴室機能も加えたところがある。

 その工夫を見たのは、現在分譲中のマンション・野村不動産のプラウド新宿牛込柳町を取材したときだ。販売センターでは、1LDKを中心にしたコンパクト住戸の浴室部分が展示されていた。冒頭に掲げた写真が、その装置。改めて、ここでも掲出するが、コンパクト住戸の浴室には最新のボディシャワー設備が付けられる。同マンションでは、通常のシャワーに加え、ミストサウナを設置。さらに、ボディシャワーの機能も加えるわけだ。

写真中央右、複数の噴出口を設けているのがボディシャワーだ。手持ちシャワーとは別に、頭上に固定のシャワーも設けられている。頭上の固定シャワーはレインシャワーとも呼ばれ、ストレス解消効果が大きいとされる。筆者撮影
写真中央右、複数の噴出口を設けているのがボディシャワーだ。手持ちシャワーとは別に、頭上に固定のシャワーも設けられている。頭上の固定シャワーはレインシャワーとも呼ばれ、ストレス解消効果が大きいとされる。筆者撮影

 ボディシャワーは、横から複数のシャワーが出てくるもの。非常に贅沢な浴室設備で、一般的な分譲マンションには付けられない。ボディシャワーを浴室に設置するのは、都心の高額マンション。それも、プレミア住戸と位置づけられるとびきり値段の高い住戸だけ、というのがこれまでの常道だった。

 ところが、プラウド新宿牛込柳町では、そのボディシャワーを3LDK住戸には付けず、あえてコンパクト住戸にだけ付けている。高級かどうかではなく、「一人暮らしに役立つ設備」である点を重視した結果だ。

 結果、通常シャワーのほか、浴室全体へのミストサウナに体正面からのボディシャワー、と噴射だらけの浴室ができあがることになる。これなら、湯船にお湯をはらなくても、十分な温かさと豊かさを味わうことができるだろう。

格上設備を増やせば、1LDKブームも

 従来、分譲マンションの1LDKは3LDKより設備のランクを下げるケースが目立った。3LDKにはディスポーザーが付くが、1LDKには付かない。3LDKはタンクレストイレだが、1LDKは通常型トイレ……設備のランクを下げれば、分譲価格を抑えることができる。それで、投資目的(人に貸して家賃収入を得ようとする)の人にも買ってもらえるようにしたわけだ。

 しかし、自ら住む目的で1LDKを購入する単身者には、便利な設備満載のマンションのほうが住みやすい。多少、分譲価格が高くなっても、だ。

 私が『買って得する都心の1LDK』という著書を毎日新聞出版から上梓したのは2017年7月。1年半前に1LDKブームを予感して書いたのだが、本当に1LDKがブームになるためには、このように満足度の高い1LDKが都心に増えてゆくことが必要なのだろう。

住宅評論家

年間200物件以上の物件取材を行い、全国の住宅事情に精通。正確な市況分析、わかりやすい解説で定評のある、住宅評論の第一人者。毎日新聞に連載コラムを持ち、テレビ出演も多い。著書多数。

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