最新ストレス発散法はちょっとキケン? ニューヨークで今キテる「斧投げバー」とは
ニューヨークに住んでいると「流行やトレンドは何ですか?」という質問をよく受ける。この街は多種多様な人種、民族が住んでいるから、なかなか適当なこれという答えが見つからない。
トレンドとは、現象が一つ生まれても店が一つオープンしてもそうは呼べないが、同様のビジネスが別会社により短期間で次々にオープンしているのだとしたら、歴とした「トレンド」「ブーム」と呼べるだろう。
そういう意味で、今のニューヨークのトレンドの一つはこれだ、というものがある。ここ数ヵ月で、とある形態のバーが続々とオープンしている。
「斧投げバー」(Axe Throwing Bar)だ。
斧投げとは、本物の斧をダーツのように標的に投げて得点を競い合うスポーツで、アルコールなどを飲みながらプレーする。
これがあまりにも「ストレス発散になって楽しすぎる」、「グサッと刺さったときの爽快感サイコー」とニューヨーカーに称賛され、ここ2、3ヵ月の間に、ブルックリン地区やクイーンズ地区、また隣のニュージャージー州にも次々と新しい斧投げバーがオープンしている。
(Yelpによると、現在ニューヨークおよびトライステートエリアで確認できる斧投げバーは12軒。うち3分の1はここ3ヵ月以内にオープンしたもので、引き続き新スポットがオープンしている。またこのブームはニューヨークのみならず、全米に広がっている)
2017年12月にオープンした、ニューヨーク市内初の斧投げバー、キック・アクス・スローイング・ブルックリン(Kick Axe Throwing BROOKLYN)で、斧投げでどれほどストレス解消できるか、体験取材した。
初心者でも簡単にできる
キック・アクス・スローイング・ブルックリンのマネージャー、ダン・サリバンさんに、まずこのスポーツの歴史について聞いてみた。
「10年ほど前にカナダで始まったとされています。アメリカではここ数年で徐々に認知されはじめました。ただし今でも知らないアメリカ人はたくさんいて、うちで初体験する方も多いです」
斧投げの楽しさは「ストレス解消とリラクゼーション」と言い切るダンさん。お酒を飲みながらワイワイ楽しくプレーできるとあり、普段のデートや婚前のバチェラーパーティー、中には会社のチームビルディング(結束力を高める集い)で訪れる人も多いとか。
斧投げ、一歩間違えたら凶器。「危険なのでは?」
アルコールを飲みながら本物の斧を投げることについて危険性や安全管理についても確認してみた。
「皆ゲームに集中し、節度を持ってプレーを楽しんでいるので、泥酔して暴れるような人は皆無です。万が一のためにウェイバー(契約書)にサインをしてもらうのと、レーンには必ずアクスパートがそれぞれつき、常に細心の注意を払いながら指導しているので、安心してプレーを楽しめます」
(アクスパートは、axeとエキスパートの造語で、指導スタッフのこと)
斧を持てるレーン内とお酒を飲めるバースペースはロープで厳密に線引きされており、アクスパートの合図があって初めて投げることができる。レーン内へのアルコールの持ち込みは厳禁だ。
厳格なルールや監視のもと正しく楽しく安全にプレーができるので、ファミリーの子連れ(8歳以上)も歓迎している。
全10レーンあり、それぞれチームで対戦できるように2つずつ的が並んでいる。バーの向かいにホテルがあるため、滞在客や出張者が1人でやって来ることも多い。
「最大12人の団体で参加可。1人や少人数の場合、知らない人同士で楽しく対戦できるよう、アクスパートがまとめ役として、チーム対戦を盛り上げます」
標的には1~5スコアのほかに赤い丸があり、事前にそこに投げ込むと宣言すれば7ポイント獲得できる。外したらゼロポイントなので、逆転勝利を狙うときに挑戦するのがよいだろう。
【体験取材】
記者もストレス発散すべく、エイっと投げてみた
さっそく挑戦してみることにした。少し緊張感のある中、斧の下の方を利き手で持ち、逆の手を添える。斧はどっしりとした感触。
「腕だけを振るのではなく、重心を後ろに持っていき重心移動させながら、前に踏み出して投げてみてください。胃のあたりを意識しながら、当てたい標的を見据えるのがコツ」と、ダンさんに丁寧に指導を受ける。
記者も日ごろのストレスを発散すべく、全身の力を振り絞って、エイっと投げ込んでみた。初の体験だが、意外と1投目から標的(しかも真ん中あたり)にグサッと刺さった。「やった!」。気分爽快だ。
ただし、簡単すぎないのがこのスポーツの醍醐味。大小2種類ある斧は、重量があって安定感のある大きい方が標的に刺さりやすい。軽い方は標的に当たってもなかなか刺さらず落ちてしまう。練習が必要だと感じた。
取材を終えるころには、気分も足取りも軽くなっていることに気づいた。アルコールを飲みながら気の置けない家族や仲間との試合だと、さらに盛り上がること必至だ。
ストレスを思い切り発散できる場であることはもちろん、インスタ映えもするし、楽しく全身運動をしながら新ビジネスのアイデアも浮かんでくるかも? ニューヨークを訪れた際には、体験してみてはいかがだろうか。
現場の活気や臨場感がよりわかりやすいでしょうか。
(平日の昼間なので、これでも人は少なめ)
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(Text, Photos, and Video by Kasumi Abe) 無断転載禁止