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寿司はサビ抜き、攻めは厳しい渡辺明名人(37)リードを奪って1日目終了 名人戦七番勝負第1局

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 4月6日9時。東京都文京区・ホテル椿山荘東京において第80期名人戦七番勝負第1局▲渡辺明名人(37歳)-△斎藤慎太郎八段(28歳)戦、1日目の対局がおこなわれました。

 今期名人戦七番勝負から、対局中のスケジュールが少し変わりました。昼食休憩はかつては12時30分から13時30分まで。今期は12時から13時です。

 斎藤八段の高級なハンバーガーは、やや目をひくポイントです。自室において、いったん和服から着替えての食事だったかもしれません。

 ところで渡辺名人は最近、自身をサンドイッチの具にたとえていました。

 野暮を承知で渡辺名人のツイートを補足すると、最優秀棋士賞を22回受賞の羽生善治九段(51歳)、直近2回受賞の藤井聡太竜王(19歳)の間に、渡辺名人(37歳)がいる、ということでしょう。

 ついでながら渡辺名人は、お寿司ではわさび、サンドイッチではマスタードがNG。ファンや関係者にはよく知られる情報です。

 13時、対局再開。渡辺名人は中央に飛車を転じます。斎藤八段は47分考え、銀取りに歩を突き出しました。角を据えた方針を一貫させる意味でもそう指したいところではありますが、自玉の上部だけに、相手の攻め駒を呼び込んでしまうリスクもあります。

 渡辺名人は予定だったのでしょう。7分で同銀と応じました。斎藤八段に香を取られながら馬を作る代償に、斎藤玉に迫る形を作ることができます。1日目にして、早くも激しい戦いとなりました。

 56手目、斎藤八段は銀取りに歩を打ちます。この次、渡辺名人は銀で香を取りながら攻め続けるのは、ほぼ間違いないと思われるところ。そしてその攻めは厳しく、1日目にして渡辺名人がリードを奪ったようです。

 18時30分。青野照市九段が声をかけます。

青野「定刻になりましたので、渡辺名人の手番で封じてください」

 少しだけ間をあけて、渡辺名人が応じました。

渡辺「じゃ、封じます」

 渡辺名人は別室に移動し、57手目を封じ手として記入。対局室に戻って封筒2通を青野九段に預け、1日目の日程が終了しました。

 封じ手予想は意外な難問・・・かもしれません。というのは、銀成と銀不成、どちらも考えられるからです。渡辺名人はどちらを選ぶでしょうか。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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