初ライブが成功し、Number_iとの共演も実現。STARTO社に今後求められること。
株式会社STARTO ENTERTAINMENTが4月10日より本格的に始動し、28組295人のタレントが契約をしたことが報告され、早速初のライブとなる東京ドームでのライブを成功させるなど、様々な話題を振りまいています。
東京ドームのライブについては、一部メディアに写真が配布されただけで、ほとんどネット上にも映像や写真も公開されていませんが、5月30日の京セラドーム大阪公演では生配信も実施されることが発表され、チケットを入手できていなかった多くのファンが安堵の声をあげていたようです。
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スマイルアップ社からSTARTO社への移籍については、当初タレントの退所の可能性などを含めた様々な憶測記事がファンを混乱させていましたが、最終的には一部のメンバーを除いてほとんどのメンバーがSTARTO社と契約を締結。
さらに今回の初ライブはタレント側からの要望で決まったという報道もされていますし、まずはファンの方々からすると、一安心できるニュースだと思います。
Number_iとの共演は忖度の終焉の象徴に
また、新会社の最初の週の活動として象徴的な出来事となったのは、テレビ朝日の音楽番組である「ミュージックステーション」において、STARTO ENTERTAINMENT(以下STARTO社)のCMOでもある井ノ原さんが20th Centuryとして出演し、Number_iの平野紫耀さんらと思い出話を語るなど、和気あいあいとしたトークを展開したことでしょう。
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「ミュージックステーション」と言えば、昨年9月に開催された旧ジャニーズ事務所の会見の際に、ジャーナリストの松谷創一郎が名指しで圧力をかけていたのではないかと指摘した番組でもあります。
その松谷さんの「忖度の解除を明言して欲しい」という質問に対して、東山さんが「もちろんです」と回答し、井ノ原さんも「忖度は根深い問題。これを正していくのは大変だと思う。(中略)だから皆さんも一緒に考えてほしい」と発言されたことが記憶に新しい方も少なくないのではないかと思います。
今回「ミュージックステーション」では、STARTO社所属のWEST.と20th Centuryのメンバーが、TOBE社所属のNumber_iと共演を果たす結果になりました。
Number_iの平野紫耀さん、神宮寺勇太さん、岸優太さんは、旧ジャニーズ事務所を退所したメンバーであり、旧ジャニーズ事務所時代であれば、共演NGであるのが当然と受け止められていたグループになります。
退所したメンバーとの共演の場に、井ノ原さん自らが出演し、率先して「忖度後」のメディアやアーティストのあるべき姿を自らの行動と発言で示した意味は決して小さくないように思います。
特に、SMAP解散後に旧ジャニーズ事務所を退所し、2017年に「新しい地図」として再スタートをした稲垣吾郎さん、草彅剛さん、香取慎吾さんの3人が、地上波に復帰するまでには公正取引委員会の問題提起が必要だった歴史があります。
しかも、香取慎吾さんと中居正広さんが同じ番組で共演するまでには、6年もの月日が必要でした。
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そう考えると、昨年5月から9月にかけて事務所を退所したばかりのNumber_iのメンバーが、1年もかからずに井ノ原さんなど事務所の旧友達と共演を果たすことができたことには、時代が変わったことを感じた方は少なくないのではないかと思います。
スマイルアップ社の対応はまだ道半ば
一方で、スマイルアップ社をめぐる問題は、STARTO社の始動によって全てが解決しているわけではありません。
スマイルアップ社の今後の本業となる被害者の方々への補償はまだ様々な議論が続いているようですし、加害者であるジャニー喜多川氏の一族の資本の影響からタレントを切り離すために計画されたスマイルアップ社からSTARTO社への事業移転も、まだ不透明な点が多く、様々な専門家やメディアが数々の疑問点を指摘している状況です。
特に「ファミリークラブ」として知られるファンクラブが、4月10日の段階ではまだスマイルアップ社の帰属になっていたり、楽曲原盤権などの権利の移行がどうなっているのか見えない点は最大の懸念点と言えます。
参考:SMILE-UP.とSTARTOが反故にしたファンクラブのゆくえ──民放4社は見て見ぬふりを継続
こうした企業の事業譲渡に詳しい専門家の話を聞くと、旧ジャニーズ事務所規模の資産の譲渡や移管は、一般的に数ヶ月で簡単に済むような話ではなく、その資産規模を考えると買収金額や譲渡税等も巨額になる可能性が高いようです。
そのため、おそらくは昨年の会見時にスマイルアップ社の経営陣が想定していたよりも、手続きや資金調達に時間がかかっている可能性が高いと考えられます。
ただ、この点についてスマイルアップ社からもSTARTO社からも何の言及も無い点は大きな懸念点と言えます。
メディア不信のサイクルから逃れることができるか
最も残念なのは、昨年9月の会見の段階ではメディアとの対話の継続を宣言していたスマイルアップ社側が、10月の会見におけるNGリストの問題で炎上した後に、その姿勢を大きく変えてしまった点でしょう。
10月の会見以降、スマイルアップ社側はメディアの報道について否定するリリースを出していたことを踏まえると、おそらくは炎上した企業が陥りがちなメディア不信のサイクルに陥ってしまい、メディアとの対話に踏み込みにくい構造になっていると想像されます。
昨年の記者会見後のスマイルアップ社の唯一の大きなメディア対応は、先月末に公開された東山社長によるBBCのインタビュー対応になります。
ただ、こちらもその後BBC側から過去の社員による性加害を警察に届けなかった姿勢が批判されるきっかけになってしまったことを考えると、スマイルアップ社側としてはメディア対応をすればするほど批判されるという印象が強くなってしまっている可能性が高いと言えるでしょう。
また、STARTO社設立においても、福田社長が過去に旧ジャニーズ事務所を批判していたことなどから、一部ファンの間ではまだ新体制への不安が拭い切れていない面もあるようで、スマイルアップ社とSTARTO社としては、メディア対応とファン対応の狭間で一つ一つの発言が難しくなっている面もあるようです。
最終的に矢面に立たされるのは所属タレント
ただ、スマイルアップ社とSTARTO社においては、会社側の沈黙は決して問題の解決につながりません。
その結果、ファンの不安や視聴者からの批判の矢面に立たされてしまうのは、騒動の間も露出し続けているタレントになってしまうからです。
そういう意味で、興味深い動きと言えるのは、タレントの中からそうしたファンの不安を感じ取って、会社の姿勢や自分達の考えをファンに伝えようという動きが出ている点でしょう。
その筆頭と言えるのが、1月に「中丸銀河ちゃんねる」という個人のYouTubeチャンネルを開設し、いきなりSTARTO社の社長に就任した福田社長との対談を実施した中丸雄一さんです。
この対談の中では、福田社長がメディアの報道とかネットの批判が気になるのを、タレントのアドバイスを聞いてSNSを見るのを止めた話など、通常のメディアでは聞きにくいような等身大の話も中丸さんが聞き出しているのが非常に印象的です。
後編の動画においては、4月以降に福田社長が注力しようとしていることも質問していますし、「元メンバーや別事務所の人と何かやってよいか?」という多くのメンバーやファンが疑問に思っていることをしっかり質問し、「自分達の魅力を高めるならどんどん組めば良い」という発言をしっかり取っているのです。
炎上したメンバーのフォローも
さらに直近では、timeleszにグループ名を変更した際に、新メンバーをオーディションで募集することを発表し、一部のファンから激しい批判も噴出してしまった菊池風磨さんとの対談をすぐに企画。
菊池さんがなぜオーディションを開催することを考えたかという話を、同じタレントならではの立場から優しくも時には厳しく質問し、丁寧に背景を紐解いているのが非常に印象的でした。
菊池さん本人もインスタでファンの質問に対応していましたし、この対談の中で「会社にとっても(刺激になったら)」という発言をされていたのは、従来に比べた変化の象徴と言えるのではないかと思います。
中丸さんや菊池さんが、こうした個人での発信ができるようになったのは、「よにのちゃんねる」に改名した元「じゃにのちゃんねる」での経験が大きいのは間違いないでしょう。
実は「じゃにのちゃんねる」は、昨年の記者会見の後に、タレント側の生の状況を素直に動画で公開していたのです。
これができたのは、嵐の二宮さんが早期に独立という選択をしていたことも大きかったと思いますが、「じゃにのちゃんねる」が旧ジャニーズ事務所における新しいタレントの情報発信の一つの形を確立しつつあったことも重要であったと感じています。
少なくともSTARTO社には、こうした発信ができるタレントがたくさん揃っているわけですから、記者会見をしないならしないで、こうしたファンへの丁寧な情報発信が求められているように感じます。
忖度の解消があれだけ明確にできるのであれば、是非メディアやファンとの対話も再開していただきたいところです。
いずれにしても、まずは昨年の記者会見で発表された、スマイルアップ社とSTARTO社の資本的な分離が予定通り進むのかどうか、それがどのように説明されるのかが、短期的な最大の注目点でしょう。
STARTO社に期待されるさらなる飛躍
当然、STARTO社に期待されるのは単純にスマイルアップ社の資本から独立して、従来通りの活動を再開することだけではありません。
今回の一連の出来事を乗り越えて、所属タレントやファンが新会社になって結果的に良かったと振り返れるような飛躍を遂げることができるかどうかが最大のポイントと言えます。
中丸さんとの対談において、STARTO社の福田社長は下記の三点を今後の注力点としてあげています。
■SNSをどうするか
■音楽の質をどう高めるか
■どうやってグローバル展開していくか
奇しくも「ミュージックステーション」で共演したNumber_iは、デビュー曲「GOAT」がファンによるSNSでの応援もエネルギーにYouTubeのグローバル1位を獲得するなど大ヒットした関係で、今週末の米国の音楽フェス「コーチェラ」にYOASOBIなどの他の日本のアーティストと共に出演することが決まっています。
参考:デビュー曲がいきなりYouTubeで世界1位。「Number_i」と「TOBE」の無限の可能性。
Number_iの成功はまさに、福田社長があげている3点の強化の結果と言えます。
当然、福田社長があげている3点を強化することができれば、STARTO社のタレントの活動の幅も、大きく拡がる可能性があるのは間違いないはずです。
テレビ局の忖度だけでなく、従来の旧ジャニーズ事務所時代の様々な「常識」を打ち破って、STARTO社のタレントがファンとともに新たなステージに進むことができれば、間違いなく日本の芸能界にとっても良い影響があるはず。
まずは、メディアとの対話の再開がされ、スマイルアップ社とSTARTO社の資本的な分離が予定通り進むことが必須ですが、その後、5月30日の京セラドーム大阪でのライブの生配信が、どのようなSNSへの反響を引き起こすのかにも注目したいと思います。