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クリスマスパーティー中の大谷翔平&犬が盗撮、拡散され物議 セレブのプライベート問題

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
14日、ドジャースの入団会見会場で。(写真:ロイター/アフロ)

大谷翔平選手の移籍発表に沸くアメリカ。メディアから野球ファンまで大熱狂で、新チームのロサンゼルス・ドジャースからデコピン(ディーコーイ)という犬の名前までもが記事になる程。スポーツ紙はもちろん、有力紙ワシントンポストから経済紙ウォール・ストリート・ジャーナル(ラッキーな犬)まで幅広いメディアが連日、大谷選手を取り上げている。

日米のみならず世界中のメディアが絶え間なく大谷選手の報道を続ける中、ある報道機関の記者が行き過ぎた行為をしたとして非難されている。

台湾の中央通訊社のロサンゼルス特派員、ハンス・リン記者は18日、Xに大谷選手のプライベート中の写真を掲載した記事を投稿し、その投稿が拡散されている。

この記事には前日の17日、カリフォルニア州ニューポートビーチの住宅で開かれたクリスマスパーティーで、仲間とくつろぐ大谷選手の様子が映し出されている。膝の上には愛犬デコピンの姿も。昨日まで開催されていた「クリスマス・ボート・パレード」を楽しみながらのホームパーティーだったようだ。

写真を撮影した人物は最初に犬に気づき、その後犬を抱いているアジア系の「少年」(若く見えたらしい)が大谷選手に少し似ていると思ったそうだが、確信が持てなかったようだ。だが、通訳の水原一平氏と代理人ネズ・バレロ氏もいたことで、大谷選手本人であると確信したという。

記事はプライベートの大谷選手の3枚の写真も掲載している。

これについて、Xではファンから以下のように、リン氏を非難する声が次々に上がった。

「プライベートな時間を侵害するな」

「盗撮じゃないか」

「ストーカーの仕業だ」

「これはひどい。私たちは彼のプライバシーを尊重しませんか? 」

「オフ中の写真を掲載する場合は必ず本人の許可を得て」

騒動がいよいよ大きくなり、リン氏はX上で英語と日本語で反論した(以下、原文ママ)。

「この写真は故意の盗撮ではなく、アメリカ在住の台湾人がクリスマスのイベントに参加しているときに撮影されました。この公共の場で、彼は偶然にも大谷を見かけました。」

「大谷翔平選手は公に見られるバルコニーにいました」

「私の報道の焦点は、この写真を撮った人物が大谷の夢に向かう姿勢を強く共感していることにあります。彼に会えて感動的で励まされたという経験は貴重であり、私たちは意図的に他者のプライバシーを侵害することを目指していません。」

英語の投稿も見たが、現場はクリスマスイルミネーションという「公共のもの」を撮影する目的で人が集まっており、その中で偶然撮影者がバルコニーにいる大谷選手を見つけたという。夢に向かう大谷選手の活躍を賞賛する目的で記事に写真を投稿したと言いたげだった。

これに対し、一般のファンは「大谷を見つけたら自分もおそらく同じように写真を撮っただろうが、SNSで写真を(不特定多数の人と)共有することはなかっただろう。プライバシーを尊重することは人としての良識であり、法的行為(法に触れることになりうる)でもある」と返している。

この騒動に対して米メディアからいくつか意見が上がった。「これらの写真は大谷選手の私生活を垣間見る興味深いものであることは間違いないが、これはプライバシー侵害にあたる」。一方で「MVP受賞の直後にメジャー史上最高額の契約を結び、メディアの圧倒的な関心を集めたのだから、大谷選手のプライバシーは現時点では夢物語だ」という意見もある。

アメリカではストリートやレストランで、プライベートな時間を楽しんでいる有名人に遭遇することがたまにある。しかしオンではなくオフの時間ならば、周りは特段騒ぎ立てることなく冷静に対処し温かく見守ることがスマートな大人の取る行動だという、暗黙の了解のようなものがある。大谷選手という世界で今大注目の人物だけに、この記者は冷静な判断を失ったのか。

  • UPDATED: 日本時間12.19.2023, 2PM現在、中央通訊社の該当の記事からすべての写真と該当のXの投稿が削除されていることが確認されました。

(Text by Kasumi Abe)無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、著名ミュージシャンのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をニューヨークに移す。出版社のシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材し、日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。

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