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日本でも問題になる芸能人の写真撮影問題。米・和食店でもサッカー界の大スターを巡り流血騒動に

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
今年インテル・マイアミに移籍したメッシ選手と、チームの共同オーナーのベッカム氏。(写真:ロイター/アフロ)

街中や店、ロケ現場でたまたま好きな芸能人と居合わせたり見かけたりした場合、あなたはどうするだろうか?

今の時代、つい反射的に手持ちのスマートフォンを彼らに向ける人は多いだろう。もしくは一緒に自撮り(セルフィー)をお願いする人も、中にはいるかもしれない。

しかし撮られる方からすると、断りもなくカメラを向けられるのは決して居心地の良いものではないだろう。オフの時間によくわからない人から自撮りや記念写真を強請られ、それに応じることが面倒や苦痛に感じるのは、人間としてごく自然な気持ちだろう。特に有名になればなるほど、このような依頼は多くなる。

近年のスマホの普及に応じて、芸能人や著名人の肖像権やプライバシーの干渉問題は、日本同様にアメリカでもたびたび問題になっている。

米の和食店でサッカー界レジェンドを巡るトラブル

マイアミにあるイケイケの日本風ステーキハウス店、Gekko(月光)。世界的に大人気のおしゃれなジャパニーズフュージョンの寿司や和牛ステーキを提供しており、ラッパーのバッド・バニーらが共同経営している店だという。いかにもメトロセクシャル(意識高い系)がデートやパーティーで利用しそうな、豪華なクラブのような雰囲気だ。

この店で今月11日、ある騒動が起きた。

その夜、ある超大物セレブが家族で集まりパーティーを開いていた。そのセレブとは、今夏、米メジャーリーグサッカー(MLS)のインテル・マイアミに移籍したリオネル・メッシ選手と妻アントネラ・ロクッツォさん、そしてインテル・マイアミの共同オーナーでもあるデビッド・ベッカムさんと妻ヴィクトリア・ベッカムさんらだ。

ここで彼らの写真撮影を巡り、客の男性と店の警備員の間で流血騒動に発展したため「ヴィクトリアさんと娘のハーパーさんが、マイアミのホットスポットを早々に去った」と、デイリーメールページシックスが報じた。

記事によると、トラブルになった男性は自身の21歳の娘の誕生日を祝うために友人らと同店を訪れており、内輪で娘の写真をいくつか撮ろうとしていたところ、突然警備員が飛んで来たと主張している。

一方警備員側の言い分によると、サッカー界の2大レジェンドがパーティーを開いていると知ったこの男性がこっそりとメッシ夫妻の近くまで潜り込み、一緒にセルフィーを撮影しようとしていたという。その男性について月光の担当者は「泥酔しており攻撃的だった」「酔っ払ってズカズカとほかの客の写真を撮っていたため、止めるように制止したが、それを無視し写真を撮り続けた」と、メディアに証言した。

男性は警備員に暴力で制止され、出ていくように促され店を追い出された。また記事に投稿されている動画を確認する限り、男性の顔は血だらけだ。

酔っ払っていたとされるこの男性の行動も問題だが、暴力行為に関して行き過ぎではないかと店側の対応も問題視されている。

マイアミの日本食レストラン「月光」を訪れたメッシ選手夫妻やベッカム元選手夫妻ら。ベッカムさんの妻、ヴィクトリアさんのインスタ

筆者はこれまで、ニューヨークの道端やレストランなどで、元大統領から超大物俳優までさまざまな有名人を偶然見かけたことがあるが、こちらの人は割と節度を保ってセレブに接していると感じてきた。

基本的に超がつくほどの有名人はプライベートルームを使うことが多いが、中には普段着で散歩していたりレストランで食事をしていたりすることも意外とある。そして、例えばプライベートでの食事中に割り込んで話しかけたりしているファンを見たことがない。英国人の故デヴィッド・ボウイとイマン・アブドゥルマジドといった割と目立つカップルでさえ「ニューヨークでは誰も気にせず、この街に溶け込んでいた」という証言を新聞で読んだこともある。

マイアミでの状況は多少違うかもしれないが、それでも今回起こった騒動は、例外中の例外で起こった不運だと信じたい。また、メッシやベッカムくらいの超のつく有名人であれば、余計な騒動を防ぐためにもパーティーはプライベートルームで行うべきだったのではないかとも思う。

何れにせよファン側の心持ちとしては、大好きな有名人を前に興奮して騒ぐだけでなく、節度を保って彼らを見守ってあげることも時に必要だろう。

(Text by Kasumi Abe)本記事の無断転載やAI学習への利用禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、著名ミュージシャンのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をニューヨークに移す。出版社のシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材し、日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。

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