「前田、ドジャースと秒読み」はやや気が早い?
前田健太の契約がまだ纏まらない。
先週あたり、日本では「ドジャースとの契約が秒読み」とすでに報道されたが、『ロサンゼルス・タイムズ』や『ESPNロサンゼルス』などにはその時点では特に「Maeda」の文字は見当たらなかった。
その後多少の時差をもって、『ロサンゼルス・タイムズ』あたりは前田に関する記事を掲載しているが、実際に交渉の進展を報じるものではなく、同紙なりに前田がドジャースにフィットするかどうかを論評したものだ。
ドジャースが前田の選択肢に入っているのは間違いないだろう。しかし、日本メディアが大きく報じた「ドジャー・スタジアム訪問」も、それが即契約には結びつくものではない。
スポーツブログのポータルサイト『SBネーション』は「マエダがドジャー・スタジアムに居たからと言って何なのだ。エコーパークのスターバックスに居たのなら契約は完了したのだろうが」と皮肉っている(エコーパークはドジャー・スタジアムからほど近いお洒落なショップやレストランが並ぶ人気エリア)。
ドジャースは先発投手陣の数は揃っているが、絶対エースのクレイトン・カーショウ以外は故障持ちや故障明けの投手が多い。さらに岩隈久志との契約を身体検査上の問題で無効にしてからは、代替え投手を獲得していない。それが、前田になるかどうかは分からないが、先発投手を市場に求めている可能性は高い。ただし、かつては湯水のように選手を爆買いしていたドジャースも、レイズGMだったアンドリュー・フリードマンを昨年オフに編成担当の総責任者に迎えてからは、徹底的に将来に亘る年俸総額の流動性を重視したチーム作りを進めており、長期契約避けようとする傾向にある。5年契約あたりが必要な前田を、本気で追い求めるかどうか?
まだマーケットに残っているFA先発投手のチェン・ウェインやスコット・キャズミア、イアン・ケネディなら、来季31-32歳になることもあり前田よりは短い契約期間で事足りる可能性がある。
また、ドジャースの「中長期的な年俸の流動性」と並ぶもう一つの方針は「将来の編成の核となる有望な若手は容易に放出しない」だ。その点からすると、獲得してしまうと来年6月のドラフトでの1位指名権を手放さねばならないクオリファイング・オファー却下組のチェンやケネディはできるだけ避けたいところだ。そうすると、キャズミアを狙う可能性は高いのではないか。
ただし、キャズミアは左腕で、ドジャースの現在の先発陣は左腕が多い。この点は問題だ。
球団にとって、全てを満足するFAはいない。右腕でドラフト指名権返上を伴わない前田には長期契約が必要だ。このメリット&デメリットをドジャースがどう考えるか?それと、あまり語られてはいないが前田にはメジャーでの実績がない。過去の日本人投手の成功例からしてある程度やれることはほぼ間違いないだろうが、このことは、ドジャースにとっても躊躇する要因になるかもしれない。