オーストラリア南東部、3日で3か月分の雨 民家が流され、ダムの水も溢れる
オーストラリア南東部ニューサウスウェールズ州で、記録的な雨が降り続いています。同州の首相は「雨爆弾(Rain bomb)」と例えたほどです。この大雨であちこちで洪水が発生し、家が流されるなどの甚大な被害も広がっています。
思い起こせば1年半前、ニューサウスウェールズ州では数か月間にわたって大規模な森林火災が起こりました。多数の犠牲者が出たほか、州の3分の1のコアラが死亡しています。しかし今年はラニーニャ現象の影響もあって、比較的雨の多い日が続いていました。
月間降水量の3倍の大雨
オーストラリア東部では、先週から大雨が降り続いています。
ニューサウスウェールズ州の北に位置するクイーンズランド州バイフィールドという場所では、16日(火)からの24時間で550ミリという観測史上最大の降水量が記録されました。これは3月の降水量の3か月分に相当する量です。
その豪雨は週後半にかけて南に移動し、ニューサウスウェールズ州で記録的な大雨となっています。18日(木)朝から21日(日)朝までの72時間の降水量は下記の通りです。
- デルワード: 738mm
- レッドオーク: 730mm
- コンボイン: 714mm
ダムの水あふれ、カンガルーは危機一髪
大雨の被害は甚大です。
家の高さの半分まで水に浸かるような洪水が発生し、家や車に閉じ込められた数百人が救助されました。さらにシドニー中心部から70キロ離れたワラガンバダムは水が溢れ出ました。これは2016年以来初めての出来事のようです。ダムの下流では、川の水位が1961年以来の高さに達すると危惧されています。
また、家が丸ごと濁流にのみこまれ、流されました。シドニーの北300キロに位置するタリー付近で、マニング川で流される映像が撮られています。
気の毒なことに、この家の持ち主は家が流される20日(土)の当日に結婚するはずだったカップルでした。現在このカップルを助けるために、GoFundMeというサイトで、およそ250万円の募金が呼びかけられています。
また19日(金)には、増水した小川を渡ろうとしたカンガルーが濁流に飲まれました。幸い危機一髪、難を逃れましたが、見ているとハラハラドキドキします。下のその映像です。
さらにシドニー郊外のチェスターヒルでは、竜巻も発生しました。トランポリンのようなものが家屋の壁に突き刺さり、倒れた木が民家を直撃しました。この竜巻で30軒の家屋が損傷を受け、およそ1,000人が停電の被害を受けているとのことです。
大雨の原因
この大雨の原因は何でしょうか。居座る高気圧と低気圧が原因です。
下が19日(金)の天気図です。高気圧の中心がオーストラリアの南東の海上に位置しています。南半球では、高気圧の縁に反時計回りの風が流れます。このため海からの湿った空気がオーストラリア東岸に流入し続けています。加えて、ニューサウスウェールズ上に新たに低気圧も発生し、19日(金)ごろから雨が急速に強まりました。
この雨はいつまで続くのでしょうか。残念ながら23日(火)にかけて大雨は続き、場所によってはさらに激しく降る見込みです。
テレビのリポーターが「今こそロックダウンで学んだスキルを活かして、ステイホームをしてください」と呼び掛けていたのが印象的だったと、地元の人が話していました。
面白い人
ところで豪雨のおかげで、夕飯の食材に無料でありつけた、ステイホーム中の男性もいるようです。
シドニー郊外にあるコッテさんのマンションは、湖から30メートルほどの距離ですが、今回の大雨で水がマンションの1階にまで達しました。その様子を見た2階に住むコッテさんは閃きました。「そうだ、釣りをしよう。」早速釣竿を持ってきて、ベランダで釣りを始めたのです。見事彼は小さな魚を釣り上げることに成功し「今日はクリスマスだ!」と無邪気に喜んだのだとか。
危機をチャンスにとは、こういうことを言うのでしょうか。