【速報】緊急経済対策はどう取りまとめられたか
4月7日、「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」を閣議決定した。事業規模108.2兆円程度、財政支出39.5兆円程度という過去最大の経済対策である。
その内容はどうなったか。速報で解説しよう。
まず、今般の緊急経済対策だけで108.2兆円程度を、すべて新たに積み増したわけではない。
昨年12月に決めた「安心と成長の未来を拓く総合経済対策」(26.0兆円程度)のうちの19.8兆円程度と、今年に入って新型コロナウイルス感染症対策として打ち出した第1弾と第2弾の緊急対応の2.1兆円を含んだ額であり、新規に追加した金額は86.4兆円である。
これと同様に、財政支出(国費と地方費と財政投融資の合計)も、39.5兆円程度のすべてを新たに積み増したわけではない。昨年12月に決めた総合経済対策(13.2兆円程度)のうちの9.8兆円程度と、第1弾と第2弾の緊急対応の0.5兆円を含んだ額であり、新規に追加した金額は29.2兆円である。
その中には、事前に報じられたように、全世帯への1住所当たり2枚の布製マスクの配布に233億円が計上されているほか、現金給付も盛り込まれている。
「30万円の給付」については、生活に困っている世帯に対する新たな給付金として、世帯主の月間収入(今年2月~6月の任意の月)が、「(1)新型コロナウイルス感染症発生前に比べて減少し、かつ年間ベースに引き直すと個人住民税均等割非課税水準となる低所得世帯や、(2)新型コロナウイルス感染症発生前に比べて大幅に減少(半減以上)し、かつ年間ベースに引き直すと個人住民税均等割非課税水準の2倍以下となる世帯等を対象として、1世帯当たり30万円の給付を行う」と決めた。
つまり、(1)か(2)に該当する世帯主がいる世帯には、1世帯当たり30万円給付するということである。で、どんな条件かというと、2~6月のあるひと月における世帯主の月収が、
(1)住民税非課税世帯のうち、感染拡大前と比べて減った世帯(減少幅は言及なし)
か
(2)住民税非課税世帯となる所得水準の2倍以下の年収である世帯のうち、感染拡大前と比べて半減以下となった世帯
かに該当すれば、1世帯当たり30万円給付するということである。
そもそも、住民税非課税世帯となる所得水準の2倍を超える年収のある世帯は、対象外となる模様である。ただし、前掲した緊急経済対策の文中に「世帯等」とされていることから、もしかすると今後の詰めの作業で、対象となる世帯が増えるかもしれない。
では、なぜ個人でなく世帯になったか。もちろん様々な議論があるが、所得制限をつける際に、かなり簡単に把握できる「住民税非課税世帯」という基準を用いたからである。この基準を用いる限り、個人ではなく世帯とせざるを得なくなったといえる。残念ながら、現時点で簡素かつ効果的に所得制限をつける方法が、容易に見つからないのがわが国の政策インフラの実情である。
2009年度に実施した定額給付金は、所得制限なしに個人を対象として給付したが、その実施までには3か月を要した。個人を対象に給付する政策インフラは、マイナンバーカードの普及が進まない現状では、11年前とほとんど変わらない状況である。
中小・小規模事業者等に対する新たな給付金(持続化給付金)としては、「事業収入が前年同月比50%以上減少した事業者について、中堅・中小企業は上限200万円、個人事業主は上限100万円の範囲内で、前年度の事業収入からの減少額を給付する」と決めた。
加えて、中小・小規模事業者等には、実質無利子・無担保融資の資金繰り支援も盛り込まれている。
財政支出は、合計で39.5兆円程度、うち新たに追加されたのが29.2兆円である。この新たに追加された額のうち、国費が18.6兆円(一般会計16.7兆円、特別会計1.9兆円)、財政投融資が10.1兆円、残る地方費が0.5兆円である。
この国費の一般会計分のすべての財源を国債の増発で賄い、財政投融資のうち9.4兆円を国債(財投債)の増発で賄うこととしている。今般の緊急経済対策で、国債の増発額は26.2兆円となっている。
今後、日を改めて詳述したい。