たった1日で60万人を動員したデュッセルドルフの「日本デー」の魅力とは?なんと26億円の経済効果も!
日独両市民の交流のための出会いの場として始まったデュッセルドルフの「日本デー」は、今年17回目を迎えた。欧州最大の日本文化紹介のイベントとして絶大な人気を誇るこのイベントの魅力を探ってみた。(画像は特記以外筆者撮影)
ノルトライン・ヴェストファーレン(以下NRW)州の州都デユッセルドルフで恒例の「日本デー」が5月26日に開催された。国内外からこの日を楽しみに集結する日本文化ファンやコスプレイヤーなど、どこへ行っても人、人、人。熱狂する参加者を目の前にして、こんなに日本ファンがいるんだと驚きと感動に胸が熱くなった。
街が日本ファンで埋め尽くされる日
デュッセルドルフ観光局によれば、この街に住む日本人はおよそ7000人。ドイツ在住日本人の4人に1人がこの街で生活し、欧州では、ロンドン、パリに次ぐ日本人居住者数という。
日本企業が同市に進出したのは1950年代から。以来、この街を拠点とする日本企業は続々と増えた。2016年の統計を見ると、NRW州で約600企業、そのうち380ほどの日本企業がデュッセルドルフにあり、経済面でも深いつながりがある。
5月25日土曜日12時30分、ライン川沿線のブルク広場に特設されたメインステージで日本デーは幕開けした。NRW州ピンクヴァルト大臣、ガイゼル市長、日本クラブデュッセルドルフ山口代表、水内総領事が登壇し、開会の辞を述べた。
その後、陸上自衛隊と連邦軍音楽隊による「ベートーベン交響曲第九番」の演奏が始まった。今年6月1日、鳴門市にあった板東俘虜収容所でドイツ兵捕虜によってアジア初演されてから100年を迎えた。これを記念して日独の過去から未来への友情にささげたいという思いを込め、第九の演奏に至ったそうだ。
そしてステージでは、太鼓キッズによる演奏や日本人学校の合唱、着物ショーなどが次々と披露された。プログラムは夜10時近くまで展開された。
一番の人気スポットは、ライン川沿線の遊歩道。沿道に設置された90のブース(その内20は飲食ブース)では、書道や囲碁、着物試着や日本食を求めるファンで埋め尽くされた。
なかでもここ数年、コスプレの人気がすごい。各地から集まったコスプレイヤーが、気温30度の炎天下で衣装のプレゼンに熱中する姿はまさに圧巻だ。彼らのプレゼンを楽しみにやってくる人達も多く、あちこちで一緒に写真を撮る姿が見られた。
コスプレイヤーたちの目指したのは、ADAC(ドイツ自動車連盟)のステージで行われた大会。ここで勝ち抜くと日本行きのチケットが授与されるとあって、労力を費やした自作衣装を身にまとったコスプレイヤーたちの熱気と興奮は筆舌に尽くしがたい。
日本デーのフィナーレ打ち上げ花火は、イベントブースの対岸で打ち上げられる。今年のテーマ「日本の伝統、芸術と文化」にちなんで、花火は、花のモチーフが多かった。実はこの花火、この日のためにわざわざ日本で準備されたもの。花火師ももちろん日本人。職人技のなせる華麗な花火は25分間、夜空のキャンバスに色彩豊かな傑作を描きだした。
日本人もドイツ人も住みやすい街デユツセルドルフ
日本デーの前日、観光客に人気のホップオンホップオフバスに乗車して、街をひと巡りした。自分の好きな場所の停車駅で乗降でき、24時間有効だ。バスの音声ガイドは10か国に対応しており、日本語も提供。
ブルク広場近くで降車し、1時間のライン川遊覧船に乗り込んた。船内からの見学は、バス巡りとは一味違った角度から街を知ることができる。
その後、ラインのリトルトーキョーといわれるデュッセルドルフ駅近くのインマーマン通りに行った。日本食料品店やレストランはもちろんのこと、ベーカリーや書店、その上クリーニング店もあるのには驚いた。通りに面したホテルにはなんと日本の理容室もあった。
イベント当日のインマーマン通りは、書店前で長蛇の列をなすコミックファンや食料品を買い求める人でごった返していた。この通りを散策するだけでも、日本デーの人気の高さがひしひしと伝わってくる。
米グローバルコンサルティング会社「マーサー」による「2018年世界生活環境調査都市ランキング」で、ドイツから3都市(3位ミュンヘン、6位デュッセルドルフ、7位フランクフルト)がトップ10に選出された。この発表は、政治、経済、社会福祉、教育、医療、文化、自然など約40項目を世界230都市を対象に比較した調査結果。
デュッセルドルフは日本人とドイツ人にとって生活環境の整っている街で住民の満足度も高い。日本人はドイツ人に受け入れられて心地よく生活できる点、ドイツ人にとっては、ラインのリトルトーキョーを大変誇りに思っている点。両者ともカーニバルや日本デーのお祭りが大好きという点も共通している。
日本デーの経済効果はなんと26億円!
日本デーの前身は、1983年の日本週間。1999年から2000年に行われた日独交流150周年「ドイツにおける日本年」では日本を総合的に紹介するイベントがドイツ各地で開催され、大きな注目を集めた。この交流を記念したイベントは全国で900件、そのうちデュッセルドルフでは100件行われた。
2002年、初めて日本デーを開催。2005年には千葉県と友好都市関係を結び、日本デーの人気は加速した。主催者は、NRW州、デュッセルドルフ市、同市日本クラブ関係者。スポンサーと多くのボランティアの協力を得て、毎年5月末/6月初めに開催される。悪天候のため2006年には中止となった。そして東北大震災のため2011年は、5月28日から10月15日に変更となった。
デュッセルドルフ観光局が2017年に行った日本デー調査によると、他の人に勧める94%、何度も参加62%、家族や友人の勧めで参加45%だった。日本デー参加の主な理由として、コスプレの他、打ち上げ花火19%、文化を知りたい17%が抜きんでた。この調査は、イベント参加者220人を対象に行った。
日本デー開催の経済効果は、2000万ユーロ(26億円・1ユーロ=130円で換算)以上と推定される。内訳は、日本デー1日収益が1500万ユーロ(19億5000万円)。訪問者60万人のうち、宿泊客は約2万人。宿泊客1人当たりの支出は食事やお土産などを含め、平均207ユーロ(4万8000円)で、計400万ユーロ(5億2000万円)以上と見積もる。
今回デュッセルドルフに滞在して、毎年メディアで称賛されている日本デーのすばらしさを体験した。ドイツでもテロ突発の事例があることから、このイベントでも多くの警察官が出動し、深夜まで警備に当たった。
打ち上げ花火終了後は、帰路につく人で混雑も最高潮だった。夜中1時過ぎ、地下鉄駅に向かう途中では、熱中症やケガ人に対応する救急隊もあちこちで目撃した。地下鉄入口では入場制限があり待つこと30分余り。ここでも警備員の誘導でスムーズに乗車できた。こうした知っているようで知らない多大な支援があることも忘れてはならないと痛感した。
2019年日本デーは5月25日(土)に開催予定。運営委員は、今年9月から準備を進めるという。