表現者・常田大希 表現の場を縦横無尽に行き来し、幸福感と高揚感溢れる作品を作り続けた2021年の軌跡
10月29日、King Gnuのツアー『King Gnu Live Tour 2021 AW』が宮城・ゼビオアリーナ仙台で開幕した。このツアーは12月14日の東京・代々木第一体育館公演まで、全国で14公演行われる。King Gnuは2019年のデビュー以来、その音楽はシーンを席巻し、幅広い層の音楽ファンを熱狂させ、まさに“ヒーロー”的な存在として君臨している。
millennium paradeが躍動した2021年
ヒーローといえばそのKing Gnuと、才能の塊が集結した音楽集団millennium parade、音楽だけではなく映像やビジュアル、空間演出などトータルなクリエイティブでその才能を見せつけているプロジェクト・PERIMETRONを率いる常田大希は、まさに時代の寵児といえる存在だ。特に今年、2021年の常田大希は、まさに八面六臂の活躍だった。八面六臂という言葉では足りないほどの圧倒的な生産力と、一つひとつのクリエイションで見せるクオリティの高さは、まさに革新的なものだった。ここでは今年、常田の“熱狂”が形になった作品を時系列で振り返り、改めて彼の才能、本質を感じてみたい。
NHKスペシャル『2030 未来への分岐点』のテーマソング「2992」を手がける
今年はmillennium paradeの活躍が特に目立った年だった。まず1月はNHKスペシャル「2030 未来への分岐点」のテーマソング「2992」をmillennium paradeが担当し、話題を集めた。さらに「2992」の制作から初披露までとライヴの裏側に長期密着したドキュメンタリー『常田大希 破壊と構築』が、NHKスペシャル特番としてオンエアされた。「2992」というのは常田が生まれた1992年から1000年後にあたる数字だ。番組が設定した近未来の2030年ではなく、彼は1000年後も残る音楽を想像し、時代を軽々と超え聴き継がれる、強度のある音楽を作りたいというミュージシャンとしての“使命”と“希望”を具現化させた。
1月29日に公開された映画『ヤクザと家族 The Family』(監督/藤井道人)の主題歌「FAMILIA」もmillennium paradeの手によるものだ。主演の綾野剛はこの曲について「人生最愛のレクイエムが生まれました。『FAMILIA』は私にとって永遠です」と絶賛した。
millennium paradeのデビューアルバム『THE MILLENNIUM PARADE』発売
2月19日にはmillennium paradeのデビューアルバム『THE MILLENNIUM PARADE』をリリース。テーマは「失われたものへの弔いと、新しい年を迎えた祝祭」。バンド名を「パレード」と名付けているように「祭り」というテーマはこの集団にとっては自然で、よりコンセプチュアルに、総合芸術として追求するそのスタイルを見せつけた、極上の“カオス”を味わうことができる作品だ。音楽番組にも積極的に出演し、その世界観を広く伝えた。
3月には世界が注目するフェスティバル「SXSW2021」に出演し、NYタイムズが選ぶ「ベストアクト15」に選出された。4月には常田大希としてカルティエのアンバサダー就任というニュースも話題を集めた。稀代の表現者を世界的なブランドも放っておかない。
6月5日にはRed Bull × King Gnu の前代未聞の日本初開催のシークレットライヴ『Red Bull Secret Gig』が、東京湾に浮かぶ人工島・第二海堡で開催され、大きな注目を集めた。
映画『竜とそばかす姫』のメインテーマ「U」を手がける
7月、millennium paradeとして細田守監督最新作『竜とそばかすの姫』のメインテーマ「U」を手がけた。映画の重要なオープニングシーンを飾る楽曲で、トライバルなビートと壮大のサウンドに乗せ、主人公ベル=中村佳穂の異次元なボーカルが炸裂すると、観た者全てを一瞬で映画の世界に引き込み、感動を与えた。
millennium paradeとして“フジロック”に初出演
7月、8月は国内外のフェスに積極的に出演。7月はmillennium paradeとしてオーストラリア最大のフェスティバルSplendour XRに出演し、海外志向の彼らが、日本の音楽のリアルな“現在地”を広く知らしめた。8月にはKing Gnuとして「フジロック21」のメインステージ=グリーンステージで、ヘッドライナーを務め、さらにmillennium paradeとして同フェスに初出演し、ホワイトステージのヘッドライナー務め、客席は“静かに熱狂”した。
ジャニーズの人気グループSixTONESに、常田大希名義で楽曲提供
さらに8月11日にリリースされた、人気アイドルグループSixTONESの新曲「マスカラ」を、常田大希名義で作詞・作曲。6人の個性的なボーカルを立てるメロディ、クールで洗練されたR&Bを打ち出したサウンドメイク、進化したSixTONESを見事に映しだした楽曲だ。
10月にはmillennium paradeとして約2年ぶりとなる有観客での東阪ワンマンツアー『millennium parade Live 2021 “THE MILLENNIUM PARADE』を行ない、そのファイナル、10月7日の大阪フェスティバルホール公演には中村佳穂が登場し、「U」を初披露した。10月15 日にはKing Gnuとしてノイタミナアニメーション『王様ランキング』の主題歌「BOY」を配信リリースした(CD=12月1日発売)。
その感性、感覚は大衆性を重んじ、多面的に世の中=幅広い層の人を魅了してやまない
4人組ロックバンドでしかできない表現、出せない熱をKing Gnuでは見せ、感じさせてくれ、作品ごとに異なるメンバーで音楽・映像をクリエイトするmillennium paradeは、明らかに異なる集団であり、しかし2組とも常田のポジティブなエネルギーが核にある。2組の音楽やアートワークに触れ、何かを感じ、手にしたリスナーが、その人生をポジティブに捉えることこそが、常田が目指しているところでもある。
さらに常田大希個人としても、SixTONESへの楽曲提供を行なうなど、繰り出す創作物一つひとつが全く異なる作品性を湛え、しかしそこには太いアーティストアイデンティティがしっかりと存在している。J-POPアーティストであり、ポップアートを創造するアーティストであり、あくまでも大衆性を重んじている。迸るクリエイティビティから繰り出される、見たことがない表現も、その根底に流れるポップネスが滲み出てきて、幸せを与えてくれる。だから常田の感性、感覚は多面的に世の中=幅広い層の人を魅了してやまない。
表現者・常田大希の動きからまずます目が離せない。