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「共謀罪は私たちの表現を奪う」ペンクラブ集会での表現者たちの言葉

篠田博之月刊『創』編集長
4月7日の共謀罪反対集会

4月7日夜行われた日本ペンクラブの集会「共謀罪は私たちの表現を奪う」についてはいろいろなところで報道されているが、当事者のひとりとして報告しておきたい。7日は金曜の夜だったので、国会前でも共謀罪反対の抗議行動が行われていたことを新聞報道で知った。どうりで市民グループの人たちが会場に来てなかったわけだ。

この集会をどんな思いで実現したかについては、ヤフーニュースのこの記事に書いた。

https://news.yahoo.co.jp/byline/shinodahiroyuki/20170406-00069620/

集会の参加者は300人。ペンクラブの会長である作家の浅田次郎さんを始め、文学者や写真家、漫画家、ジャーナリストがリレートーク方式で次々と発言したのだが、自画自賛するわけではないが、かなり充実した面白い内容だった。NHKやTBSがニュースで報道したのを始め、多くの新聞でも報道された。その一端は下記をご覧いただきたい。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170408/k10010941121000.html

http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye3023735_ie9.html

http://www.kanaloco.jp/article/243183

内容は近々ペンクラブのホームページで動画なりが公開される予定だが、ちょっと驚いたのは東京新聞が8日朝刊の社会面をほとんど費やして発言者14人の要約と顔写真を掲載していたことだ。集会が終わったのは午後8時半だが、終了後会場で必死にパソコンに向かっている記者が何人かいたと思ったら、最終版にぎりぎり間に合わせたわけだ。

この報告の冒頭写真は東京新聞も一面に掲載したフォトセッションで全ての発言者が壇上にあがったシーンだが、あとで思ったのは、やはり手に何か横断幕のようなものがほしかったということ。頭上の看板のほうに頭がいっぱいでそこまで気が回らなかった。

以下、何人かの発言者の写真を掲載しよう。

発言する作家の浅田次郎さん
発言する作家の浅田次郎さん

冒頭はペンクラブ会長である作家の浅田次郎さんの発言で、その後五十音順に雨宮処凛さんから発言がなされた。浅田さんの発言は、人間の命には限りがあるが法律は死なない,子どもや孫の時代にこの法律がどう使われるのか、今が大事な時だ、というものだった。

発言する雨宮処凛さん
発言する雨宮処凛さん

金平茂紀さんや香山リカさんは、沖縄では基地反対運動をしている人が次々と逮捕されており、まさに共謀罪の先取りが現実化していると訴えた。

発言するちばてつやさん
発言するちばてつやさん

漫画家のちばてつやさんの発言は、マンガについて教えている学生たちの間でも、こんな表現は大丈夫かと萎縮するような雰囲気があるが、そういう気持ちで描いては面白い漫画は描けないといつも言い聞かせている、というものだった。共謀罪の対象となる犯罪には著作権侵害が含まれているのだが、これは明らかにコミック同人誌などをめぐる著作権の問題で共謀罪の適用を想定しているのだと思う。

ちばさんとは、以前、コミック規制問題の時に「コミック表現の自由を守る会」というのを立ちあげ、私が事務局長を務めていた関係でよく顔をあわせていたが、今回久々にお会いした。出演以来をした時、これは大切な問題なので…とすぐに快諾してくれたのだが、表現の自由をめぐっては一貫して声を上げ続けているちばさんの姿勢に改めて敬意を表したい。

それぞれが熱い思いのこもった発言だったのだが、例えば「包丁人味平」などの作品で知られる漫画家のビッグ錠さんがこんな話をしていたのが印象的だった。昔1970年安保の頃、飲み屋などで多くの人が熱っぽく語り合った。それに比べると共謀罪については、説明すると多くの人が関心を示してくれるが、飲み屋で話をしてもわからないという人がほとんどだ。世の中が戦争とかに向かって進んでいく時というのは、こういうふうにして変わっていくんだなと思うと怖ろしい、と。

森絵都さんや中島京子さんら文学者が何人も発言したのもペンクラブらしい貴重な機会だった。

森達也さんは見慣れない背広姿で登壇
森達也さんは見慣れない背広姿で登壇

安倍政権は共謀罪法案を5月には成立させるとしているようで、残された期間は1カ月しかない。果たしてあと1カ月で安保法制の時のような反対運動が作れるのかどうか。ペンクラブの集会には大半のマスコミが取材に来てくれていたが、こうした声をマスメディアがどれだけ、そしてどう報道するかが重要だ。共謀罪が成立すると、次はもう反対の声をあげることさえできなくなる恐れがあるのだから。

月刊『創』編集長

月刊『創』編集長・篠田博之1951年茨城県生まれ。一橋大卒。1981年より月刊『創』(つくる)編集長。82年に創出版を設立、現在、代表も兼務。東京新聞にコラム「週刊誌を読む」を十数年にわたり連載。北海道新聞、中国新聞などにも転載されている。日本ペンクラブ言論表現委員会副委員長。東京経済大学大学院講師。著書は『増補版 ドキュメント死刑囚』(ちくま新書)、『生涯編集者』(創出版)他共著多数。専門はメディア批評だが、宮崎勤死刑囚(既に執行)と12年間関わり、和歌山カレー事件の林眞須美死刑囚とも10年以上にわたり接触。その他、元オウム麻原教祖の三女など、多くの事件当事者の手記を『創』に掲載してきた。

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