“初陣”2試合で見えたハリルホジッチ監督の方向性。その中で輝いた選手とは?
チュニジア戦、ウズベキスタン戦と2連勝を飾り、7ゴールを決め、幸先の良いスタートを切ったハリルホジッチ監督率いる日本代表。その中で代表定着に向けアピールできた選手は誰だったのか?
『日本代表について議論するページ』の取材に回答する形で、チームの方向性と選手のパフォーマンスを掘り下げた。
−−チュニジア戦、ウズベキスタ戦を取材した河治さんですがどのようにみえましたか?
ハリルホジッチ監督の方向性を選手たちがしっかり意識しながらも、その中で持ち味をしっかり出して2つの勝利をものにしました。ホームの親善試合であることに難癖をつける評論家はいるかもしれませんが、新監督になって最初の2試合としては上々ではないでしょうか。
交代枠が6つあったとはいえ、単純に選手を試すだけでなく勝負師としての一面が早くも見られたことも良かったです。もちろん、今後のロシアW杯の二次予選がかなり入ってくる中で、残された国際Aマッチデーには厳しいアウェー戦を組んでもらって、そこでハリルホジッチ監督と選手がどれだけのパフォーマンスができるか見たいですね。
−−チュニジア戦のスタメンはかなり驚きましたが新戦力はいかがでしたか?
最初の試合ということで、選手たちは必死に監督の方向性を出そうとして、それがはまったところもあれば、そうじゃないところもありました。
結局、舵取りは経験豊富な長谷部と吉田がしていた様にもうつりましたが、前半の彼らのがんばりが後半途中に香川、本田が投入されたあとの勢いを生んだと思いますね。チュニジアのレーケンス監督は後半途中で運動量がガタッと落ちることは想定内だったみたいですが。
河治さんが気になった選手は?
1試合目では藤春ですね。足が速いことは分かっていましたが、正直あそこまで戦術的にしっかり機能できるとは思っていなかったので、特に守備のハードワークと球際の頑張りには驚かされました。
得点チャンスに右足でうまくミートできなかったことは本人も悔しがっていましたが、攻撃の精度とかはこれからだと思いますね。
2試合目の太田はアシストのクロスこそ良かったですけど、守備に課題が見られたので、左利きの左SBということでは、個人的にはちょっと藤春がリードしたかなとも思います。
もっとも太田もハリルホジッチ監督のスタイルに合った選手なので、守備面はクラブのやり方と違うとは思いますが、FC東京でしっかりアピールし直してほしいですね。
長谷部選手、今野選手はどうでしょう?
長谷部はさすがとしか言いようがないですし、年齢的にはベテランですが3年後も主力を担っている可能性は十分にあります。ただ、頼りすぎるのは危険なので、彼がいない試合でもチームがしっかり機能する様に経験やコンビネーションを高めたいですね。
2試合目で先発した今野は周りが縦に積極的すぎるのを逆にセーブしようとしている様にもうつりました。またウズベキスタンが予想に反して2トップ気味でロングボールを使ってきたため、途中からアンカー的なポジションを取ったのですが、青山や香川とのバランスに苦しんでいましたね。
球際ではしっかり良さを出しましたが、監督とも選手とも少し擦り合わせが必要かもしれません。ただ、本人は新たな刺激を得たみたいで「こんな年齢でも成長できる」と語っていましたし、これから楽しみです。
宇佐美選手、永井選手、川又選手は?
宇佐美に関しては途中出場でしたし、相手の守備がルーズになってくる中で、経験ある選手に引っ張られる形もあったと思いますが、やはりモノが違うことは証明してくれましたね。
守備も球際に何度か軽さは見られたものの、必要なら自陣まで下がってカバーするなど、高い意識が見られましたし、何としても代表で生き残っていきたいという意欲もプレーに表れていました。
攻撃も個人技だけでなく、周りを見ながらタイミング良く動き出そうとしていましたし、G大阪もスタイルこそ違いますが、今回得たものをJリーグやACLで発揮してほしいですね。
永井はまさにハリルホジッチ監督が求めるアタッカーの理想像だと思います。守備も精力的ですし、チェイシングもプレスバックもできる。彼の前半の走りが、後半にチュニジアの運動量を落とす要因にもなったと思います。ただ、コンビプレーの正確性を高めてほしいのと、ゴールに絡むプレーがほしかったですね。
川又はいきなりの先発で特徴を十分に発揮できない部分もありましたし、ポストプレーの質はまだまだだと感じましたが、2試合目で限られた時間に危険なシュートを放ち、泥臭い形ですが代表初ゴールを記録できました。
追加招集の身ですし、このままでは代表定着は難しいですが、名古屋でJ1の得点王争いをするぐらい頑張ってほしいです。相手DFにとって危険な存在ですし、可能性はあると思います。
この2試合を見られてハリルジャパン確定と思われた選手は?また今後呼ばれそうな選手は?
次はアジア予選になると思うのですが、日程が組合わせで変わってくる部分もあります。いずれにしてもハリルホジッチ監督はGK4人、フィールド21〜22人に絞ると語っているので、バックアップメンバーや今回選ばれなかった選手を含めてサバイバルですね。
確定・・・コンディション次第ですが、今回はバックアップにとどまった柿谷と高萩は呼ばれるんじゃないでしょうか。あと怪我がしっかり回復すれば長友と小林悠。興梠は引き続きJリーグでいいプレーをしていれば再びチャンスが与えられるでしょう。
そうした中でも、今回のメンバーで軸として考えられる選手は引き続き選ばれるでしょうね。吉田と長谷部は当確かな。もちろんエースの岡崎もですね。
要するに怪我で呼べなかった選手、レターが間に合わなかった選手が優先、そして当面は間違いなく軸になる長谷部、吉田、岡崎。あとは新戦力との兼ね合い次第。宇佐美、柴崎、山口など経験が必要な若手は選ばれてほしいですが、Jリーグや欧州にも候補はたくさんいるので、フレッシュなメンバーも見たいですね。
内田選手、香川選手、本田選手はどうですか?
内田は出場できるかどうかも分からなかったところから、2つの試合に起用されて2試合目は先発だったということで、やはり重要な戦力に計算されていると思います。
1試合目は守備を引き締めましたし、2試合目はサイドラインだけではなく、中盤に顔を出してスペースを埋めるとか、日本のSBでは内田にしかできないですね。
ただ、もともとビルドアップが得意な選手で、ボールを回しながらタイミング良く飛び出すスタイルなので、ドイツ組とはいえ速いサッカーの中でどう自分を出していくか様子を見ていたみたいです。もちろん膝の不安もあるのですが、次のチャンスにはより攻撃面で効果的なプレーを見たいですね。
香川と本田は1試合目の後半にさすがのプレーを見せましたが、相手の守備が疲労でバタバタだったことも事実で、2試合目の先発で貫禄を見せたかったところです。ところどころ見るべきプレーはあったし、テンポの良いつなぎからゴールに迫るシーンもありました。
ただ香川はドルトムントに通じる部分があり、スペースに入っていく動きはいいですが、そこからフィニッシュに行くところはもう少し積極性がほしいですね。
本田は短い攻撃時間でゴール前に顔を出すという部分で課題が残りました。特に本田は自分のもともとのサッカー観を変える必要に迫られていると思いますが、本人も新しい挑戦を良い刺激にしているみたいです。
たぶん、純粋にハリルホジッチ監督のもとで自分の特徴を出せる選手は他にもいると思います。乾はこれまでの代表より持ち味をそのまま出しやすそうで、より自然にプレーできていますね。
とはいえ、ハリルホジッチ監督は別にカウンターの信者ではなくて、日本の良くも悪くも伝統的になっているポゼッション癖をまず取り除いて、意識改革しようとしている趣旨も感じられます。
現在の方向性がしっかり浸透して、メンバーが定着してきたら、相手や状況に応じたポゼッションも容認するはずなので、その時にやはり香川や本田の存在価値がより出て来るでしょう。
ただ、本質的にハリルホジッチ監督のもとで輝ける可能性がある候補は多くいるので、「代表は全ての選手に開かれている」という監督の言葉通り固定的な聖域を作ることなく、メンバー選考でも合宿でも切磋琢磨してほしいですね。