『神コスパなサッカーで2連勝』浦和レッズが上向きになってきた要因とは?
連戦、不測の事態も乗り越える
公式記録上はシュート2本で2得点。実に決定率100%。清水エスパルスの敵地に乗り込んだ浦和レッズは、“コスパの高いサッカー”で今季初となる連勝を成し遂げた。
最も大きな要因は、リカルド・ロドリゲス監督の求めるチームスタイルが、予想以上の進捗で完成度を高めていることに尽きるだろう。
ここ最近の浦和は、ビルドアップからアタッキングエリアまで進入する形がスムーズになってきた。相手の立ち位置を見ながら、どこに有効なスペースがあるのか。それを選手同士で共有し、相手にとって危険なスペースに人とボールの動く時間帯が次第に長くなってきた。岩波拓也は言う。
「今は無駄な動きがなく、良いポジションを取って、ボールを動かすことができてきている」
先制点のCKは、相手のロングボールを柴戸海が回収し、明本考浩、武藤雄樹とボールをつなぎ、山中のドリブル突破から獲得している。確かにゴールシーンは山中による精度の高いプレースキックと、ドンピシャで合わせた岩波の技術力に拠る部分が大きい。ただそうした二人のストロングポイントを発揮できる状況を作り出せた背景には、有効なスペースでボールを引き出した武藤の動きと、そこにパスを出した明本の判断がある。前半終了間際という、より相手にダメージを与える時間帯に先制点を取れたのも、ボールに関わった選手たちが、“勝負どころ”を察知し、やるべきことを実践した結果だ。
また清水戦は、ボールを握りながら安定したゲーム運びが可能になってきたことで、難しい連戦の日程も克服できた。清水戦は中3日だったが、指揮官は前節の鹿島アントラーズ戦から一人も先発メンバーを代えずに戦うことを選択。それでも、チーム全体のインテンシティーは落ちずに、特に攻から守に切り替わるネガティブ・トランジションのスピード感はすさまじかった。浦和の“即時奪回”で自由を奪われた清水の中山克広は「浦和は切り替えの速さがあった」と振り返る。
ましてや、清水戦を迎えるまでの浦和には、不測の事態も起きていた。4月4日にはトップチームの選手で新型コロナウイルス感染症の陽性判定者が出たため、同日はトレーニングを中止せざるを得なかった。少なからずチーム内には動揺も走っただろう。ただそうした困難な状況にもかかわらず、強度の高いサッカーを実践できたのも、当然理由がある。それは、ロドリゲス監督の構築するチームが、ボール保持を前提にしていることと決して無関係ではない。ロドリゲス監督は言う。
「まずはしっかりと選手たちそれぞれが良いリカバリーをして回復してくれたからというのが一つです。それからもう一つは、われわれがボールを持っているので、相手に走らされる距離は短いのかなと思います。(連戦の中でも強度高く戦えたのは)そういった両方の側面が影響していると思います」
このように好循環の渦中にある浦和は、試合終盤の90分。宇賀神友弥からのスローインを出発点として、最後は杉本健勇がワールドクラスのダイレクトボレーを突き刺した。勝負を決定付ける追加点は、途中出場の5選手が絡む形だった。交代選手が結果を残す。こうした現象も、チーム状況が好転している証左の一つだ。
「こういった勝利は、常にチームの勝利だと思っています。途中から入ってきた選手、そして選手たち全員のプレーや頑張りがあっての勝利なので、その意味ではすごく良い試合をしたと思っています」(ロドリゲス監督)
今季初の連勝は、成績の芳しくないチームを相手に成し遂げただけに、手放しで称賛されるべきことではないかもしれない。それでも、構築過程にあるチームが右肩上がりで進化を遂げるには、勝利以上の“良薬”はない。岩波が言う。
「結果が自信を生んでくれますし、この自信が次の3連勝、4連勝と続いていけば良いと思います。僕たちは結果が出ていない試合でも、ある程度自分たちのやっていることを信じてプレーできていました。良い試合ができている中で勝てない試合もありましたが、こうして内容に結果も伴って2連勝できているのは大きいと思います」
次節は中3日で迎える徳島ヴォルティスとのホームゲーム。3連勝を懸けた試合で望みの結果を手にしたのならばーー。さすがに、浦和が今後のリーグをかき回す存在となることを、ライバルチームも認めるに違いない。
郡司聡(ぐんじ・さとし)
編集者・ライター。広告代理店、編集プロダクションを経て、2007年にサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』編集部に勤務。その後、2014年夏にフリーランスに転身。現在は浦和レッズ、FC町田ゼルビアを定点観測しながら、編集業・ライター業に従事している。著書に『不屈のゼルビア』(スクワッド・刊)。