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シーズン併殺打ゼロ。今年のアトリー以上に驚きなのは、後に阪神でプレーしたあの選手が記録していること

宇根夏樹ベースボール・ライター
チェイス・アトリー(ロサンゼルス・ドジャース) Jul 19, 2016(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

2016年のレギュラーシーズンで、チェイス・アトリー(ロサンゼルス・ドジャース)は565打席に立ち、1本の併殺打も打たなかった。1990年以降、規定打席をクリアして併殺打ゼロの選手は、アトリーが6人目だ。1969年以降に範囲を広げても、この6人の他にはいない。

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アトリーと言えば、併殺打にまつわるプレーが思い出される。昨年のディビジョン・シリーズで、併殺打を阻もうとしたアトリーのスライディングを受けた遊撃手は、右足を骨折した。これは、2016年から新たなルールが施行されるきっかけとなった。

また、アトリーの年齢は6人のなかで最も高い。オーティス・ニクソンリッキー・ヘンダーソンも当時35歳と若くはなかったが、アトリーはさらに上の37歳だ。

もっとも、このメンバーで異彩を放つのは、1994年に阪神タイガースでプレーしたロブ・ディアーだろう。他の5人はシーズン20盗塁以上を記録したことがあるが、ディアーは15盗塁以上さえなく、2ケタ盗塁すら1度だけ、1987年の12盗塁しかない。同じく三塁打も、5人は6本以上のシーズンがあるが、ディアーの最多は1986年の3本だ。さらに、5人は主に1番打者を務めたシーズンに併殺打ゼロを達成したのに対し、ディアーは5~7番を打っていた。

ベースボール・リファレンスで調べたところ、1990年のディアーには、併殺打となり得る状況――2アウト未満で一塁に走者――が87打席あり、6人のなかで最も多かった(最少はリッキーの31打席)。

ディアーの通算打席は、三振、四球、本塁打の合計が49.1%を占める。この特徴は1990年も例外ではなく、511打席の46.6%が、この3種類のいずれかだった。けれども、併殺打となり得る87打席から、三振、四球、本塁打、死球を除いても、45打席が残る。これはクレイグ・ビジオの52打席には及ばないものの、2番目に多いニクソンの47打席とほぼ変わらず、6人の平均42.5打席を上回る。

となると、ディアーが併殺打を1本も記録しなかった理由としては、併殺打となり得る打席で(1)ヒットをよく打った、(2)一塁まで常に全力疾走した、(3)ゴロの打球が少なかった、などが考えられる。

併殺打となり得る状況での打率.230は、シーズン全体の.209より高かったとはいえ、6人のなかでは最も低く、下から2番目のレイ・ランクフォード(.286)と.056もの差がある。一方、シーズン全体ではあるが、バントを除く打球のゴロ率も29.6%と低く、こちらもランクフォード(34.2%)を4.6%下回る(他4人は40%以上)。全力疾走したかどうかは不明ながら(していたと信じたい)、ディアーの場合、ゴロの少なさが併殺打ゼロの大きな理由と思われる。

他5人は2度以上のシーズン2ケタ併殺打を記録しているが、ディアーは1989年と1992年の各8本が最多だ。

なお、ディアーは阪神のユニフォームを着て226打席に立ち、4本の併殺打を打った。打席の51.3%は、三振、四球、本塁打のいずれかだった。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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