日本昔話の「桃太郎」を知っている人は多いだろう。

私にとっても幼い頃からよく耳に馴染んできたおとぎ話の一つだ。

今回訪れたのは、そんな「桃太郎」のモデルとなった神様が祀られる吉備津彦神社。

吉備津彦神社は岡山県岡山市の吉備路に鎮座する。

桃太郎伝説に基づく史跡や神社などが数多く残っている吉備路。

はるか昔の吉備国(岡山)の歴史や登場人物たちに思いを馳せながら、桃太郎伝説の舞台を巡ってみた。

桃太郎のルーツ

飛鳥時代、朝鮮半島の百済から温羅(うら)の一族が日本に渡ってきたことから桃太郎伝説は始まる。

温羅は吉備国に鬼ノ城を築いてその一帯を支配した。温羅は身長が4ｍを超え、赤い髪と髭を生やし、爛々と輝く目をしていた。巨漢で凶暴な温羅がさまざまな悪事を働くので、大和朝廷は大吉備津日子命を派遣。激戦の末、温羅を討伐する。

このお話の大吉備津日子命が「桃太郎」、温羅が「鬼」として語り継がれ、昔話「桃太郎」の原型になったとされる。

備前国一宮　吉備津彦神社

吉備津彦神社の御祭神は「桃太郎」のモデルとなった大吉備津日子命。大吉備津日子命の屋敷跡に御社殿が建てられたのが吉備津彦神社の始まりとされている。

吉備津彦神社は、夏至の朝日を神社真正面から迎えるように鎮座していることや、日本古来の太陽信仰の社殿配置を留めていることから「朝日の宮」とも称される。

また境内には多くの末社も鎮座している。

中でも温羅神社は、大吉備津日子命が退治した鬼とされる温羅が祀られている。桃太郎伝説では温羅は悪事を働く悪い鬼として登場するが、吉備国に製鉄文化をもたらすなど多くの功績を残したことから尊敬される一面も持っていた。温羅神社では、そんな温羅の穏やかな御魂をお祀りしている。

御朱印帳と御朱印

吉備津彦神社では、桃太郎伝説にちなんだ御朱印帳や御守りを受けることができる。

特に桃の御朱印帳は表紙と背表紙を合わせると、川を流れる桃の絵柄が完成する。そして全ページに透かし絵が入っているのも特徴的だ。

最後に

今回ご紹介したのは岡山県に伝わる桃太郎伝説だが、調べてみると日本全国に桃太郎の伝説が残っていることを知った。せっかくの機会なので、各地の桃太郎伝説を比較してみるのもおもしろいかもしれない。

実際に岡山を訪れ、鬼ノ城と呼ばれる山城(温羅の居城とされる)や吉備津彦神社などを巡ると、おとぎ話の一つでしかなかった「桃太郎」が岡山の歴史の一部として色濃く残っていることを感じさせられる。

吉備津彦神社を訪れたら鳥居前や拝殿前の備前焼の狛犬にも注目して欲しい。赤褐色の色や顔の造りにも温かみを感じるように思う。

1000年を超える歴史ロマンを感じに岡山の吉備路へ足を運んでみてはいかがだろう。