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「クイズ王」認定証がゲーセンでもらえたタイトルも 歴史に残るクイズゲーム4選

鴫原盛之ライター/日本デジタルゲーム学会ゲームメディアSIG代表
「早押し対戦クイズ・ハイホー」のゲーム画面(※筆者撮影)

最近では、PC(Steam)版の「Survival Quiz CITY」、アーケード版の「QuizKnock STADIUM」などの新作が登場しているクイズゲーム。

その歴史は意外に古く、日本国内に限れば少なくとも1983年までさかのぼることができる。だが現在では、最初期のタイトルが稼働またはプレイできる機会は皆無に等しい。機械の経年劣化などの問題もあり、いたしかたない面はあるが、歴史に残る名作が日の目を見ることがないのは正直寂しい。

以下、本稿ではクイズゲームに限らず、日本のビデオゲーム全体を含めても歴史に残るであろう、黎明期に登場したアーケード用クイズゲーム4タイトルをご紹介する。

1:「コンピュータークイズ 頭の体操」(八千代電器産業、ユニエンタープライズ/1983年)

3択形式で解答する、おそらく日本初の本格的なクイズゲーム。生物・科学や文学・歴史など4ジャンルから500問を収録し、既定の得点を獲得すると次のステージに進めるルールになっていた。

発売当時は、あちこちのテレビ局で視聴者参加型のクイズゲームが放送されていたこともあり、本作を遊んだプレイヤーは、まるでテレビのクイズ番組に参加したかのような気分になれるのがとにかく素晴らしかった。最も難しい「博士コース」をクリアすると、その場で「ものしり博士号」の認定証を発行するアイデアを導入したのも画期的だった。

同年には、早くも続編にあたる「続・頭の体操」と、子供向けにアレンジした「ドクターQ」が発売されており、本作がいかに人気を集めていたかがわかる。本作以外にも、同じく1983年には、他社からも「ものしりクイズ おしゃべりまちゃ」「Qイズジャンプ」「クイズタイムアタック」「クイズキング」などが発売されており、まさに「クイズゲーム元年」と呼ぶにふさわしい年であった。

競合タイトルが相次いだ中でも本作は、クイズ自体の面白さに加え、文字が読みやすく、認定証の発行や専用筐体(きょうたい)をわざわざ開発するなど、あらゆる面で出色の出来だったように思う。クイズがビデオゲームとしても楽しめること、および1人でもクイズが遊べることを世に知らしめた点でも、本作の存在意義は非常に大きい。

「コンピュータークイズ 頭の体操」のフライヤー(※AMP提供)
「コンピュータークイズ 頭の体操」のフライヤー(※AMP提供)

2:「ウルトラクイズ」(タイトー/1983年)

かつて、日本テレビ系列で放送されていた有名番組「アメリカ横断ウルトラクイズ」の名を冠した作品。番組と同様に東京(後楽園球場)からスタートし、クイズに解答しながら決勝の地ニューヨークを目指すステージ構成になっていた。

筆者はプレイ回数が少なく、古いタイトルゆえ詳細は忘れてしまったが、クイズは3択などの形式で出題され、実際に番組で使用されたクイズも収録していたので、実際に番組に出ているかのような気分になれるのが実に嬉しかった。

クイズはステージごとに5問ずつ出題され、4問正解すると次のステージに進めるルールで、失格の際は1回だけ「あみだくじ」などで敗者復活ができるシステムもあったと記憶している。本作にも、見事優勝すれば「クイズ王」の認定証が発行される特典が用意されていた。

後年、同番組の名を冠した家庭用ソフトが各社から多数発売されたが、本作は1983年の時点で、すでにテレビ局とのタイアップを実現していたことも特筆に値する。また本作は、新たなクイズが追加されたパート2~パート5まで、合計5つのバージョンが登場したことからも、発売当時はかなり人気が高かったことがうかがえる。

「アメリカ横断ウルトラクイズ」のフライヤー(※AMP提供) (C)NTV,JAPAN CREATE,TAITO CORP.
「アメリカ横断ウルトラクイズ」のフライヤー(※AMP提供) (C)NTV,JAPAN CREATE,TAITO CORP.

3:「早押し対戦クイズ・ハイホー」(日本物産/1987年)

タイトルに「早押し」「対戦」と明記した最初のクイズゲームで、最大4人まで同時対戦が可能。当時はクイズに限らず、4人で同時プレイできるタイトルは非常に珍しかった。

4人で遊ぶ際は、テーブル型の筐体を挟んで、2人ずつ横並びで向かい合う形でプレイする。「早押し」と銘打っているように、本作は解答までの時間が早いほど高得点が獲得できるので、プレイヤー同士での対戦がとにかく白熱した。

クイズは3択形式が基本で、全20問の成績によって勝敗を競う。さらに本作では、時折モザイク画に何が描かれているかを当てる絵クイズが出題されるのも、当時としては斬新だった。過去のタイトルにも絵クイズが存在したのか、はっきり確認できなかったので本作が「元祖」とは断言できないが、絵クイズが導入された最初期のタイトルのひとつであることは確かだ。

4人同時対戦に加え、絵クイズを導入したことでも斬新だった「早押し対戦クイズ・ハイホー」(※筆者撮影) (C)Nihon Bussan Co., Ltd.
4人同時対戦に加え、絵クイズを導入したことでも斬新だった「早押し対戦クイズ・ハイホー」(※筆者撮影) (C)Nihon Bussan Co., Ltd.

4:「ハテナ?(はてな)の大冒険」(カプコン/1990年)

1989年に登場した「カプコンワールド」の続編にあたる作品で、クイズは主に4択形式で出題される。2人協力プレイも可能で、雑学クイズだけなく、なぞなぞ問題も多数収録されている。

元祖「カプコンワールド」を「4選」にピックアップしてもよかったのだが、基本ルールやキャラクターデザインがより洗練され、知恵を求めて「天下一問答会」に参加する主人公の少年ハテナが、優勝者に与えられる「知恵の実」の獲得を目指すために冒険するという、まるでRPGのように凝ったストーリーが用意されていたことから本作をチョイスした。(※ちなみに前作も、盗賊たちにさらわれたカプコン王国の姫を救出する旨のストーリーがあった。)

本シリーズの白眉は、前作「カプコンワールド」と同様に、すごろく形式でマップ上を移動して、止まったマス目に出現した敵が出題するクイズに答え、バトルをするアイデアをいち早く取り入れたことにある。お手付きのストックがゼロになるとゲームオーバーとなるが、料金を追加すれば何度でもコンティニューが可能。一定の得点に到達するごとにお手付きのストックが1個増える、従来のアクション系のゲームと同じシステムを取り入れたのも面白かった。

2人協力プレイを導入したのも素晴らしいアイデア。2人同時に遊ぶと、片方のプレイヤーがお手付きをした場合は、パートナーが4択から3択に、つまり正解する確率が高い状態で解答できるので、1人で遊ぶよりもはるかにクリアしやすくなるからだ。

仲間を助けたい、あるいはストーリーの続きが見たいからと、プレイヤーはついついコンティニューを繰り返し、夢中になって遊んでしまう。つまり、ゲームセンターのインカム(売上)が上がりやすい仕組みを発明した点でも、元祖「カプコンワールド」ともども後世にまで語り継ぎたいタイトルなのである。

本作および「カプコンワールド」の出現以降、同じくカプコンが発売した「クイズ三国志」「クイズ殿様の野望」のはじめ「クイズクエスト」「苦胃頭捕物帳」「クイズ宿題を忘れました!」「クイズ大捜査線」など、同じ2人協力プレイシステムを導入したタイトルが相次いで登場。クイズがアーケードの定番ジャンルに完全に定着するきっかけを作ったという意味でも、本シリーズが歴史に残る作品であることは間違いない。

「ハテナ?(はてな)の大冒険」のフライヤー(※AMP提供)
「ハテナ?(はてな)の大冒険」のフライヤー(※AMP提供)

(取材協力)

・A.M.P.GROUPビデオゲームライブラリー

ライター/日本デジタルゲーム学会ゲームメディアSIG代表

1993年に「月刊ゲーメスト」の攻略ライターとしてデビュー。その後、ゲームセンター店長やメーカー営業などの職を経て、2004年からゲームメディアを中心に活動するフリーライターとなり、文化庁のメディア芸術連携促進事業 連携共同事業などにも参加し、ゲーム産業史のオーラル・ヒストリーの収集・記録も手掛ける。主な著書は「ファミダス ファミコン裏技編」「ゲーム職人第1集」(共にマイクロマガジン社)、「ナムコはいかにして世界を変えたのか──ゲーム音楽の誕生」(Pヴァイン)、共著では「デジタルゲームの教科書」(SBクリエイティブ)「ビジネスを変える『ゲームニクス』」(日経BP)などがある。

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