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大流行しています、新型?ウイルス【最悪の状況】

森井昌克神戸大学 名誉教授
マルウェア感染(写真:アフロ)

この2、3日、大量のコンピュータウイルス(マルウェア)が配布されています。記事にあるような20万件で済まないでしょうから、大流行と言って良いでしょう。

出典:大流行しています、新型?ウイルス【Yahooニュース!個人】

4月になってからもマルウェア感染の被害はその衰えを知りません。「マルウェアが添付されたような不審なメールは届いていないし、私が狙われて、そのようなメールが届くことなんてない」と言っている人もいることでしょう。しかし、今後確実に届くことになるでしょう。

パソコンのファイルを改ざんし、復元する条件として身代金を要求するウイルス「ランサム(身代金)ウェア」が添付された不審な電子メールが、今月に入り海外から日本に大量に送りつけられていることがわかった。国内での発見数は42万件を超え、情報セキュリティー会社は心当たりのないメールを開かないよう呼びかけている。

出典:新型身代金ウイルス猛威 添付ファイル開くと「脅迫文」【朝日新聞】

42万件という数字は、特定のセキュリティ会社が把握した数であり、おそらく少なく見積もっても数百万通、多ければ数千万通以上のマルウェア添付メールが日本国内に流れ込んでいます。今月も同様の数以上のマルウェア添付メールが届く可能性があるのです。

抜本的な対策はあるのでしょうか? これがないのが問題なのです。マルウェア対策ソフトもある程度有効ではあるのですが、それをすり抜けてしまうことも多く、対策法とは言えません。今のところ、対処する方法はただ一つ、上の記事にも書かれているように「怪しいメールを開かない、さらに心当たりのないメールを開かない」ということになります。なお、添付ファイルをクリックすることで感染するだけでなく、メール本体に書かれてるURL(ウエッブのアドレス)をクリックするだけで感染する可能性もあることに注意しましょう。

ここで問題になってくるのは「何が怪しいメールなのか? 何が心当たりのないメールなのか?」ということです。これが明確であれば苦労はしません。つまり感染はしません。感染させようとする相手は怪しくないメール、心当たりがありそうなメールを送ってくるのです。最近の典型は、アマゾンや楽天等での商品購入の確認や日本郵政等の宅配便の確認を装ったメールです。多くの人がこれらのサービスを利用しており、適当な取り扱い番号や購入品を偽って、添付ファイルを開かせる手法です。これは一例であって、さらに今後、人を惑わす手法が次々と現れることでしょう。

「じゃあ、どうすればよいの?」ということになります。「怪しいメールを開かない、さらに心当たりのないメールを開かない」という対策をさらに進めて、「必然性のないメール」を開かないということです。必然性がないという意味は、原則、添付ファイルは開かず、この添付ファイルを開かなければ業務に差し障りがあるとか、生活に支障があるという場合に限り開くこととし、その判断がつかない場合、他人の意見を聞くということです。

当然、それでも感染することはあるでしょう。最良で最後の対策は、感染したとしても被害がない、あるいは最小に抑えることです。ランサムウェア(身代金要求型ファイル暗号化マルウェア)であれば、重要なファイルはバックアップを取っておく、さらにそのバックアップはパソコンと切り離すということであり、不正送金マルウェアであれば、利用しているネットバンクの送金最大額の制限や、口座に預金しておく金額を必要最小限に抑えるということです。

残念ながら、絶対にマルウェアに感染しない対策は皆無と言って良いのです。

神戸大学 名誉教授

1989年大阪大学大学院工学研究科博士後期課程通信工学専攻修了、工学博士。同年、京都工繊大助手、愛媛大助教授を経て、1995年徳島大工学部教授、2005年神戸大学大学院工学研究科教授(~2024年)。近畿大学情報学研究所サイバーセキュリティ部門部門長、客員教授。情報セキュリティ大学院大学客員教授。情報通信工学、特にサイバーセキュリティ、情報理論、暗号理論等の研究、教育に従事。内閣府等各種政府系委員会の座長、委員を歴任。2018年情報化促進貢献個人表彰経済産業大臣賞受賞。 2019年総務省情報通信功績賞受賞。2020年情報セキュリティ文化賞受賞。2024年総務大臣表彰。電子情報通信学会フェロー。

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