テレビやラジオが減り、携帯電話が増える…メディア接触時間の変化をさぐる
・メディアへの接触時間は増加傾向。2018年では週平均で一日あたり396分。
・テレビやラジオなどの従来型メディアへの接触時間は減少中。携帯電話(スマートフォンと従来型携帯電話)などは増加中。
少しずつ増えていく総接触時間
利用方法や注力度合いの違いはあるが、人が1日に与えられているのは24時間しかない以上、メディアへの重点度合いはその利用時間の長さで推し量れる。その変化の実情を博報堂DYメディアパートナーズのメディア環境研究所が2018年5月に発表した「メディア定点調査2018」(※)の公開値などから確認する。
「メディア定点調査」における各主要メディア毎の、一日あたりの平均接触時間を時系列に並べてグラフ化したのが次の図。2008年までメディア接触時間総数は減少していたが、2009年以降大きく増加。そして2010年以降は事実上横ばい。ところが2014年には大きく伸びる動きを見せた。これは新規に回答項目としてタブレット型端末が加わったことによるものと考えられる。しかし単純にそれを引いてもまだ余りある増加を示していることから、加えてスマートフォンの急速な普及も大きく影響しているのだろう(項目中の「携帯電話」は従来型携帯電話とスマートフォンの合算)。
直近の2018年では前年から少しばかりの増加を示した。400分台もそう遠い話では無い。
4大従来型メディア(テレビ・ラジオ・新聞・雑誌)は波があるもののどの媒体も押しなべて減少傾向にある。他方、インターネット接続が可能なデジタルメディアでは、パソコンが2011年までは増加傾向にあったもののそれ以降は減少に転じているが(直近年では前年比で増えている)、それ以外はおおむね増加の流れにある。
一方、このような動きがある中でも、単独項目ではテレビが最大利用時間の地位を維持していることに違いは無い。ただし「インターネットメディア」との仕切りでパソコン、タブレット型端末、携帯電話の時間を全部足すと2018年では199.6分となり、テレビ単独の144.0分を超えることになる。タブレット型端末の項目が加わったのも一因だが、この計算方法でテレビ時間を超えたのは、2014年から連続して5年目となる。
携帯電話の利用時間は大きな伸び
それぞれのメディア接触時間の増減について、公開されている範囲で最古データの2006年時の値を基準値の100%と設定(ただしタブレット型端末は2014年からの登場なので、その年の値を基準値とする)。それぞれの変化の流れを見たのが次の図。この算出方法により、他のメディアの動きとは関係無く、個別でどれほど時間の伸縮が生じているのかが把握できる。
各媒体の動向が非常によく理解できる。例えば4マスはテレビですらも減少しているが、4マス内の他のメディア、ラジオや新聞などと比べれば健闘している。またインターネット接続により「魔法のツール」と化すデジタル系機器だが、パソコンは2011年がピークでそれ以降は漸減(2018年では久々に前年比でプラス)。一方、それとほぼタイミングを同じくして、携帯電話は伸び率を加速化ざせている。
テレビ離れは2010年以降の傾向として表れていたが、2014年以降はほぼ横ばいに推移していた。これは多分に高齢層の増加によるところが大きい。もっともここ1、2年では再び減少の動きにあるが。
昨今ではいくつかの調査結果において高齢層の増加を主な要因として、テレビ視聴時間の漸増が確認されていることから、今後接触時間の観点でテレビが復調する可能性はある。しかし仮にその動きが現実のものとなっても、ラジオ、新聞、雑誌の接触時間はさらに減り、結果としてデジタル系機器のような新メディアへの接触時間の伸びの傾向に変化を与えることにはつながらない。
それぞれのメディアの利用スタイルまで考慮すれば、単純な利用時間のみで比較をするのにはリスクがある。またインターネットを利用したメディアでも、新聞や雑誌の「コンテンツ」を視聴することはできるので、境界線が曖昧となりつつあるのも事実。とはいえ、メディアそのものの利用との観点で考えれば、この流れが継続することは間違いあるまい。
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※メディア定点調査2018
調査方法は郵送調査方式。調査期間は2018年1月25日から2月9日。東京・大阪・愛知・高知の4地区を対象に RDD(Random Digit Dialing)方式で選ばれた15歳から69歳の男女に対し調査票が送付され、2513通が回収された。各値は2017年の住民基本台帳を基に年齢階層・男女でのウェイトバックが実施されている。また特記無き限り記事内のデータは基本的に東京地区のもの。過去の調査もほぼ同様の形式で行われている。
過去の調査では利用機器に2014年からタブレット型端末が追加されている。2013年までは(ノート)パソコンと同一視され回答にくわえられていた可能性もあるが、2014年以降は機器として独立項目が設けられたため、以前と比べてメディア接触時間の合計が上乗せされている可能性が高い(メディア接触時間が有意で増加している)。
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(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。