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「声出しはセーフ」も「許されないこと」NPB熊崎コミッショナーの矛盾

豊浦彰太郎Baseball Writer
2020年 東京オリンピックプレビュー種目追加検討会議の際の熊崎氏(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

「声出し」による金銭授受は巨人だけではなかったようだ。15日には阪神と西武でも同様な行為が行われていたことが発覚した。ヤクルト、中日、日本ハム、オリックスは「確認できなかった」としているが、まだ他にも出てくるかもしれない。熊崎勝彦コミッショナーが「野球協約抵触には当たらない」とお墨付き与えているからだ。名乗り出るなら今のうちだ。まるで、2013年のホテルレストランでの「芝エビ事件」だ。

それにしても、コミッショナーの昨日のコメントは矛盾に満ちている。阪神、西武の件を受け「許されるものではない」と語っている。「声出し」に絡む金銭授受は昨年10-11月時点で発覚していたようだが、「協約違反には当たらない」として無罪放免どころか公表すらしていなかった。それもひとつの判断と言われれば「そうかな」と思うしかないが、それなのにここに来て「許されないこと」だと言う。

野球協約は、野球そのものの尊厳にかかわることなら法律よりも厳しいものだとぼくは思う。実際、笠原将生ら元巨人の3選手は賭博行為でNPBを無期失格となったが、彼らの犯した行為は法的にはそれほど思い処罰が科せられるものではなく、仮に現行犯で逮捕されても罰金程度ではないか。

要するに、ある面では(野球協約>法律)なのだ。しかし、「声出し」は「許されるものではない」のに「協約違反には当たらない」という。この矛盾をどう解釈するべきか。熊崎コミッショナーのロジックは完全に破綻している。

彼は、一旦「声出しはセーフ」としたからには、周囲からどんな雑音が出てこようが、巨人以外の球団も「実はウチもやってました」と言いだそうが、「大したことではない」と当初の主張、姿勢を貫き通すべきだったと思う。法曹界出身の彼が、自らの主張の矛盾に気づいていないとはぼくには思えない。これでは、動揺する第三者からの一貫性のない指示に踊らされているかのようすら見えてしまう。

Baseball Writer

福岡県出身で、少年時代は太平洋クラブ~クラウンライターのファン。1971年のオリオールズ来日以来のMLBマニアで、本業の合間を縫って北米48球場を訪れた。北京、台北、台中、シドニーでもメジャーを観戦。近年は渡米時に球場跡地や野球博物館巡りにも精を出す。『SLUGGER』『J SPORTS』『まぐまぐ』のポータルサイト『mine』でも執筆中で、03-08年はスカパー!で、16年からはDAZNでMLB中継の解説を担当。著書に『ビジネスマンの視点で見たMLBとNPB』(彩流社)

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