「内定辞退の方法」正解は?人事担当者が「直接会って話したい」とは本当なのか
新卒採用マーケットの売り手市場傾向は今年も変わらなかった。
今年は例年にも増して早期化の傾向がみられ、3月の広報解禁から1ヶ月前後でその成否は概ね決まっていたといっても過言ではない。
というのも、インターンへのシフトにより「広報解禁後のエントリー」が減っているのだ。
さらに大手有名企業が内定数が増えたことにより、中小企業はもちろん大手企業でさえ選考辞退・内定辞退が増えているようだ。
追加での母集団形成もままならない中、内定辞退に関する問題は例年以上に人事担当者の頭を悩ます問題となっている。
そんな中、「内定辞退の方法」について議論が起きている。
【内定辞退は対面で?それとも電話で?】
先般、日経産業新聞の「内定辞退の正しい伝え方、『直接会って、まず感謝』を」という記事が炎上した。(就活探偵団 2019年5月15日より)
ある就活コンサルタントの「(内定辞退をする時は)メールの送りっぱなしや電話で完結してはダメ。必ずその企業に足を運ぶことが重要」というコメントを紹介し、辞退する学生は内定を出した企業に感謝し、誠意を見せるべきだと主張。
しかし実情として内定辞退時に企業訪問するという学生はそこまで多くなく、大半は電話、もしくはメールで内定辞退の連絡をすることが多い。
日経産業新聞の記事に対しては「前時代的」「お互いにとって非効率だ」などの批判が多く見られた。
【「企業側は直接会って話したい」というのは本当なのか】
そしてこの記事が炎上した後、本誌である日本経済新聞でも内定辞退に関する意識調査を実施したようだ。しかしこの調査結果と考察がなんとも不思議な主張となっている。
日本経済新聞社は新卒採用を実施している主要100社と、内定辞退経験のある入社1~2年目の若手社員を対象にアンケートを実施したという。
まず「内定辞退経験者」の結果としては、約9割が「電話で内定辞退した」という。
一方、企業の約7割が連絡手段は「電話」と答えたが、約2割の企業は「直接対面しての辞退」を希望した。
(厳密には、直接対面を希望している企業は16%だったようだが、日経新聞紙面上では約2割と表現されている。)
企業側が対面での辞退を希望する理由としては「辞退者を引き止めて説得したい」「詳しく理由・事情を聞きたい」などが挙げられているが、理由を聞くというのは「理由次第では引き止めたい」という事も含まれると考えて良いだろう。
日本経済新聞では、この調査結果を踏まえて「企業側には対面を望む意見も根強い」と考察しているが、逆に言うならば「2割(正確には16%)の企業しか直接対面での辞退を希望していない」と見る事もできる。
むしろこの調査結果であれば、企業側も直接対面での辞退は望んでいないと考える方が自然ではないだろうか。
【企業側の要請がない限り、電話での辞退が一般的】
これが内定承諾して内定式を過ぎた後の辞退であれば話は別になってくるが、内定式を迎えていない段階での内定辞退に関しては「メールしてから電話」あるいは「電話した上でメール」という連絡方法で十分に筋は通る。
約8割の企業は直接対面「以外」での辞退で良いと考えているのだから、企業側から特別に要請がない限り内定辞退は電話などで伝えれば十分ではないだろうか。
(電話の後に、記録として残るようにメールもしておけばより丁寧であることは間違いない)
辞退される企業が「会って話したい」と考えるのはまだわかるが、第三者が「会って辞退するべき」と推奨するのはなんともおかしな話である。
もちろん、人事担当者が「直接会って話したい」と言ってきたらその時は礼儀として応じるべきだろう。
しかし人事担当者も多忙な時期であり、内定者の数によっては1人1人辞退者との面談を調整するのもそれなりの負担となる。
実際のところ「企業側からの依頼も無いのに訪問するのは相手の手間を増やすだけ」と考える学生も多く、実際その通りである事も多い。
6月はすでに下の学年のインターンの募集なども始まり、同時並行の採用活動にあくせくしている新卒採用担当者は多いのだ。
ただし「辞退するか迷っている」という段階であれば直接会って相談するのも良いだろう。
そういった学生をフォローすることは採用担当者にとって重要な仕事であり、その面談のためにアポイントを取ることは失礼ではない。
【サイレント辞退は厳禁】
学生の内定辞退に関して重要なのは、手段はなんであれ明確に意思を伝えるということだ。
どんなに言いづらくとも内定辞退を決めたのであればその連絡はすぐに行うべきなのだが、「言いづらいから…」と後回しにしてしまったり、連絡しないままフェードアウトしてしまう学生もいる。
「普段電話でかしこまった会話をしないので、緊張する」と億劫になり、連絡が遅くなる事もあるかもしれない。もしそれが理由で連絡が遅れるのであれば、まず先にメールで一報を入れてから電話でも良いだろう。
「電話だとうまく言える自信がない」という場合、メールで言いたいことを伝えておいて「メールでも書いたのですが…」と話すのが確実だろう。
内定辞退の連絡が遅れれば遅れるほど辞退された企業側のダメージは大きく、だからこそ「決意した段階で早急に連絡する」ように心がける事が大切だ。
「どのように連絡するか」はその次の話であり、そこにばかりこだわるべきではない。