環太平洋合同演習(リムパック)で初の地対艦ミサイル演習を実施、中国海軍にらみ米陸軍が装備化検討
現在ハワイで行われている環太平洋合同演習(リムパック)で7月12日に、当演習では史上初となる地対艦ミサイル部隊が参加した実艦標的演習が行われました。標的艦は退役したニューポート級戦車揚陸艦「ラシーン」が用いられ、参加した地対艦ミサイルは日本から派遣された陸上自衛隊の12式地対艦ミサイルと、アメリカ陸軍で評価試験中のNSM対艦ミサイル(地対艦型)です。アメリカの同盟国の中では日本が地対艦ミサイルを長年運用してきた実績があるので、ハワイに呼ばれることになりました。
アメリカ軍はこれまで地対艦ミサイルを保有していませんでしたが、拡大を続ける中国海軍に対抗するために地対艦ミサイルの新規導入を検討しています。リムパックに持ち込まれたものは評価試験中の機材で、アメリカ陸軍のオシュコシュ社製トラックPLS(パレット式貨物システム)にノルウェーのコングスヴェルグ社製NSM対艦ミサイル4連装ランチャーを搭載したものです。
アメリカ陸軍は他にもHIMARS(高機動ロケット砲システム)に対艦攻撃能力を付与したいと検討中です。HIMARSは車両が小さくC-130輸送機で空輸が可能なサイズなので、緊急展開を行いやすい利点があります。現時点でHIMARSは対地攻撃用のGMLRS(誘導型多連装ロケット弾)とATACMS(短距離弾道弾)を運用可能で、ATACMSの後継となる新型短距離弾道弾LRPFに対艦攻撃能力を持たせる計画です。
ただし短距離弾道弾は弾道弾としては速度が遅く、巡航型の対艦ミサイルと違って海面すれすれを這うように飛ぶことが出来ないので、発見されやすい上に迎撃も容易という欠点があります。そもそもアメリカ軍はINF条約(中距離核戦力全廃条約)で射程500km~5500kmの弾道弾を持てませんし、弾道弾は射程を伸ばして速度が速くなり過ぎると移動目標に当てられるような誘導が極めて困難になる技術的問題を抱えています。その為、LRPF短距離弾道弾の対艦型があまり有効ではないと判断された場合は、NSMのような巡航型の地対艦ミサイルの装備化を重点的に進める事になるでしょう。