江越&板山のアベック弾、そして完封リレー!関西大学と7年ぶりの交流試合《阪神ファーム》
プロ野球と大学単独チームとの交流試合が解禁となったのは2011年3月1日。阪神タイガースのファームも、これまで何度か対戦してきました。3月と8月の2ヶ月限定なので、特に8月など公式戦の日程が詰まっていたりすると少なくなりますね。昨年は1試合もなく、2016年の3月に近畿大学を迎えたのが最後でした。巨人に入った畠世周投手が投げるとあってマスコミも多かったのと、0対1で負けたことを覚えています。
ことしは交流試合が2つ組まれていて、まず27日は関西大学と2011年の8月以来7年ぶり(その時は3対4で負け)の対戦、29日は2年ぶりの近畿大学が相手です。きのう27日は、今秋のドラフト上位指名候補と言われる新4年生の山本隆広投手(21)が先発。2015年まで阪神の投手コーチだった山口高志さんも、スタンドでご覧になっていました。山口さんは現在、母校である関大野球部のアドバイザリースタッフを務めていらっしゃるんですね。
山本投手は2回までで、47球を投げ1安打2四球の1失点。最速は143キロ。阪神ファームの矢野燿大監督は「150キロは出なかったね。まだ調子上がっていなかったのかな」と少し残念そうだったのですが、実は桜宮高校の後輩でもある右腕に「やっぱり違うよね。後輩っていうとね。楽しみですよ!きょうは話もできたし、よかった」と笑顔でした。
阪神の方はルーキー・石井将希投手がプロ初先発。登板自体も3月14日の教育リーグ・中日戦(ナゴヤ)以来です。また2月の安芸キャンプ初日に肋間神経痛との診断を受けて離脱していた藤谷洸介投手が、今季初の実戦登板を果たしました。昨年12月に腰部ヘルニアの手術を受けた望月惇志投手の復帰も、もうすぐでしょう。
5投手による完封リレーだった試合は、打線が長打で得点を重ねています。右打ちに専念することを決めた江越大賀選手が、満塁の走者を一掃する三塁打とソロホームランで4打点!4番で好調をキープしている板山祐太郎選手も、ソロホームランを含む3安打と気を吐きました。では試合結果をどうぞ。
《交流試合》
阪神- 関西大学 (鳴尾浜)
関大 000 000 000 = 0
阪神 100 103 01X = 6
◆バッテリー
【阪神】石井-歳内-藤谷-青柳-福永 / 長坂-小宮山(6回~)
【関大】山本(2回)-肥後(3回1/3)-浜田(1回2/3)-鷲尾(1回) / 高橋
◆本塁打 阪神:板山ソロ(肥後)、江越ソロ(鷲尾)
◆三塁打 阪神:江越
◆二塁打 関大:古川
◆打撃 (打-安-点/振-球/盗塁/失策)
1]一:荒木 (1-0-0 / 0-1 / 1 / 0)
〃一:森越 (2-0-0 / 2-0 / 0 / 0)
2]中:緒方 (2-0-0 / 1-2 / 2 / 0)
3]三:北條 (3-0-1 / 1-0 / 0 / 0)
4]二:板山 (4-3-1 / 0-0 / 1 / 0)
5]左:中谷 (4-1-0 / 1-0 / 0 / 0)
6]捕:長坂 (2-0-0 / 0-0 / 0 / 0)
〃捕:小宮山 (2-1-0 / 1-0 / 0 / 0)
7]指:今成 (1-1-0 / 0-1 / 0 / 0)
〃打指:岡崎 (1-0-0 / 1-1 / 0 / 0)
8]右:江越 (3-2-4 / 0-1 / 0 / 0)
9]遊:熊谷 (4-0-0 / 2-0 / 0 / 0)
◆投手(打-振-球/失点-自責) 最速キロ
石井 5回 60球 (4-6-1 / 0-0) 142
歳内 1回 8球 (1-1-0 / 0-0) 141
藤谷 1回 16球 (0-1-1 / 0-0) 141
青柳 1回 13球 (1-0-1 / 0-0) 142
福永 1回 13球 (0-1-0 / 0-0) 147
<試合経過>※敬称略
まず阪神の攻撃から。1回は荒木が四球と二盗、緒方の右飛で1死三塁となり北條の左犠飛で先制。2回は1死から今成が四球を選ぶも江越の三ゴロで5-3-5の併殺。関大の山本はここで交代です。3回は肥後に対して三者凡退だったものの、4回に板山がレフトへ大きな当たりを打ちました。打球はレフトのポール際ぎりぎり、フェンスのすぐ上のところに入るホームラン!
5回は今成の左前打と2四球で塁を埋めながら追加点なし。6回は板山が左中間へのヒットを放ち、1死後に二盗成功。小宮山のショート内野安打、代打・岡崎の死球で満塁として、続く江越が右中間へ走者一掃のタイムリー三塁打!この回3点を加え、5対0となります。
7回は先頭の緒方がストレートの四球を選び、二盗、三盗と決めますが、ここは無得点。8回は関大4人目の鷲尾に連続三振を喫したあと、江越が初球を打って左中間へ文句なしのホームラン!
一方、投手陣は5人で完封リレー。先発の石井は1回、先頭に振り逃げを許し(三振と暴投)、太田の左前打、次の古川のバントが内野安打となって無死満塁とピンチを招くも、4番・倉川は三ゴロで本塁封殺、続く野口を遊ゴロ併殺打に打ち取って無失点。2回と3回は三者凡退です。
4回は先頭の古川に二塁打されながらも倉川を遊ゴロに、あとは連続三振で切り抜けています。5回も先頭の7番・高橋に左前打、犠打と遊ゴロ、四球で2死一、三塁としましたが、最後は空振り三振で得点を与えずに投げ切った石井。5回を投げ4安打6三振で無失点という内容。
後半はキャッチャーが小宮山に代わり、6回は歳内が2死後に野口の中前打を浴びるも無失点。7回は今季初登板の藤谷が2死から四球を1つ与えただけで0点に抑えました。8回は青柳で、古川の中前打と四球でなど1死一、二塁としますが、併殺打で片づけ、9回は福永が三者凡退でピシャリ!3番・古川には3安打されたものの、6安打完封リレーで試合終了です。
「江越もうれしいし、俺らの励みにもなる」
試合後の話は、いつものように矢野監督からご紹介します。石井投手について「大学生相手ではあったけど、まずは球数やイニングをこなせたのが、よかった。支配下になることじゃなくて、1軍で投げるっていうのが目標でないとね。そのためにも、きょうは課題の見えた登板になった。真っすぐのスピードや変化球、クイックなど。それを1つずつクリアしていけば1軍で投げることができて、つまり支配下になっていくわけだから」と、次の段階へのステップを要求しました。
左方向へ3安打の板山選手には「ずっといい!筑後でもレフトにヒットを打っていたし、バッティングはいい感じになっているよ。体重がかかとにかかっていたけど、踏み込むことが大事だとわかってきたかな。それと板山は全部、初球から振れている。今のままポンと1軍に上がっても結果が出る可能性もあると思うし、出なくてもやるべきことがやれる気がする。盗塁でも、サインを出せば思い切って行くしね」と、さりげなく推しています。
初球からといえば江越選手のホームランも?「やっと当たったね!びっくりしたわ」と笑いながら「前の打席は追い込まれて打った(0-2からの3球目を三塁打)けど、1軍ならそこで終わってるでしょ。だから俺は常に言っている、一発で仕留めろと。でもホームランは、太一が3球続けて空振りした次の初球やったからね」と振り返ったのは、岡崎選手が空振り3つで三振に倒れたあと、初球の真っすぐを打った場面です。
そして、もう一言。「アイツもうれしいし、俺らの励みにもなる」と矢野監督。江越選手が打ったのは、そんなホームランでした。
初先発で5回無失点!出た課題も多数
続いて選手のコメント。まずプロ初先発で最長の5イニングを投げた石井投手です。初めての先発で緊張したかと聞いたら「緊張はいつもしています」という返事。確かにね。「(大学生相手で)投げにくいってのはありましたが、試合前から“しっかりゾーンで勝負して自分のピッチングをしよう”と思っていて、それができたのでよかったです」
5イニングを投げたのはいつ以来?「半年以上前です」。ここまで2回止まりだったところから、一気に5回でしたね。「久しぶりに長いイニングを投げて課題もはっきり出たので、その課題を克服して試合に臨んでいきたい」
課題とは?「初球からバントとか簡単にやらせてしまっているので、相手をもう少し困らせるようなピッチングで攻めていってもいいかなと思ったのと、ストレートももっと強い球を平均して投げていかないとプロ相手なら簡単に打たれる。もうひとつ、クイックもまだちょっと遅いのかなと」。3つのポイントを挙げています。
計6奪三振で、そのうち半分が110キロ台の変化球。これはカーブ?と聞かれた石井投手は「いえ、スライダーです」と苦笑いでした。「緩いんです。それも課題」と付け加えてから「強いスライダーを練習しています」とのこと。とはいえ100キロ前後のカーブでも空振りをさせていますからね。
この時に聞いただけでも4ポイントの課題が出てきましたが、振り返ってみて「ゼロを並べられた、そこは収穫だと思います」という感想。次は公式戦で、またゼロを並べましょう。
初登板の藤谷投手、中継ぎで福永投手
肋間神経痛のため2月のキャンプでは20日にようやくブルペン入りし、最終日の28日に10球限定で捕手を座らせてのピッチングを行った藤谷投手。2度のシート打撃登板を経て、27日に初実戦でした。内野ゴロ2つのあと1四球、真っすぐでの空振り三振という内容で、最速は141キロ。「初めてにしては141キロで“よし”ですかね」
「去年に比べて、真っすぐがよくなっているなと思った。ひとつずつ、ちょっとずつでも成長しているので、いい登板だったと思います」と手応えを感じた様子。「真っすぐで結構ファウルが取れていたので、そこも収穫かなと。フォークも投げましたよ。初めての球です」。社会人時代も投げていなかった?「はい。なかったです。始めたのは2月のキャンプから」
まだ1軍の方からピッチャーが投げに来ることもあって、なかなか登板機会が回ってこない先発陣もいます。福永春吾投手も、16日のウエスタン開幕のソフトバンク戦以来のマウンドでした。「きょうは真っすぐの力強さをテーマに。ブルペンで力強く投げていますけど、バッターが立った方がね。やっぱりゲームでしか確認できないこともあるので」
そういえば、投げた13球のうち12球が真っすぐですね。146キロとか147キロとか。「はい。そう言いながら最後はカーブで三振(笑)」。確かに、先頭打者から奪った空振り三振は117キロのカーブでした。矢野監督からおもしろいと言われたカーブも「課題」なのだそうです。
自分で打ち上げた24歳の祝砲!
次にホームランの2人。まず1回に三遊間を抜き、4回はレフトポール際へホームラン、6回は左中間へと3打席連続で左方向へヒットを放った板山選手です。「ホームランは、カウントがよかった(2-0)ので、踏み込んで引っ張ろうと。ボールの変化にも対応して、押し込むことができた。思ったより飛んだのは力がボールに伝わっているのかなと思いました」
逆方向のヒットが多いという矢野監督の言葉を聞き「力じゃなく、バットや体の使い方で強さが変わってくることプラス、トレーニングで鍛えた力で飛んでいるのかなと。少しずつよくなっている感覚は毎日、少しずつあります」と板山選手。それにしてもレフトのポールのすぐ横に入ったホームランだったと言うと「レフトフライとホームランじゃ大きな違いですもんねえ」と、しみじみ。
なお27日が誕生日だった板山選手に、1打席目のヒットのあとで「ハッピーバースデーツーユー♪」とスタンドのお客様が歌ってくれたのは聞こえましたか?「え、そうなんですか?歌ってくれたんですか?…気づかなかった」。実は、本当なら最初の打席に入るところで歌うものだけど間に合わなくて、ヒットが出たところで歌ったから、次の中谷選手がお誕生日みたいになっちゃって(笑)。だから余計に気づかなかったかもしれません。
花粉症のため目も真っ赤で、まぶたも腫れて、ものすごい鼻声ですが、最後に決意表明。「日々、アピールです。チャンスはなかなかないけど、いつかその日のために。一発でチャンスをつかまないといけない」
「今までにない感じ」光が見えた一発
江越選手は「久しぶりというか、今までになかった感じ」と、ホームランを回顧しています。打った瞬間にわかるとか、文句なしとか、そういう表現では物足りないようなスイングで、本当に“バット一閃”という表現がぴったりの、迷いのない振り抜きだったと思います。見とれてしまい、板山選手の一発に続いてまた写真が撮れませんでした。残念!
「矢野監督からもずっと言われていたんですが、上と下が一緒になってスイングしていたので、下半身始動でスイングすることを心がけていました。それがようやく、ちょっとずつできるようになった。きょうも朝の練習から感覚がよかったです」と江越選手。
ヘルメットが右打者用に変わりましたね。「この前からですよ。中日戦の2日目から」。あ、そうだったんですね。失礼しました。24日からもう変わっていたみたいです。このまま右専念で?「そうですね」。このホームランは、いいきっかけになりそうな手応えがあった?「はい、そうですね」。江越選手の、このパワーを鳴尾浜だけで見るのは惜しいと改めて感じました。
<掲載写真は筆者撮影>