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ハワイ・ワイキキに異変!「キングタイド」で洪水の危機

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
(写真:アフロ)

世界有数のリゾート、ハワイのワイキキビーチ。今ここのホテル業界は、現地時間25日(木)から予想される「ある現象」に大きな危機感を募らせています。

その現象とは、史上最大規模とも危惧される海水面の上昇です。これに伴って海岸エリアで洪水や侵食の恐れが高まっており、砂浜とホテルの建物との境に砂袋が積まれたり、海辺の売店に板がうち付けられたりするなど、様々な対策がとられています。

異常な海水面上昇の原因は?

では、この海水面の上昇は何によってもたらされるのでしょうか。

要因の一つは、南半球に渦巻く低気圧由来の大きなうねりが到達すること。そしてもう一つは「キングタイド(king tide)」と呼ばれる現象です。

キングタイドとは「極端に大きな大潮」のことで、太陽と地球と月とが一直線に並び、さらに地球に働く引力が一年のうちで特に大きくなった時に発生します。新月や満月のとき大潮になりますが、キングタイドはその究極バージョンといったところでしょうか。

4月の洪水

実は先月の4月28日にもキングタイドが発生し、ワイキキで洪水が発生しました。その時の水位は、統計が開始された112年来で最も高いものとなりました。

その結果、海岸に打ち上げ台が設置できず、ヒルトン・ハワイアンビレッジが毎週開催している花火大会が中止になったり、海岸沿いの道路に水が流れ込んだりしました。上の動画はその時のものです。

なお、ハワイ大学の海洋学者メリフィールド氏によると、6月23日と7月21日頃にも、再びキングタイドが発生するといいます。

背景に温暖化の影響も

ところで、このキングタイド自体は昔から毎年起きている自然現象ですが、なぜここにきて問題になっているのでしょうか。それには近年の温暖化の影響があります。

地球全体のデータでは、1990年以前は毎年1.1cmのペースで海水面が上昇していたものの、1993年からの10年間では3.1cmと、その上昇のペースがおよそ3倍に早まっているという報告があります。

これは、極地方の氷床や氷河の融解や、海水温上昇による水の膨張などが原因とされています。

メリフィールド氏は、今回のような水位が高い状態は、今後一般化するとし、一年間のうちに2030年迄には4回、2050年迄には25回、そして2070年迄には100回も起きる恐れがあると予想しています。

残念ながらそう遠くない将来に、多くの人々が海岸から離れ生活することを強いられる時代が来るかもしれません。

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(25日20時 追記)

コメントをいただきまして誠にありがとうございます。以下補足いたします。

<水面上昇率について>

「1993年からの10年間では、年間3.1cm」という意味でしたが言葉足らずとなってしまいました。追記させていただきます。

<予想潮位について>

予想される最高潮位は約75センチとなっていますが、今回ハワイで洪水が懸念されているのは、キングタイドに加え、南からのうねりの影響などで、さらに水位が上がることにあります。実際、25日ホノルルでは89センチもの水位を記録しました。なお26日からはさらに高くなるとも予想されています。

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NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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