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神戸製鋼・重一生、帝京大学同級生との新人賞争いは「自分を高める材料」。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
学生時代から眼光鋭く。(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

 日本最高峰ラグビートップリーグの神戸製鋼にあって、帝京大学卒のルーキー、重一生が開幕から先発に定着している。

 9月8日に東京・秩父宮ラグビー場でおこなわれた第4節では、NECに29-12で勝利。2試合連続となるトライで先制するなどし、マン・オブ・ザ・マッチを受賞した。

 出身の帝京大学ではレギュラーに定着できなかったものの、神戸製鋼では必死のアピールで主力組に参入。身長170センチ、体重88キロと小柄でもベンチプレスで180キロをマークし、練習態度は勤勉のようだ。存在感を示すのは自然な流れだった。

 この日のプレーや今後の展望を語る言葉は簡潔。負けん気もにじむ。1988年から日本選手権7連覇を果たした名門クラブに、新たな色彩を加えている。

 以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――マン・オブ・ザ・マッチを受賞。

「初めてです。素直に嬉しいです。4試合目にして、チームにフィットできたと感じています。ずっと13番(アウトサイドセンター)をやっていて、そのなかでチームの戦術略を理解してこれました」

――前半開始早々のトライシーンを振り返ってください。敵陣22メートル線付近左でパスを受け取り、連続攻撃の止めを刺した格好です。

「あそこまで運んでくれたチームのおかげです(敵陣中盤のスクラムからフェーズを重ねた)。それにあのゾーンに来たら絶対に取りきって終わることが、チームの流れを作ると思っていた。新人らしく勢いづけられるプレーをしようとしていて、それがトライに繋がってよかったと思っています」

――トップリーグレベルのフィジカリティにも、対応できているような。

「フィジカルの面に関しては自分の強みですし、そこは負けたくないという思いでやっています。(試合後の)疲労度は大学の時と変わってきますけど、トップリーグでも負けてはいない、対抗できていると感じます」

――後半、対するアダム・トムソン選手をタックルで倒した場面は見事でした。攻防の人数で数的優位を作られるなか、自分より17センチ、24キロも大きな元ニュージーランド代表を押し返したのですから。

「身長差も、経験の差もある。そこで自分が受けたら負けだと思いました。外されても飛ばされても自分が勢いを止められればいい、小さいコンプレックスを(気にせず)自分から前に行く…という気持ちでした」

――大学時代より出番が多いですね。

「大学の時は途中から出てチームを勢いづけるという役割がありましたし、ここでスタートとして出ている時もチームを勢いづけたい思いがある。(先発で)出る、出ないに関わらず、そういうプレーができているのはいいことだと思います」

――パナソニックの松田力也選手、トヨタ自動車でキャプテンに抜擢された姫野和樹選手と、大学時代の同期が揃って活躍しています。

「僕のファーストトライを決める前日(第2節があった週)に姫野も力也もファーストトライを取っていましたし、姫野に関してはその日のマン・オブ・ザ・マッチを受賞していた。同じ大学であったからこそライバル視して、自分を高めるための材料として使わせていただいています。僕は新人賞を狙っているのですけど、まずはチームがしっかり勝てるようにやっていきます」

――神戸製鋼の環境について。

「初戦では緊張もあったんですけど、先輩たちが声をかけてくれたおかげで、自分の積極的なプレーができてきたのかなと思います。ただ、出られていることに満足するのではなく、いつメンバーから落とされるかわからないというプレッシャーを自分にかけ続けたいです。出たポジションで、一生懸命やりたいです。

 チームは雰囲気も良く、先輩たちも優しく、伸び伸びさせていただいています。神戸製鋼は僕が小中学校の頃から好きなチーム。家族でファンクラブに入ったりしていて、大阪で試合がある時はラグビースクールの先生に引率されて観に行っていました。大畑大介さん(元日本代表ウイング)などを見て、小学生ながら刺激を受けていました。いま、こういうチームでやれて、夢が叶った気分です」

 大阪・常翔学園高時代は2年時から高校日本代表に入り、2012年度の全国高校ラグビー大会で優勝。もっとも大学選手権8連覇中の帝京大では下級生の頃、プレーに臨む姿勢などを問題視されたこともあったという。

 当時の述懐。

「ふと、自分はなぜ、こんなにわがままを言っているのだろう…と。せっかく試合にも使っていただいているのに、『あれがイヤ』『こんなプレーがしたい』とか考えて…。監督からも色々とご指導がありました。環境に支えられた、というところもあります」

 若き日に壁を乗り越え、いま、日本最高峰の舞台で暴れ回る。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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