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2019年W杯決勝の地で、元ラグビーNZ代表主将マコウ氏が語ったNZ3連覇&日本躍進の鍵とは?

斉藤健仁スポーツライター
4日間、チャリティ活動にいそしんだ元NZ代表主将のマコウ氏(撮影・斉藤健仁)

5月29日、2019年11月2日にラグビーワールドカップの決勝戦が行われる、神奈川・日産スタジアム(横浜国際総合競技場)で、「オールブラックス」ことニュージーランド代表キャプテンとして2度、ワールドカップを掲げたリッチー・マコウ氏によるメディア向けの会見が行われた。

登壇者はマコウ氏と柏崎誠横浜市副市長、元ラグビー日本代表のアンドリュー・マコーミック氏、2015年のラグビー日本代表メンバーだったSO小野晃征(サントリー)の4人だった。

今回、マコウ氏が来日したのは、東日本大震災で被災した子どもたちに対して、世界各国のホームステイ体験などの支援する「Support Our Kids実行委員会」のチャリティ活動に賛同してのこと。昨年7月にはオールラックスで、ともにワールドカップで優勝に貢献したSOダン・カーターも同じ趣旨で来日していた。

◇東北で「ラグビーの持っている強いスピリットを感じた」

5月26日から29日まで、東北、東京、神奈川でチャリティプログラムに参加したマコウ氏は、あらためて日本の印象を聞かれて「ラグビーの練習、準備をしなくていいので、ちょっと不思議な気持ちですね(苦笑)。今回、東北大震災の復興支援の一環で来日しまして子どもたちと、いっしょにラグビーをして楽しい時間を過ごしまして、子どもが笑顔になる瞬間を見ることができ、有意義な時間を過ごしています」とコメントした。

チャリティ活動一連の感想については「釜石の鵜住居地区という、津波で甚大な被害を受けた地域で復興イベントを行いました。釜石は2019年のワールドカップの試合を行えることに興奮していると感じました。このような土地で、ワールドカップが開かれることはラグビーの持っている強い精神、スピリットを東北の人々から感じました。東北に限らず、東京、横浜でもワールドカップ開催にワクワクし、ラグビーの持っている精神を楽しんでいると感じました」と続けた。

◇W杯決勝は「ラグビー選手の誰もが経験したい唯一の試合」

会見の前に、2019年ワールドカップの決勝の地であるスタジアムを見て回ったというマコウ氏は「間違いなく、素晴らしく、決勝にふさわしいスタジアムだと思います。2年後の決勝が、どれくらい素晴らしいものになるのか、今から想像するだけで楽しみです。ファンが7万人で満員なると思います。ワールドカップの決勝に2度立った経験からすると、決勝の雰囲気を作り出すのはファンだと思います。スタジアムは試合をする場所を提供するだけで、雰囲気を作り出すのはファンです。ファンが興奮に満ちた雰囲気を作ってくれると思います」とスタジアムの感想を述べた。

そして、ワールドカップの決勝の時はどんな気持ちになったのかを聞かれて、マコウ氏は「ワールドカップの決勝は、ラグビーをプレーしている選手にとっては誰もが経験したい唯一の試合です。そのとき選手は2つ、感じることがあると思います。そのプレッシャーに萎縮してこわがってしまうのか、世界最高の瞬間、最高の観客の前でプレーすることに興奮する気持ちを持つかです。

選手が決勝のキックオフをした瞬間に感じることは、笛がなってから次の80分間で、誰が勝って誰かが負ける、4年間、準備してきたことが報われるか報われないかです。80分の試合が終わってノーサイドの瞬間、優勝チームの一員となるのは、ラグビー選手としてこれ以上の幸せはない」と経験者ならではの言葉で表現した。

◇「(2019年も)NZが横浜で決勝をやるのが理想的」

ワールドカップ開幕まであと2年あまり。オールブラックス148キャップを誇り、ワールドカップにも4度出場経験のあるマコウ氏は、さらに「数週間前にラグビーワールドカップの抽選会が行われて、どの国がどのプールで対戦するか決まりました。ニュージーランドも含めて、どこで対戦して、どういう準備をして、どこで泊まるのかとプランニングされていくのですが、ニュージーランドが決勝をここ(横浜)でやるのが理想的です。

ニュージーランドの立場から言うと、6月に(ブリティッシュ&アイリッシュ)ライオンズが来て素晴らしいテストマッチが行われ、その後、2019年に向けて準備していくのですが、どう準備するか非常に楽しみです。2011年に母国ニュージーランドでワールドカップが開催されましたが、私の経験から言いますと、2年前から盛り上がりが大きくなったので、これからどんどん盛り上がっていくと思います」と続けた。

◇NZ3連覇の鍵は「もう一度、W杯を取りに行くという気持ちも持つこと」

ニュージーランドが3連覇するための鍵を聞かれて「連覇することもそうですが、勝ち続けるために、常に試合に対する準備をして、常に良くなる、さらにより良くなる準備をできるかが鍵となると思います。大事なことは、2019年のワールドカップもディフェンディングチャンピオンではなく、連覇ではなく、選手たちがもう一度、ワールドカップを取りに行くという気持ちを持つことが大事だと思います」と、連覇中のオールブラックスと言えど、あくまでもチャレンジャーとしての気持ちを持つことの大事さを説いた。

また開催国である日本が大会で成功するために必要なことは「日本が2015年のワールドカップで南アフリカを下した、あの試合を目撃しました。あの試合が世界中に送ったメッセージは、どのチームでもしっかり準備したら、不可能なことはないということです。それを証明しました。これから2年間、素晴らしい準備をすれば、結果がついてくるのではないでしょうか」とエールを送った。

◇ラグビーW杯のいいところは「敵味方関係なく盛り上がる」こと

最後にマコウ氏は、ラグビーワールドカップの意義を「ワールドカップのいいところは敵味方関係なく盛り上がり、大会期間の7週間が一種のお祭りのようになることです。チャンスがあれば、どんどんスタジアムに足を運んで、最高のラグビーの祭典を肌で感じてほしいと思います!」という言葉で締めた。

2015年にジャージーを脱いで、すこしほっそりしたマコウ氏だが、ラグビーに対する熱い思いは変わることはない。彼が現役時代、ピッチの上で見せていたように、今回の来日では4日間にわたってチャリティ活動に献身的に走り回る姿は、多くのラグビーファン、子どもたちの胸を打ったはずだ。

スポーツライター

ラグビーとサッカーを中心に新聞、雑誌、Web等で執筆。大学(西洋史学専攻)卒業後、印刷会社を経てスポーツライターに。サッカーは「ピッチ外」、ラグビーは「ピッチ内」を中心に取材(エディージャパン全57試合を現地取材)。「高校生スポーツ」「Rugby Japan 365」の記者も務める。「ラグビー『観戦力』が高まる」「ラグビーは頭脳が9割」「高校ラグビーは頭脳が9割」「日本ラグビーの戦術・システムを教えましょう」(4冊とも東邦出版)「世界のサッカー愛称のひみつ」(光文社)「世界最強のGK論」(出版芸術社)など著書多数。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。1975年生まれ。

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