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カブスに加わったのは、鈴木誠也とクリス・マーティンだけじゃない。エースやクローザー候補に遊撃の名手も

宇根夏樹ベースボール・ライター
マーカス・ストローマン Jul 16, 2021(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 昨年の夏、シカゴ・カブスは「ファイヤー・セール」を催した。いくつものトレードを成立させ、ハビア・バイエズ(現デトロイト・タイガース)、クリス・ブライアント(現コロラド・ロッキーズ)、アンソニー・リゾー(現ニューヨーク・ヤンキース)をはじめ、何人もの選手を放出した。オールスター・ブレイクの時点で2だった借金は、終わってみれば20に増え、7年ぶりに負け越した。

 けれども、2シーズン続けて負け越すつもりはないようだ。今オフ、カブスに加わったのは、日本プロ野球の経験者2人、鈴木誠也クリス・マーティンだけではない。

 ローテーションを形成する5人の先発投手のうち、2人は新加入となる。年平均額は鈴木を上回る、3年7100万ドルの契約で迎え入れたマーカス・ストローマンは、ロックアウト直前に「エンジェルスはこの先発投手を手に入れるべき!? FA市場に残っているベストは…」で書いたとおり、エース級の投手だ。シンシナティ・レッズから獲得したウェイド・マイリーは、ストローマンとカイル・ヘンドリクスに続く、3番手として期待される。2019年と2021年は、それぞれ160イニング以上を投げ、防御率は3.98と3.37。昨年5月には、ノーヒッターを達成した。

 マイリーの移籍は、レッズの費用削減によって実現した。2022年の契約は1000万ドルの球団オプションで、破棄する場合の解約金は100万ドルだった。レッズは、この100万ドルを払わずに済むよう――その前にトレードを画策したが、まとまらなかった――マイリーをウェーバーにかけ、それに対して名乗りを上げたカブスが、獲得後にオプションを行使した。

 ブルペンには、デビッド・ロバートソンとマーティンのみならず、マイナーリーグ契約でジェシー・チャベスも加えた。3人とも、35歳以上のベテランだが、まだ通用するはず。通算137セーブ&149ホールドのロバートソンは、クローザーかセットアッパーを務める予定だ。これまではピッツバーグ・パイレーツにいたスティーブン・ブロートも、ロングリリーフあるいはスウィングマンとして投げる。

 野手は、遊撃手と捕手に、鈴木以外の外野手も手に入れている。ヤン・ゴームスは、ウィルソン・コントレラスとスタメンマスクを分け合うだろう。アンドレルトン・シモンズは、守備の優れた遊撃手だ。クリント・フレイジャーは、2013年のドラフト全体5位。その資質をフルに発揮するには至っていないものの、2019~20年は計108試合でホームランと二塁打を20本ずつ打ち、OPS.845を記録している。年齢は、鈴木と同じ27歳だ。鈴木の約半月後に生まれた。外野手よりもDHとして、コントレラスと併用になると思われる。

 彼らが加わっても、地区優勝の筆頭候補とまではいかない。ただ、ワイルドカードによるポストシーズン進出なら、可能性は十分にありそうな気がする。

 鈴木のポジションについては、こちらで書いた。

「鈴木誠也はカブスでどこを守る!? ライトにはゴールドグラブ5度の名手がいるが…」

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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