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元「スーパー中学生」寺西成騎が長い苦闘の末に大学先発初勝利。「復活」のその先を求めて

高木遊スポーツライター
公式戦初先発で通算2勝目を挙げた日本体育大3年の寺西成騎(高木遊撮影)

 2023年4月8日、首都大学野球春季リーグ第2週が行われ、日本体育大が武蔵大を3対2で下し開幕3連勝とした(9日の試合にも勝利し開幕4連勝)。

 公式戦初先発ながら5回6安打2失点と粘りの投球を見せて勝利をたぐり寄せたのは身長186センチの大型右腕・寺西成騎(3年・星稜)だ。石川・根上中時代に「スーパー中学生」と称された男は、長い苦闘の末にマウンドに戻り、先週の救援による初勝利に続く2勝目を挙げた。

 2017年11月、静岡県志太スタジアムで行われた第9回 BFA U15アジア選手権で寺西は中学3年生とは思えない圧巻の投球を見せる。守護神を任され3試合3イニングを投げて1人の走者も許さず、ストレートの最速は141キロを記録。当時既に186センチと大柄ながら、しなやかなフォームから投じられる伸びのあるボールは将来を大いに嘱望させた。

 根上中は松井秀喜さんの母校でもあり、松井さんと同じく星稜高に進学。1年夏の甲子園で143キロを計測した。

 だが2年の夏に右肩の関節唇を痛め、3年春に手術。そこから長いリハビリを経ての復活だった。

先週の初勝利時には、侍ジャパンU-15代表と星稜高でともに戦った内山壮真(ヤクルト)から祝福のLINEが届いたそうだ(高木遊撮影)
先週の初勝利時には、侍ジャパンU-15代表と星稜高でともに戦った内山壮真(ヤクルト)から祝福のLINEが届いたそうだ(高木遊撮影)

 目指してきたのは「復活」ではない。古城隆利監督が「怪我する前よりも良い姿で復帰するという意気込みでリハビリやトレーニングに取り組んでいました」と振り返るように、治癒とともに求めてきたのは進化だ。

 グラウンド地下にあるトレーニングルームで黙々とウェイトトレーニングを行い、辻孟彦コーチ(元中日)が組んだランメニューで体をいじめ抜いてきた。その結果、寺西自身が「足も速くなりましたし、出力が上がって最速も上がりました(3月に148キロ計測)」「怪我する前よりも腕が振れてストレートで勝負ができています」と手応えを掴んで、今春から実戦のマウンドに復帰した。

 この日の投球は最速147キロのストレートで押しながら、スライダーやカットボール、フォークといった変化球も要所で決まるなど、さらなる伸びしろを感じさせるもの。辻コーチも「まだまだ速くなるし、コントロールや精度もさらに上がってくるでしょう」と太鼓判を押している。

 あの時アジア選手権をともに戦った内山壮真(ヤクルト)や根本悠楓(日本ハム)は既にプロ野球の世界で活躍。「また同じ舞台で戦いたいです」と、復活のみならず、さらなる高みを見据えている。

 最後に「スーパー中学生と呼ばれることにプレッシャーは無かったのか?」と尋ねると「ありませんでした。注目される分だけ活躍してやるという気持ちです」とキッパリ答えた。

 今後、好投を重ねていけば再び注目を集め、かつて以上の脚光を浴びていくことだろう。

スポーツライター

1988年10月19日生まれ、東京都出身。幼い頃から様々なスポーツ観戦に勤しみ、東洋大学社会学部卒業後、ライター活動を開始。大学野球を中心に、中学野球、高校野球などのアマチュア野球を主に取材。スポーツナビ、BASEBALL GATE、webスポルティーバ、『野球太郎』『中学野球太郎』『ホームラン』、文春野球コラム、侍ジャパンオフィシャルサイトなどに寄稿している。書籍『ライバル 高校野球 切磋琢磨する名将の戦術と指導論』では茨城編(常総学院×霞ヶ浦×明秀日立…佐々木力×高橋祐二×金沢成奉)を担当。趣味は取材先近くの美味しいものを食べること(特にラーメン)。

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