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渡辺明王将、矢倉の深い研究が活きる進行か? 藤井聡太挑戦者が72手目を封じて王将戦第4局1日目終了

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 2月11日。東京都立川市「SORANO HOTEL」において第71期ALSOK杯王将戦七番勝負第4局▲渡辺明王将(37歳)-△藤井聡太挑戦者(19歳)戦、1日目の対局がおこなわれました。棋譜は公式ページをご覧ください。

 渡辺王将先手で、矢倉模様の立ち上がり。今期七番勝負では初めての戦型です。

 藤井挑戦者は袖飛車から雁木に構え、速攻を見せます。渡辺王将は銀を繰り出して3筋から歩を突っかけました。対して藤井挑戦者は7筋の歩を突いて応戦。前例はあるものの、1日目午前から早い進行で戦いが始まりました。

 36手目、藤井挑戦者は銀取りに歩を打ちます。ここまでは今年度の棋聖戦五番勝負第3局と同じ進行でした。

 棋聖戦では、渡辺王将は銀を四段目に出ました。対して本局では二段目に引きます。あまりよくないとされる「壁銀」の形になりますが、こちらが優るというのが渡辺王将の研究だったのでしょう。

 渡辺王将はこめかみに血管が浮き出るほどに集中して考えます。前局でもそうした場面は見られました。

 本局、おそらく渡辺王将の事前準備は周到。その上で何度も確認作業を入れているのでしょう。

 昼食休憩に入るまでに、61手ほど進みました。

 13時30分、対局再開。藤井挑戦者は1時間4分の長考で銀取りに桂を打ちます。対して渡辺王将はそれを放置して、相手の飛車先に歩を垂らします。先に銀を損するため、先の見通しまでなければ指せない一手。しかしそれでバランスが保たれています。

 渡辺王将はあとで桂を取り返し、駒割は銀桂交換。その桂を打って、藤井陣を攻めていきます。コンピュータ将棋ソフトによる形勢判定では、先手がほんのわずかによし。渡辺王将にとっては、わるくない進行のようです。

 18時。立会人の中村修九段は「封じ手の時刻となりました」と告げます。手番の藤井挑戦者はすぐに72手目を封じる意思を示しました。予想の本命は銀取りの歩打ちで、攻め合いの進行です。

 藤井挑戦者が2通の封筒を中村九段に預けて1日目が終了。明日2日目は午前9時に始まります。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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