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「本日、私の国葬が行われます」 安倍晋三氏 “本人”の声の動画公開 AIでの再現に賛否

岡田有花フリーランス記者
YouTubeより。AIで再現した安倍氏の音声で、テキストのセリフを読んでいる

 「皆さまおはようございます。内閣総理大臣の安倍晋三です。本日、私の国葬が厳粛に執り行われます」

 9月27日、故・安倍晋三氏の国葬当日。安倍氏“本人”が語るこんな動画が、YouTubeに公開されました。

 安倍氏は亡くなっていますから、肉声ではありません。安倍氏の声を、AIによる合成音声で再現したものです。

 ですが、音声の再現度は高く、“自らの”国葬について語る内容もリアル。「多くの皆様が今も私を弔うために、長い列を作って参列いただいています 誠にありがとうございます」など、まるで今、実際に見ているかのように話しているのです。

 さらに、「天国からそっと支えています」「もうお別れの時間です」など、故人が語っているかのような内容も。赤の他人が作文した文章のはずなのに、筆者は不思議と、安倍氏が実際に天国から語りかけているような錯覚を覚えてしまいました。

歓迎と批判 賛否両論

 この動画を公開したのは、東京大学AI研究会(東京大学人工知能研究会)と名乗る団体。東大生を中心とした団体だと自称していますが、実際の構成員の姿や、東大との関連は分かっていません。

 同団体は、安倍氏の国葬に合わせ、「故安倍元総理追悼AIプロジェクト」と称し、YouTubeで数本の動画を公開しました。それぞれ、AIで再現した安倍氏の音声を、安倍氏の静止画と組み合わせたものです。

 冒頭で紹介した、国葬について語る動画は、「[AI]安倍晋三元総理大臣より最後のメッセージ」というタイトルで27日に公開されました。

 YouTubeコメントを見ると「安倍さんが亡くなって悲しくて寂しいけれど、声を聞くことが出来て嬉しかったです」「ありがとうございます」など歓迎するコメントが多数投稿されています。

 一方で、死者の音声をAIで再現して勝手に語らせることについて、「死者への冒とくだ」と批判する声もあります。

ルール作りが必要に

 故人の肉声のAIによる再現といえば、故・美空ひばりさん音声と姿を再現して新曲を歌った「AI美空ひばり」がありました。2019年のNHK紅白歌合戦にも出場し、「お久しぶりです。あなたのことをずっと見ていましたよ」など語る様子には、賛否両論が寄せられました。

 音声合成の技術や画像AIは進化し続けていきます。故人の音声や姿をリアルに再現することが、今後は一般の人でも可能になっていくことが考えられます。

 そうなった時、どこまでがOKでどこからがNGなのか。ルール作りが必要になっていくのかもしれません。

フリーランス記者

1978年生まれ。京都大学卒。IT系ニュースサイト記者、Webベンチャーを経て、IT・Web分野を軸に幅広く取材、執筆するフリーランス記者。著書に「ネットで人生、変わりましたか」(ソフトバンククリエイティブ)。

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