K-POPアイドルも務めている!!大規模デモと対峙せねばならない「彼らの悲劇」
毎週のようにソウルの中心部・光化門(クァンファムン)広場で毎週末のように行われている朴槿恵大統領の退陣を求めるろうそく集会。6週連続となる先週末は主催者発表で212万人に参加したとされている。朴槿恵大統領は「条件付きで退陣」を宣言しているが、市民たちの怒りはまったく収まる気配がない。
その様子は日本でも詳しく報じているが、規模が規模だけにさまざまなエピソードも生まれている。光化門広場にある“スタバのトイレ問題”までもがネットで賛否両論になっている状態だが、個人的に気になるのはあの大勢の市民たちと対峙している警察官たちのことだ。
集会の映像を見てもわかる通り、大勢の警察官たちがヘルメットや防弾着を着用してバスやバリケードで塞いだ道路に並び立っている。ヘルメットなどを被っているのでその表情はわかりづらいと思うが、みな、まだ若く屈強ではない。
それも当然だ。彼らの多くは職業警察ではないのだ。その多くが「義務警察」に従事する若者たちなのだ。
韓国では成人男子に約2年間の兵役義務があるが、「義務警察」とは警察の組織に身を置くことでそれが兵役となる軍代替制度がある。日本でも人気のK-POPグループである東方神起のチャンミンやSUPER JUNIORのドンへ、シウォンらが現在、ソウル地方警察庁で義務警察を務めているので、この制度をご存じの方もいるだろう。
(参考記事:東方神起チャンミンやSJのシウォンらが務める“義務警察”という名の兵役)
韓国の複数のメディアの報道によると、毎週のように行われる集会に対処すべく、大勢の義務警察が動員されているという。
義務警察官たちの主な任務は、交通整理、防犯パトロール、集会・デモ管理となっているためだが、その中にチャンミンやシウォンなど芸能人の義務警察官たちが動員されることはないだろう。
彼らは義務警察でも配置されたのは、別名“ホルラギ演劇団”と呼ばれるソウル市警察庁広報団だ。デモや集会よりも、学校や福祉施設に足を運ぶことが彼らの任務である。犯罪防止のための啓蒙活動を実施する、言わば“ソウル警察の顔”的存在の活動に従事している。
(参考記事:【動画】兵役で“ソウル警察の顔”になったチャンミンの近況とは?)
つまり、デモや集会に駆り出されているのは一般の義務警察官たちなのだが、その数が凄い。
ソウル地方警察庁によると、10月29日(第1回)には56中隊・4480名だったが、11月5日(第2回)は145中隊・1万1600名、11月12日(第3回)は148中隊・1万1840名、11月19日(第4回)は120中隊・9600名が集会現場に動員されたという。
現在、義務警察に従事している者たちの数は全国合計で2万5086名(2016年11月)になるそうだが、韓国各地の地方警察で義務警察官として従事している若者たちが、デモの統制に駆り出されているわけだ。
幸いなことにデモ隊と警察たちの衝突や武力行使はあまり起きていないが、兵役という名の国民の務めに従事するために義務警察に入隊した彼らの心中を思うと複雑だ。
今でこそデモに参加する市民たちの前にバリケードを作って対峙する彼らだが、学生生活やサラリーマン生活を送っていたならば管理するほうではなく、ろうそくを片手にシュプレヒコールをする側に回っていたかもしれない。きっと、同世代の若者たちと同じように街に繰り出していたはずだ。
また、息子や兄弟を義務警察に送った家族たちはどんな思いで集会やデモの光景を見つめているのだろうか。そうしたさまざまな思いを想像するだけで、胸が痛む。
最近ではBIGBANGのT.O.PやJYJのキム・ジュンスの入隊が決まっている義務警察。T.O.Pはソウル地方警察庁、キム・ジュンスは京畿道の南部地方警察に配属されるという。
義務警察は一般の現役兵よりも比較的自由が確保されているが、こういった現実を知ると彼らのファンたちもやるせない気持ちになるのではないだろうか。
(参考記事:あの韓国アイドルたちは今、軍隊でどう過ごしている?)
ふたりとも「特技兵枠」で受験しているだけに、デモや集会に駆り出されることはないだろうが、彼らと同じ世代の若者たちが自らの意志とは関係なく、任務ゆえに“民心”の前に立ち塞ぎ、ときに罵声も浴びなければいけないのだ。考えただけでいたたまれない気持ちになる。
そんな悲しき分断を作り出してしまっただけでも、朴槿恵大統領と現政権の罪は重いと言わざるを得ない。