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【京都市西京区】紫式部の氏神様や京の西の鎮守でも茅の輪神事 祇園祭の起源となった牛頭天王伝承とは!

HOTSUU地域ニュースサイト号外NETライター(京都市)

 洛西地域の松尾大社や大原野神社でも芽の輪が登場しています。2024年6月30日に訪れて見ると地元住民や観光客などが茅の輪くぐりをしている姿が見られました。茅の輪とは、毎年1年の半分にあたる6月30日の夏越祓(なごしのはらえ)の際に、神社の参道に設ける、チガヤで作った輪のことです。これを作法どおりにくぐると残りの半年、穢れが払われ、無病息災でいられると言います。昔の人が節気といって、暦の節目を重要視した名残でもあります。

 松尾大社では京都最大級の茅の輪が設置され、家庭に持ち帰って禍を払うための「お祓いさん」と呼ばれるチガヤが授与されていました。「水無月の夏越の祓する人は千年(ちとせ)の命(よわい)延ぶといふなり」という「拾遺集」の和歌の短冊が付けられています。門前では御用達の和菓子店「松楽」の水無月も買い求めることができました。

 今、NHKの大河ドラマでも話題の吉高由里子さん演じる紫式部の氏神様で、中宮彰子や藤原道長とともに実際に参拝したという大原野神社でも境内に茅の輪が飾られていました。こちらは大原野に本社がある「豆腐工房 うえだ」による厳選国産大豆と天然にがりを用いた「夏越豆腐」の振る舞いも行われていました。

 新緑と蓮池のコントラストが美しい鯉沢の池の前でで30年続く「春日乃茶屋」では、昔の農家のおばあちゃんたちが豊作を祝って近所に配ったと言われる「昔のままのよもぎ餅」を、煎茶や抹茶と一緒に食べることができます。ほど良い加減のもちもち感の生地からほんのり甘い小倉あんがあふれ出してくるほんまに懐かしい味です。店主は、「最近は親戚が寄るということも少なくなっている家庭が多いので、伝統の味を守り続けている」のだそうです。

 そしてこの厄除けの茅の輪には伝承があります。奈良時代初期に編纂されたとされる「備後国風土記」には、牛頭天王の神話ともつながる伝承「蘇民将来(そみんしょうらい)」が残されています。諸説ありますが、ある時、牛頭天王が嫁探しの旅の途中で一晩の宿を借りようとしたところ、裕福な巨旦将来は断り、その巨旦の兄の蘇民将来は、貧しいながらも粟で作った食事で精一杯もてなしました。

 感銘を受けた牛頭天王は、蘇民将来の娘に対し、茅の輪をつくって、赤絹の房を下げ、「蘇民将来之子孫也」(そみんしょうらいのしそんなり)との護符を付ければ、末代までも災難を逃れることができると教えたとあります。その後、茅の輪をつけていない巨旦将来の一族は滅んでしまいましたが、蘇民将来の一族は末代まで安泰であったと伝承されています。

 現在の祇園祭は、この神話に基づく、疫病退散の御霊会から始まりました。明治維新以降に廃仏毀釈、神仏分離が国策としてなされるまでは、日本は神仏習合となっていました。牛頭天王がスサノオノミコトとされたのは、それ以後のことです。

 さあ7月1日から1ヵ月間、八坂神社の神事としての祇園祭が始まります。京の暑い夏へお越しください! 山鉾巡行だけではなく魅力がいっぱいです。少しずらして観光してみるのもいいのでは!

大原野神社(外部リンク)京都市西京区大原野南春日町1152 075-331-0014

松尾大社(外部リンク)京都市西京区嵐山宮町3 075-871-5016

地域ニュースサイト号外NETライター(京都市)

 「YAHOO!ニュース ベストエキスパート2024 地域クリエーター部門 特別賞」を受賞 京都をこよなく愛する地域ニュースサイト号外NETの京都市担当タウンクライヤ―です。四国から大阪の元地方紙記者。観光ガイドをしながら京都時空観光案内2024(観光ガイドのための京都案内マニュアル)全19巻や「やさぐれ坊主京を創る 前田玄以の生涯」(京都文学賞一次審査通過)はじめ、京都を題材にした小説なども執筆しています。

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