棋聖位挑戦まであと3勝! 藤井聡太七段(17)斎藤慎太郎八段(26)に完勝で棋聖戦本戦1回戦突破
2月29日。大阪・関西将棋会館において棋聖戦決勝トーナメント1回戦▲藤井聡太七段(17歳)-△斎藤慎太郎八段(26歳)戦がおこなわれました。
10時に始まった対局は19時34分に終局。結果は93手で藤井七段の勝ちとなりました。
藤井七段はこれで1回戦を突破してベスト8に進出。棋聖位挑戦まであと3勝としました。2回戦では行方尚史九段-菅井竜也八段戦の勝者と対戦します。
藤井七段、強豪相手に完勝
両者のこれまで4回の対戦成績は2勝2敗。そしてよく見てみると、いずれも先手番が勝っています。将棋は先手番は少しだけ有利です。そして一般的に、トップクラスに近づくほど、先手の利が大きくクローズアップされます。
事前に先後が決まっているリーグ戦(順位戦、王位戦リーグ、王将戦リーグなど)と違って、トーナメント戦では振り駒でその都度、先後を決めます。本局も対局前に振り駒がおこなわれました。記録係が5枚の歩を振って、「歩」が2枚、「と」が3枚出て、下位者の藤井七段が先手と決まりました。
藤井七段の作戦は角換わり腰掛銀でした。現代将棋の最前線ともいうべき戦型で、日々、新しい手が生まれ続けています。
両者ともにほとんど時間を使わずに進める中、42手目、後手番の斎藤八段の方から先に桂を跳ね出して先攻します。対して藤井七段も反撃し、駒がぶつかった後で、昼食休憩となりました。持ち時間4時間のうち、藤井七段の消費時間はわずかに11分でした。
再開後は、藤井七段も熟考を重ねて時間を使って進めます。角換わりは戦型の特性上、互いに角を手持ちにして激しい戦いとなるため、一手の誤りがすぐに勝敗へと直結します。
藤井「中盤以降、非常に一手一手難しい将棋で、ちょっとよくわからないまま指していたというのが正直なところだったような気がします。(長考したあたりは)手が広い局面が続いているのかな、という気がしました」
中盤の折衝で、ポイントを上げたのは先手の藤井七段でした。藤井玉はそう堅くはないものの囲いに収まっているのに対して、斎藤玉は露出して危険な形です。
斎藤八段は藤井陣に角を打ち込み、玉の上部に馬(成角)とと金を作って、粘りの姿勢を見せます。斎藤八段も元タイトルホルダーで、来期A級に昇級が決まっている強豪です。こうして受けに徹すれば、普通はそう簡単には負けないとしたものです。
しかし藤井七段の終盤の切れ味があまりに鮮やかすぎたようです。
斎藤「ちょっと難しい変化なのかな、と思ってたんですけど、ちょっと中終盤、有効な手段がずっと見えなくて。ちょっと最終盤、粘りを欠いてしまったので、うーん、もうちょっと何かなかったのかな、という反省はありますが・・・。うーん、でもちょっと不利になってしまったかな、という・・・。細かく指されてしまったような気がします」
解説陣の棋士がどう寄せるのかと首をかしげる中、藤井七段は複雑に駒が入り組んだ江戸時代の古典詰将棋を解き進めていくかのように、斎藤玉をきれいに受けなしに追い込んでいきます。そして最後まで、一手のゆるみもありませんでした。
93手目、斎藤八段は桂で王手されたのを見て、投了を告げました。
藤井七段はこれで本戦初戦突破を果たしました。局後のインタビューでは、次のように答えています。
記者「初出場の決勝トーナメントで初戦突破ということで、ちょっと気が早いですけど、3勝すれば挑戦権獲得ですけれども、お気持ちを聞かせていただけますか」
藤井「2回戦以降も全力を尽くして、少しでも上に行けるようにがんばりたいと思います」
記者「挑戦が決まれば、最年少挑戦の記録があるんですけれども、そのへんはいかがでしょうか?」
藤井「そうですね、まだ全然意識するような段階ではありませんし、盤上に集中することを一番にやっていきたいと思っています」
いつものように、落ち着いた受け答えでした。
藤井七段は今年度成績はこれで43勝11敗(勝率0.796)。2位の渡辺明三冠は37勝13敗(勝率0.740)で次第に差がついてきた感があります。3年連続の勝率1位も現実的となってきました。
藤井七段は3月3日、C級1組10戦全勝をかけて、真田圭一八段との対戦があります。
現在は高校2年生の藤井七段。新型肺炎の影響により、藤井七段の通う高校もまた、来週からは休みとなるようです。