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台風一過の猛烈残暑

饒村曜気象予報士
気象衛星「ひまわり」赤外画像(平成29年8月8日12時)

台風5号の雨は引き続き警戒

和歌山県北部に上陸した台風5号が、北陸地方沿岸をゆっくり北上中です(図1)。10日9時には青森県沖の日本海で温帯低気圧になる見込みです。

図1 台風の48時間進路予報(平成29年8月8日11時)
図1 台風の48時間進路予報(平成29年8月8日11時)

中部山岳の影響で、台風の渦は、一時的に日本海側を進む本体の渦と、東海から関東を進む副次的に発生した渦に分かれたため、等圧線は関東地方に伸びた形なっています。

台風5号の暴風域がなくなりましたが、引き続き強い雨雲と伴っています。

図2 地上天気図(平成29年8月8日9時)
図2 地上天気図(平成29年8月8日9時)

通常、日本に上陸する台風は、上空の偏西風に乗ることで速くなります。

しかし、現在の偏西風の位置は、通常より北、具体的には北海道の北まで北上していますので、台風5号から、かなり離れています。

このため、台風5号の動きはゆっくりです。

ただ、日本の南海上で動きがゆっくりしていた時のように、海面水温が高い海域でのノロノロではありませんので、台風の風は次第に弱まります。

しかし、強い雨の期間は長くなります。

動きの遅い台風は、それだけで危険な台風で、油断することはできません。

残暑

台風5号は、南海上から暖かくて湿った空気を日本列島に送り込んでいます。

このため、台風の雨がやみ、日差しが出ているところでは気温が上昇しています。

暦の上では、立秋(8月8日)過ぎの暑さを「残暑」といいますが、1年間を通しての平均気温は、立秋の前後が一番高く、最高気温が30℃以上という真夏日の約半分は立秋後です(表1)。残暑の方が暑くなるということは、珍しいことではありません。

暑中見舞いを出すのは立秋までで、それ以後は、残暑見舞いとなります。

表 平年の真夏日(1981年から2010年までの平均日)
表 平年の真夏日(1981年から2010年までの平均日)

台風5号は、南海上から暖かくて湿った空気を日本列島に送り込んでいます。

これに雨が止んで強い日差しがでいるところでは気温が上昇しています。山越えの気流となる日本海側の地方では、さらに、フェーン現象も加わっています。

明日はもっと気温上昇

アメダスには気温の観測地点が929地点あります。このうち、8月8日は12時現在で、すでに真夏日(最高気温が30度以上)の地点数が394地点、猛暑日(最高気温が35度以上)が13地点となっています。午後は、さらに気温が上昇しますので、猛暑日、真夏日とも大幅に増える見込みです。

台風5号が持ち込んだ暖かい空気が、強い日射によって気温が上昇し、ところによってはフェーン現象が加わるという傾向は、明日も強まりますので、今日以上に残暑が強まる見込みです。

台風による大雨に警戒と同時に、台風一過の猛烈残暑による熱中症にも警戒が必要です。

表の出典:饒村曜(2014)、天気と気象100 一生付き合う自然現象を本格解説、オーム社。

図の出典:気象庁ホームページ

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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