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シリアでドローン爆撃を本格化させ、ロシアと対峙することで逆境を乗り越えようとするアル=カーイダ

青山弘之東京外国語大学 教授
SANA、2023年6月25日

「旗下集結効果(あるいはシンドローム)」(rally ‘round the flag’ effect (syndrome))――政治学においては、戦争など国家にとって重大な事件が、政府に対する国民の支持を高めることをこのように呼ぶ。シリアでは6月下旬に入って、この「旗下集結効果」を期待する動きが活発化している。

シリアに関する日本など西側諸国での数少ない報道では、ロシア軍がシリア北西部で連日爆撃を行っていることが辛うじて確認できる。だが、「旗下集結効果」を狙っているのは、ロシア、あるいはシリア政府ではない。シリアのアル=カーイダとして知られる国際テロ組織のシャーム解放機構(旧シャームの民のヌスラ戦線)、同組織と共闘する同じくアル=カーイダ系の中国新疆ウイグル地区出身者からなるトルキスタン・イスラーム国らが攻撃を激化させたのだ。

シャーム解放機構とトルキスタン・イスラーム党による爆撃

国営のシリア・アラブ通信(SANA)によると、イドリブ県で活動する「テロ組織」が6月22日、政府の支配下にあるハマー県のサルハブ市を無人航空機(ドローン)で爆撃、住宅街に爆弾2発を投下、子供1人と女性1人が死亡、市民3人が負傷した。SANAはどの組織が爆撃を行ったかを明らかにしなかった。だが、ロシアのスプートニク・アラビア語版は、それがシャーム解放機構の保有機だと伝えた。

SANA、2023年6月22日
SANA、2023年6月22日

「自由」と「尊厳」の実現をめざす「シリア革命」の旗手を自認し、「解放区」と呼ばれるシリア北西部を支配するシャーム解放機構は、これまでにも、爆発物を搭載した自爆型ドローンで、シリア駐留ロシア軍の司令部が設置されているラタキア県のフマイミーム航空基地などへの攻撃を試みてきた。だが、そのほとんどは、ロシア軍の防空システムの迎撃によって未遂に終わっていた。

これに対して、6月22日の攻撃は、自爆型ではないドローンが投入され、戦果を挙げた(おそらく初の)攻撃だった。

ドローンによる爆撃は続いた。6月23日、イドリブ県で活動する「テロ組織」がラタキア県のカルダーハ市を爆撃した。SANAなどによると、ドローンは2発の爆弾を投下、うち1発はカルダーハ総合病院脇の農地に着弾、エンジニアのムハンマド・ハーニー・スルターナさん(25歳)が死亡、住民1人が負傷、建物1棟が軽い損傷を受けた。

「テロ組織」はまた、同日にハマー県のダイル・シャミール村一帯を爆撃、爆弾多数を投下し、女性1人が負傷、物的被害が生じた。英国で活動する反体制系NGOのシリア人権監視団によると、負傷していたこの女性は25日に死亡した。

これらの爆撃に関して、フマイミーム航空基地に設置されているロシア当事者和解調整センターのオレグ・グリノフ副センター長は、シャーム解放機構とトルキスタン・イスラーム党が爆撃を行ったと発表した。

新型ドローン

爆撃を報じたSANAは、ドローンの写真を公開したが、その機影はこれまでに目視されたドローンとは異なるものだった。

SANA、2023年6月23日
SANA、2023年6月23日

これに関して、トルコを拠点とする反体制系メディアのシリア・テレビは6月26日、複数の匿名兵器製造専門家の話として、SANAが写真を公開したドローンの機影は、中国が所有するオーストリア航空機製造会社のダイヤモンド・エアクラフト・インダストリーズ社製の有人航空機ダイヤモンドDA42Tで、2021年からシリア駐留ロシア軍の司令部が設置されているラタキア県のフマイミーム航空基地でも運用されている機種だと伝えた。

Syria TV、2023年6月26日
Syria TV、2023年6月26日

ドローン攻撃がロシア軍による自作自演、あるいは誤爆だと示唆するような報道内容だったが、シリア・テレビは、同専門家らの話として、航空機は、自爆攻撃を行わずに済むように設計されており、軽量の爆弾複数発を装填し、ラタキア県やハマー県を爆撃したと付言した。

シリア・テレビはさらに、イドリブ県の複数の軍事筋の話として、一部の「ジハード主義」グループが数年前から、ウズベク人をはじめ、さまざまな国籍のドローン製造の専門家を呼び寄せ、ドローン製造の技術を発展させてきたと指摘した。

激化する攻撃

シャーム解放機構が主導する反体制派は、ドローンによる爆撃と並行して、砲撃や狙撃も激化させた。

シリア人権監視団などによると、6月21日には、「決戦」作戦司令室(シャーム解放機構と、トルコの庇護を受ける国民解放戦線(シリア国民軍)などからなる武装連合体)がイドリブ県のアーフィス村近郊でシリア軍兵士1人を狙撃し、殺害する一方、アレッポ県のカフル・ハラブ村、ミーズナーズ村一帯を砲撃した。また、シャーム解放機構がハマー県のナーウール・ジューリーン村、バフサ村、バラカ村、アイン・ハマーム村を砲撃した。

6月22日には、シャーム解放機構などがハマー県のシャトハ町、アイン・ハマーム村を砲撃した。

6月23日には、「決戦」作戦指令室がアレッポ県西部のバスラトゥーン村近郊でシリア軍兵士1人を狙撃し殺害した。

6月24日には、ラタキア県のスルンファ町近郊とカルダーハ市近郊にロケット弾が2発着弾した。ロシア当事者和解調整センターは、この砲撃が多連装ロケット・システムによるもので、同日にはシャーム解放機構とトルキスタン・イスラーム党による5回の砲撃(うちイドリブ県で3回、ラタキア県で2回)が確認されたと発表した。シャーム解放機構はさらに同日、ハマー県サルマーニーヤ村近郊とアレッポ県第46中隊基地一帯でシリア軍兵士2人を狙撃し、殺害した。さらに6月25日には、シャーム解放機構がラタキア県のバイダー村一帯、アブー・アリー山一帯を砲撃したほか、サラーキブ市にあるシリア軍の軍事複合施設を砲撃したと主張した。

6月26日には、「決戦」作戦司令室がハマー県のジューリーン村を砲撃し、住民2人が負傷した。

ロシア軍による報復爆撃

シャーム解放機構やトルキスタン・イスラーム党の攻撃に対抗して、ロシア軍も爆撃を再開した。

ロシア軍は6月22日、ラタキア県トルコマン山地方のシャフルーラ村一帯を戦闘機1機で2回にわたって爆撃した。また、シャーム解放機構と協力関係にあるホワイト・ヘルメットによると、ロシア軍戦闘機は6月24日、イドリブ県ジスル・シュグール市近郊のバスバト村に対して複数回の爆撃を行い、若い男性2人(兄弟)が死亡、農地で火災が発生し、農業機械が炎上した。

Facebook (@SyriaCivilDefense)、2023年6月24日
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Facebook (@SYRMMC)、2023年6月24日
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ロシア軍はまた同日には、ジスル・シュグール市近郊のブカフラー村、ガッサーニーヤ村、カムアーヤー村、バザーブール村一帯、ラタキア県のトルコマン山地方、クルド山地方に対しても爆撃を加えた。

爆撃は続いた。6月25日、シリアの国防省は声明を出し、「武装テロ集団」が最近数日の間にハマー県、ラタキア県で行った攻撃で多数の民間人が犠牲となり、住民の財産に甚大な損害がもたらされたことへの報復として、シリア軍がロシア軍と協力して、イドリブ県内にある「テロリスト」の拠点複数ヶ所、貯蔵施設複数ヶ所、ドローンの発着所複数ヶ所に対して複数の特殊作戦を実施し、これらの施設、武器、装備、ドローンを破壊、テロリスト数十人を殺傷したと発表した。

声明によると、殺害したテロリストのなかには、アブドゥルカリーム・アブー・ダーウード・トゥルキスターニー、サイフッラー・アブー・アブドゥルハック・トゥルキスターニー、ムスタファー・シャイフ・スィット、アブドゥッラフマーン・サアドゥーン、アブー・カッラール、ムハンマド・サイード・ヌスーフ、ラドワーン・マアタルマーウィー、マフムード・シャイフ・ハーッラといった指導者も含まれていたという。

SANA、2023年6月25日
SANA、2023年6月25日

SANA、2023年6月25日
SANA、2023年6月25日

SANA、2023年6月25日
SANA、2023年6月25日

シリア人権監視団、ホワイト・ヘルメットなどによると、実際に爆撃を行ったのはロシア軍で、イドリブ県のジスル・シュグール市とイドリブ市西部郊外、ラタキア県のクルド山地方のカッバーナ村一帯(クバイナ丘一帯)が標的となった。ジスル・シュグール市に対する爆撃では、民間人6人とトルキスタン・イスラーム党の戦闘員3人が死亡、30人以上が負傷し、イドリブ市西部に対する爆撃では、民間人3人(うち2人はトルキスタン・イスラーム党のメンバーの家族の子供)とトルキスタン・イスラーム党の戦闘員2人が死亡し、複数が負傷した。

Facebook (SyriaCivilDefense)、2023年6月25日
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Facebook (MMC)、2023年6月25日
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ロシア軍は6月26日にも、イドリブ県のザーウィヤ山地方のサルジャ村とアルバイーン山地方一帯を7回にわたって爆撃した。この爆撃では、ザーウィヤ山地方にあるシャーム解放機構の拠点が標的となり、同機構に所属するハムザ旅団のメンバー8人が死亡、複数が負傷した。

(この攻撃に関して、シリアの国防省は6月28日にフェイスブックを通じて、シリア軍がロシア軍の協力ものと、爆撃および高性能精密ミサイルで、武器、装備、偵察用および爆撃用のドローン、盗聴妨害機などを貯蔵していたテロ組織の拠点複数ヶ所を攻撃し、これを完全に破壊、テロリスト数十人を殺傷した、と発表した。殺害したテロリストのなかには、アブー・カラムー・ムーラク、ダーウード・ムハンマド、アブー・サイフ・ムスタファー・サーヒリー、ハイダラ・マフムード・イドリブ、アブー・バラー・アビーン、アブー・サイフー・ハマウィー、アブー・ムジャーヒド・ラビーウ・ガーブ、アブー・ズバイル・サルジー、ラドワーン・ライハーン、アブドゥルハミード・アカル、アブー・アフマド・シャイフ・スィンディヤーンといった指導者が含まれているというーー2023年6月30日追記)。

シリア軍の砲撃

シリア軍もシャーム解放機構の支配地への砲撃を激化させた。

シリア人権監視団によると、6月21日、シリア軍はイドリブ県のマアーッラト・ナアサーン村、キトヤーン村、アレッポ県のカフル・ヌーラーン村、カフル・アンマ村を砲撃し、カフル・ヌーラーン村では子供1人を含む住民3人が死亡、反体制武装集団(組織名は不明)の戦闘員6人と住民1人が負傷した。

6月22日にイドリブ県のサルミーン市、ナイラブ村、マアッルバリート村、ハマー県ガーブ平原のズィヤーラ町、アンカーウィー村、サルマーニーヤ村、タッル・ワースィト村、カストゥーン村、マシーク村、アレッポ県のバスラトゥーン村一帯を砲撃し、サルミーン市で女性2人と子供1人が負傷した。

6月23日には、イドリブ県のマアーッラト・ナアサーン村一帯、ザーウィヤ山地方のファッティーラ村、フライフィル村、スフーフン村、ダール・カビーラ村、ハマー県のズィヤーラ町一帯、アレッポ県のタカード村、バフフィース村を砲撃し、マアーッラト・ナアサーン村近郊では、シャーム解放機構に所属するタルハト・ブン・ウバイドッラー旅団の戦闘員1人が死亡した。

6月24日には、イドリブ県のアルバイーン山地方のバザーブール村一帯、ザーウィヤ山地方のファッティーラ村、フライフィル村、スフーフン村、ラタキア県のクルド山地方のカッバーナ村一帯を砲撃した。

6月25日には、イドリブ県のナイラブ村、ジスル・シュグール市一帯、カフルヤディーン村一帯、イシュタブリク村一帯、ザーウィヤ山地方のカンスフラ村一帯、バーラ村一帯、マアッルバリート村、アレッポ県のカフルタアール村を砲撃し、ナイラブ村で住民1人が負傷した。

6月26日には、イドリブ県ザーウィヤ山地方のバーラ村一帯を砲撃した。

狙いは「旗下集結効果」

シャーム解放機構らによるドローンでの爆撃は、「解放区」で連日連夜続けられているシャーム解放機構の支配に対する抗議デモに対処しようとする狙いがあると見ることができる。

反体制系サイトのイナブ・バラディーなどによると、抗議デモは、5月7日にシャーム解放機構に所属する総合治安機関がイドリブ県のダイル・ハッサーン村でイスラーム主義組織の解放党の幹部(書記長)を含むメンバーや住民を逮捕するとともに、彼らの自宅に侵入して家宅捜索を行い、その際女性1人が負傷したほか、別の女性1人が流産したことを直接の契機とした。

シャーム解放機構は、これまでにも「解放区」内で恣意的な逮捕を繰り返してきたが、この事件によって、住民の怒りが一機に爆発し、イドリブ県のアティマ村、同村近郊のアティマ国内避難民(IDPs)キャンプ、ダイル・ハッサーン村、フーア市、ダーナー市近郊のIDPsキャンプ、サルミーン村、カッリー町、アレッポ県のアターリブ市、サッハーラ村などで、抗議デモが繰り返された。デモは「暴君に正当性なし」(6月9日)などと銘打たれ、逮捕者の釈放、住居侵入拒否、シャーム解放機構およびアブー・ムハンマド・ジャウラーニー指導者の打倒、「恣意的でシャッビーハ的逮捕」拒否などが訴えられた。

デモを主導したのは、夫や子供を逮捕された女性で、男性はシャーム解放機構に逮捕されることを恐れて、抗議活動を行うことを躊躇しているという。

抗議デモは「解放区」だけでなく、トルコの占領下にある「ユーフラテスの盾」地域に含まれるアレッポ県のバーブ市、スーラーン・アアザーズ町、バービカ村、アアザーズ市でも同様に発生した。

Enab Baladi、2023年6月9日
Enab Baladi、2023年6月9日

デモでは、シリアの体制打倒、「シリア革命」の継続も合わせて唱道されたが、シャーム解放機構らがドローン爆撃を本格化し、シリア軍、ロシア軍との戦闘を激化させたことは、一部住民らの反体制感情を刺激し、自らに対する批判の矛先を交わし、支持を回復することを狙っていたと見てとることができる。

だが、期待していたような「旗下集結効果」は生じてはいない。

シャーム解放機構らがドローンによる爆撃を開始して以降も、同機構に対する抗議デモは収まる気配ない。そればかりか、デモの参加者は、ロシア軍の報復を招いた攻撃を批判さえしている。

シリア人権監視団によると、6月25日晩、トルコの占領下にあるアレッポ県のアアザーズ市、シャーム解放機構の支配下にあるイドリブ県のカッリー町、アティマ村、ダイル・ハッサーン村で、住民数十人が抗議デモを行った。各地でそれぞれ数十人が参加したこれらのデモでは、「神聖なるものを犯す者ども…和解を唱道する者ども」などといったシュプレヒコールを繰り返す一方で、シリア軍とロシア軍が合同で行ったとされる同日のジスル・シュグール市に対する爆撃について、「ジスル・シュグールでの虐殺で、私の血は枯れた。アッラーはお怒りだ。奴らは革命家たちに亀裂と不正をもたらした」などと連呼し、シャーム解放機構の責任を追及した。

「テロリスト連合」への布石

とはいえ、シャーム解放機構にとって好ましい動きがまったくなかったわけではない。

クルド民族主義組織の民主統一党(PYD)の民兵である人民防衛隊(YPG)主体のシリア民主軍の政治部門であるシリア民主評議会は6月25日に声明を出し、ジスル・シュグール市に対する爆撃を厳しく非難、拒否すると表明、国連や国際社会に対して、こうした行為を非難し、民間人を保護するために取り組み、シリアでの虐殺の解消に向けてこれまで以上に関与するよう呼びかけた。

PYDは、トルコが「分離主義テロリスト」とみなすクルディスタン労働者党(PKK)の系譜を組む組織で、米国の後ろ盾のもとシリア北東部を北・東シリア自治局を主導している。PYDは、シリア内戦において、イスラーム国だけでなく、シャーム解放機構をはじめとするアル=カーイダ系の組織と鋭く対立を続けており、その限りにおいてシリア政府やロシアの戦略的パートナーであり、シャーム解放機構が主導する「解放区」の反体制派にとっての主敵だった。

シリア民主評議会の声明では、爆撃を行ったシリア軍とロシア軍を名指しで批判していないが、シャーム解放機構の支配地に対する両軍の攻撃への異議を表明するのは異例のことだった。

この声明に関して、シリア・テレビは、数ヵ月前からシャーム解放機構がシリア民主軍との連絡強化を目指し、4月には、双方の治安関係者が、治安・経済面での協力関係構築に向けた会合を複数回開き、シリア民主軍の支配地域やイラクで使用されている武器や装備を入手することも遠くないと見られていたと伝えた。

周知の通り、昨年末からシリアをめぐる国際社会の勢力図は、大きな変化を経験している。中国の仲介によるトルコとイランの対立解消を受けるかたちで、シリアは5月にサウジアラビアとの関係を改善、アラブ連盟への復帰を果たした。また、トルコとの関係も改善の兆しがある。両国はロシア(そしてイラン)を仲介者として、昨年12月に国防大臣会談を、5月には外務大臣会談を開催し、両国の対立解消に向けた行程表(ロードマップ)の作成に着手している。

この行程表においては、シリア難民の帰還、トルコ軍部隊のシリア領内からの撤退とともに、「テロリスト」への対応が大きな争点となっている。ここで言う「テロリスト」とは、具体的にはシャーム解放機構(そして同機構が主導する反体制派)とPYDを指す。シリア政府(そしてロシア)はシリア北西部において前者の勢力を挫き、トルコはシリア北東部において後者の影響力を排除しようとしている。両国がこれを実現するには、トルコがシャーム解放機構を、シリア政府とロシアがPYDを懐柔し、無力化していくことが求められており、双方が水面下で折衝を続けていると言われている。だが、とりわけ、シリア政府とPYDの交渉は、PYDが米国を後ろ盾としていることもあいまって、ロシアの仲介努力にもかかわらず芳しくない。

シャーム解放機構とPYDはいずれも地域情勢の変化に大いに危機感を抱いている。だが、シリアとトルコの関係改善に対応するかたちで両者が連携を強めるのであれば、それはシリア内戦における「テロリスト連合」の結成を意味しており、シリアやトルコにとって好ましいかたちでの均衡再編(均衡崩壊)を誘発するきっかけになるかもしれない。

東京外国語大学 教授

1968年東京生まれ。東京外国語大学教授。東京外国語大学卒。一橋大学大学院にて博士号取得。シリアの友ネットワーク@Japan(シリとも、旧サダーカ・イニシアチブ https://sites.google.com/view/sadaqainitiative70)代表。シリアのダマスカス・フランス・アラブ研究所共同研究員、JETROアジア経済研究所研究員を経て現職。専門は現代東アラブ地域の政治、思想、歴史。著書に『混迷するシリア』、『シリア情勢』、『膠着するシリア』、『ロシアとシリア』など。ウェブサイト「シリア・アラブの春顛末記」(http://syriaarabspring.info/)を運営。

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