台風2号 眼の形からわかる「雨台風」の様相
台風2号の眼が開いてきた
台風の強さを推定するには、現在では主に気象衛星画像をもとにしています。台風は強い風の渦巻きですから、中心の雲の状況からその発達具合が分かります。
この手法が開発されたのは、1973年アメリカの気象学者バーノン・ドボラックによってですが、それまでは飛行機で台風の上までいって、観測測器(ドロップゾンデ)を落として、中心気圧を測ったりしていました。
現在ではそのドボラック法がさらに進化し、雲の頂上温度から雲の発達具合や、雲の流される方向から上空の風向・風速まで分かります。
タイトル画像の左は、今回の台風2号が最盛期だった5月26日正午頃のひまわり画像です。また右は5月29日正午頃のものです。これをみて一目瞭然なのは、台風の眼の形です。最盛期のときには眼が小さくはっきりしていて、台風の中心付近がピンで穴をあけたようになっています。このような形の眼をまさに「ピンホール」といい、危険な台風の代名詞にもなっています。
一方、右の画像は眼が大きくなって台風周辺部も隙間ができ始めています。眼が大きくなるのは、台風の中心で外側に向かう遠心力(えんしんりょく)が強まっていることを示しており、その分、中心の風速は弱められることになります。つまり台風は最盛期を過ぎたわけですが、かといって油断することはできません。
中心付近の最大風速は多少弱くなっても、水蒸気を効率よくかき集めて大雨を降らせる仕組みは変わっていないからです。
台風の眼はさらに変化し、現在はもう無くなっています。
よく台風の事を「雨台風」とか「風台風」という呼び方をしますが、この台風はだんだん「雨台風」としての性格を帯びてくるでしょう。
干ばつの先島諸島には恵みの雨?
沖縄の農業事情に詳しい友人によると、今年の沖縄県、とくに石垣島や宮古島などの先島諸島では雨が少なく、野菜などはこのまま雨が降らないと大打撃を受けてしまうのではとのことでした。上の図をみると、この一か月間の雨量は那覇では平年の48%、石垣島では31ミリで平年の17%しか降っていません。
少雨の地方には適度な雨を期待したいところですが、そうもいかないのが台風です。この台風のコースは沖縄を直撃しそうで、予報円のどこに進んでも強風による被害が出そうです。
また農業被害でとくに心配なのが島バナナです。
沖縄県特有の島バナナは、実が小さく酸味のある独特のバナナですが、このバナナは背丈が高い(4~5メートル以上)ので強風にたいへん弱いのです。
ちょうどこの時期から収穫が始まりますが、10メートル以上の風が吹くと、折れてしまったり、葉がバラバラになって枯れてしまうのです。例年、島バナナの収穫は台風によって大きく影響を受けますが、今年もまだ収穫前のところが多いので大きな被害が無いことを祈るばかりです。
台風進路「黒潮ルート」か
この台風は太平洋高気圧の周りに沿って、ゆっくりと本州付近に近づいてくる見込みです。本州に近づくほど、海水温は低いのですが、前回の記事でもお伝えした通り、日本近海には黒潮が流れており、その水蒸気の補給を受けそうです。
また、日本列島沿いに延びている梅雨前線も今後活発になり、この週末は各地で大雨の可能性が高まっています。
台風の影響が無くなるまでは気象情報に留意をお願いいたします。
参考
5月26日掲載記事「台風2号 「黒潮ルート」で大雨か」