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WBC スーパーウエルター級王者、トニー・ハリソンの故郷愛

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
28勝(21KO)2敗の王者ハリソンは21日にリングに上がる(写真:Shutterstock/アフロ)

 昨年末、ジャーメル・チャーロを判定で下してWBCスーパーウエルター級王者となったトニー・ハリソン。両者は今月21日に1年ぶりとなるリマッチを控えている。

 チャンピオンのハリソンは、生まれも育ちも現在の住居も、ミシガン州デトロイト。その彼がThanksgiving holidayに5万パウンドの食料を地域の恵まれない人々に配った。Thanksgivingとは「感謝祭」と訳され、アメリカンは11月末のこの日に、家族で七面鳥を食べる。日本の盆や正月のように、遠方から家族が集結するのだ。

Photos from Team Harrison
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 ハリソンは言う。

 「俺は自分がどこからやって来たのかを理解している。地域の隣人に何かを還元することの重要性も分かっているつもりだ。今回、助けを必要としている人々に対して何ができるかを考えた。このエリアでは日々、リングにおける12ラウンドの戦いのようなことが続いている。だから、出来る限りのサポートをと考えた」

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 デトロイトと言えばトーマス・ハーンズらを輩出したKRONKジムが有名だが、もはや栄華を誇った同ジムはない。今日、デトロイトでボクシングと言えば、ハリソンの名が挙がるようになって来た。やはり、ジャーメル・チャーロを下してベルトを巻いた点が大きい。

Photos from Team Harrison
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 「チャーロには、覚悟しておけと伝えたいね。試合は間も無くだ。楽しみだぜ」(ハリソン)

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 アメリカ社会は10月の終わりにハローウィン、11月にThanksgiving、そして12月はクリスマスを祝う。だが、それは家族で楽しめる環境が整っている者のみだ。米国の公立高校で教壇に立っていた際、家族と祝日をエンジョイすることを知らない、淋しい目をしたティーンネイジャーを嫌というほど目にした。

Photos from Team Harrison
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 ハリソンはそんな他者の心の痛みの分かるチャンピオンなのかもしれない。防衛戦のリングを期待したい。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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