井岡一翔が覚悟のリマッチで勝利 前王者フランコとの体重差の影響は
ボクシングWBA世界スーパーフライ級タイトルマッチが、大田区総合体育館で行われ、4階級制覇王者の井岡一翔(34=志成)とジョシュア・フランコ(アメリカ)が対戦した。
両者は6ヶ月ぶりの再戦であったが、前日計量で王者フランコが契約体重をオーバーしたため王座を剥奪される事態となった。
そのため、井岡が勝利した場合は新王者に、負け又は引き分けの場合は王座空位に、というルールのもと試合が行われた。
試合の展開
井岡が入場すると大歓声が沸き起こった。しかし、フランコが入場すると会場の雰囲気は一転、静寂に包まれた。
試合開始のゴングがなり、先手をとったのはフランコ。積極的にジャブを突きペースを掴もうとする。
対する井岡は、打ち終わりにパンチを合わせ様子を見る。フランコの動きに慣れてくると、前回の試合より距離を詰め、時おりボディを打ち込み始めた。
フランコも手を出すが、井岡のカウンターを警戒し攻めきれない。
中盤以降も、互いに近距離で打ち合い、一進一退の攻防が続いた。
しかし、フランコに疲れが見え始めると、すかさず井岡がペースを掴み、手数で追い詰め始めた。
試合は最終ラウンドまでもつれ込み、井岡はさらに追い打ちをかけるようにプレスを強め、フランコは足を使い逃げまわった。
試合終了後、判定3-0(115-113、2者116-112)で井岡が勝利。WBA王座獲得に成功した。
体重差の影響
6ヶ月ぶりの試合でリベンジに成功した井岡。
前日計量でフランコが約3キロオーバーしてしまい、一時は開催が危ぶまれたが、
両陣営の協議の結果、当日58.9キロ以内を契約体重として試合を成立させた。
数字だけ見ると4階級上のスーパーフェザー級の体重だ。
体重が重くなるとパワーや耐久力は増すが、スピードやスタミナは落ちる。
試合でのフランコにもそれが表れており、前回より手数が減り、ラウンドを重ねるごとに動きが落ちていた。
フランコの不調もあっただろうが、体重差のある相手を圧倒した井岡には驚かされた。
今回の勝因は「執念のボディ打ち」にあるだろう。
試合後に「倒される覚悟で打ちにいった」と話していた。前回以上にパンチをもらっていたが、リスクを冒してでも、距離を詰め、攻め続ける姿勢が生んだ勝利だ。
近距離での攻防も、前回以上の圧力だったはずだ。
私も経験したが、上の階級の選手には良いパンチを当てても、なかなかダメージを与えられない。しかも、近距離で打ち合えば押し負けてしまう。
それほどリスクのある試合だった。
今回の試合は興行のメインイベントという事もあり、中止という最悪の事態にはならなかったが、せめてグローブのハンデなどが欲しかったところだ。
契約体重を守った選手が不利な状況であるのに、通常の試合が行われるのはフェアではない。
今後は、選手への配慮はもちろん、計量失敗に対してより厳しいペナルティが必要になるだろう。
今後の展開
井岡は試合後のインタビューで、
「王座の重み、もう一度チャンピオンベルトを巻くには、相当な心技体がないと、この場所に立てないんだと1R1R思ってました」
「フランコはハートも強くてグレートなチャンピオンだった」と語った。
試合前にはトラブルもあったが、無事に勝利できて安堵したことだろう。最後には、晴れやかな表情で観客に感謝を伝えた。
次戦は未定だが、今後もこの階級でトップを目指していくようだ。
現在スーパーフライ級には、以下の王者たちが君臨している。
井岡が熱望しているのは、この階級でもっとも評価が高いファン・フランシスコ・エストラーダとの試合だ。
WBAのベルトを獲得したことで、その一戦に近づいただろう。
また、中谷潤人との試合も気になるところだ。
フランコがこの試合に勝利した場合、中谷との統一戦に進む可能性もあった。しかし、井岡が王者に返り咲いたことで、そのチャンスが回ってきた。
日本人世界チャンピオン同士の対決もファン待望のカードだ。
今後もスーパーフライ級のトップ戦線から目が離せない。