9冠馬アーモンドアイがJRA顕彰馬に選出されなかったのは何故か?
アーモンドアイ、37頭目の顕彰馬入りを逃す
7日、JRAホームページにて2022年度の顕彰馬が発表された。
JRAの顕彰馬は2001年4月1日から2021年3月31日までに中央競馬の競走馬登録を抹消した馬の中から選定される。記者クラブを中心に投票権を持つ202名が1名あたり最大4票まで投票できる。
なお、選定が記者投票になったのは平成12年以降で、それ以前は顕彰馬選考委員会の審議により選定されていた。
今回注目されたのは、本年より選考の対象となったアーモンドアイの選出結果だった。桜花賞、オークス、秋華賞の牝馬三冠、二度のジャパンカップ制覇、海外ではドバイターフを勝つなどGI9勝の成績をあげ、JRA賞は年度代表馬(2018年・2020年)、最優秀3歳牝馬(2018年)、最優秀4歳以上牝馬(2020年)に選ばれた名馬だ。
顕彰馬の選定基準は、
(1)競走成績が特に優秀であると認められる馬
(2)競走成績が優秀であって、種牡馬又は繁殖牝馬としてその産駒の競走成績が特に優秀であると認められる馬
(3)その他、中央競馬の発展に特に貢献があったと認められる馬
とされている。アーモンドアイは繁殖にあがって間もないが、1と3が該当するのは言わずもがな、である。
しかし、アーモンドアイは顕彰馬決定の規定票数となる有効投票数の75%を集めることができなかった。これは何故なのか、考察してみた。
■過去記事
女子高生が年上男たちをなぎ倒す!三冠牝馬アーモンドアイが驚異的レコードでジャパンカップを制覇
■【アーモンドアイ引退】日本競馬史上最多!芝GⅠ9勝 《国内GⅠ勝利まとめ》
推し馬への"愛"が名馬の殿堂入りに「待った」をかけた!?
今回アーモンドアイに投票しなかった記者は58名いて、投票された馬は18頭いた。票の内容をみると、記者が過去に選出されなかった自分の"推し馬"を75%に満たないことを承知で投票し続けた結果、票がバラけてしまいアーモンドアイが規定票数に達しなかったようにみえる。
「〇〇が顕彰馬に選ばれていないのは納得がいかない」
「自分が投票しなくても、きっとアーモンドアイの票数は75%に達するだろう」
と考える心理は、それはそれで頷ける。
これら投票された馬たちをみると、それぞれに推したい気持ちはよくわかる。ステイゴールドは現役時の成績は決して安定したものではなかったが、オルフェーヴルやゴールドシップといった個性的で強い産駒を数多く送り出している。芝とダートの二刀流をしらしめたクロフネやアグネスデジタルも捨てがたい…といった調子で、どの馬も"推す"説明ができてしまうのだ。
ただし、顕彰馬はこれまでのJRA史上で36頭しかいない。これらの馬たちすべてがこれほど厳選された域に達しているか、というと言葉に詰まる。
それでも、今回から選定対象となったアーモンドアイは今回を含めて20回のチャンスがある。しかし、これまで選に漏れてきた推し馬の選定対象の回数は毎年1つづつ減っている。なので、アーモンドアイへの投票は他に任せてチャンスが少ないほうを優先するという心理もわからなくはない。
また、今回、最大4頭へ投票する権利を行使しなかった方もいるが、過去たった36頭しかいない、そもそも毎年選出馬が出るとは限らない顕彰馬と肩を並べる域に達している馬か、否か、という判断基準で選定した、と考える方なら賞の重みを重要視し、あえて票を投じる馬を絞ったとしても、それはそれで理解できる。
このような判断基準から、あえてアーモンドアイ1頭に絞って票を投じた方もいただろう。
ちなみにフリーの競馬記者である筆者には投票権はないが、もしも投票できるなら枠は目一杯使いたいので、まず別格のアーモンドアイに1票。続いて競走成績が優秀なブエナビスタ、現役と繁殖の功績としてキングカメハメハ、同じ理由で自身もGIを勝ち更に3頭のGI馬を産んだシーザリオに票を入れたい、と考えただろう。
来年は選定対象に牡馬三冠のコントレイルやクロノジェネシス、グランアレグリア、ラヴズオンリーユーなどが加わる。"選に漏れた推し馬"たちは増える一方で投票がさらにバラける可能性すらある。
昨今は個性を大切にし、多様性が認められる時代でもある。顕彰馬の選定方法を再度見つめなおす時期にきているのではないだろうか。
記者投票もいいが、誰もが納得するほどの成績をおさめた馬については投票を経ずとも顕彰馬とするとか、さらに顕彰馬より基準の緩い賞を別につくるとか、と考えるのは筆者だけではあるまい。