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「知らない人とのやり取りが心配」子どものスマホトラブルを防ぐ3つのポイント

高橋暁子成蹊大学客員教授/ITジャーナリスト
(写真:maruco/イメージマート)

進級、進学の季節になりました。これをきっかけに、子どもにスマートフォンなどのデジタルデバイスを持たせることを検討中という家庭は多いでしょう。子どものスマホ利用には様々なリスクがあります。子どものスマホデビュー時における注意点と対策について解説します。

持たせることに不安を感じる保護者は多い

内閣府の「令和元年度 青少年のインターネット利用環境実態調査」(令和2年4月)によると、インターネットを利用していると答えた比率は、小学生の保護者が 86.7%、中学生の保護者が 95.7%、高校生の保護者が 97.7%になりました。「スマートフォン」は、小学生の保護者では 45.2%、中学生の保護者 では 67.1%となり、高校生の保護者になると 91.3%が利用しています。スマートフォンの所持開始年齢は年々低年齢化しており、スマホを持っていない子どもでもインターネットを使っている実態があります。

また、デジタルアーツの「未成年者の携帯電話・スマートフォン利用実態調査」(2020年4月)によると、子どもに携帯・スマホを持たせる目的は「連絡手段」が最多であり、小学校高学年~高校生の保護者が69.5%、小学校低学年の保護者が59.7%となりました。災害時などに子どもと連絡が取れるようにしたいとか、子どもが塾に通う、両親が働いているなどの理由で持たせる家庭は多いのです。

一方で、持たせることに不安や心配を感じている家庭は少なくありません。小学校高学年~高校生の保護者では、子どものネット利用で不安な点は「知らない人と繋がり、事件等に巻き込まれる危険」(62.0%)が最多に。次いで「使いすぎに起因する健康被害」(54.9%)、「使いすぎに起因する学力低下」(45.1%)などとなっています。

保護者を対象に講演した時に、決まって言われる言葉があります。

「中学の入学祝いにスマホを使わせたら、子どもがいつの間にかはまっていて、いつでもどこでもいじっている。やめてほしいけれど、いくらやめてと言ってもやめてくれない」

「小学生の子どもにスマホを持たせたら、いつの間にか自分の動画を撮ってSNSにアップしていた。知らない人ともやり取りしているようで心配だ」

このように、スマホを持たせた保護者の多くが、子どもの長時間利用や、問題のある使い方を心配し、悩んでいます。何も取り決めや制限もせずに自由に使わせると、スマホにはまってしまい長時間利用に陥ったり、思わぬ危険な使い方をしたりしてしまうことが多いのです。

スマホはインターネット、SNSと親和性が高く、画像や動画を撮影、アップロードも容易で、オンラインゲームなどもできます。楽しく便利な端末ですが、はまって依存状態となったり、様々なトラブルの入り口になったりしやすいことは知っておくべきでしょう。

使い始める前にルールを決め対策しよう

前述の「令和元年度 青少年のインターネット利用環境実態調査」で「ルールを決めている」と答えた人の割合は、小学生の保護者が 88.3%、中学生の保護者が80.4%、高校生の保護者が 62.6%と学校種が上がるほど少なくなります。

ルール内容は、「利用する時間」(66.1%)が最多に。続いて「ゲームやアプリの利用料金の上限や課金の利用方法」(51.8%)、「困ったときにはすぐに保護者に相談する」(51.1%)、「利用するサイトやアプリの内容」(45.9%)、「利用する場所」(40.8%)などとなっています。その他、「送信・投稿する内容」「利用者情報が漏れないようにしている」「メールやメッセージを送る相手」をルールとしている例もあります。

SNSやゲームは、一度使い始めるともっと使いたくなるようにできています。また、知らない人とやり取りしたり、個人情報を漏らしたりしてしまうリスクもあります。しかし、あらかじめルールが決まっていれば、それが指針となり、抑止力にもなります。家庭ごとにどのような使い方をするかについて話し合い、ルールを決めるといいでしょう。

一度自由に使わせた後で制限したいと思っても、聞いてくれないケースがほとんどです。トラブルにあってから後悔しても遅いので、ルールや約束は使い始める前に決めておくのがおすすめです。ルールは、年齢や利用状況に合わせて子どもと話し合いながら随時アップデートしていくといいでしょう。

フィルタリング・ペアレンタルコントロール機能活用を

では、事前にルールを決める以外に、保護者はどのような対策をすればいいのでしょうか。前述の「未成年者の携帯電話・スマートフォン利用実態調査」を見てみましょう。

携帯・スマホの使いすぎを防ぐ対策として、「子どもの携帯・スマホの利用時間制限」の必要性は感じている一方で、「フィルタリングで利用時間の制限や使えるアプリを限定する等の制限をしている」という保護者は24.1%でした。また、「利用時間などのルールを設けているがペナルティはない」(28.5%) 、「子どもの判断に任せている」(23.0%)など、具体的な基準を設けていない保護者も多いようです。「SNS等の利用について子どもと月1回以上話している」という保護者も40.7%いました。

ルールや約束は、決めただけではなかなか実行されないようです。そこで、ペアレンタルコントロール機能などを使うと守りやすくなります。iPhoneやiPadなどのiOS端末にはスクリーンタイム機能、Android端末にはファミリーリンク機能というものがあります。それぞれ無料で使える上、利用時間の長さや利用時間帯、利用できない機能なども細く設定できるようになっています。

たとえばアプリのカテゴリごとに一日における利用時間の長さを設定して、設定した時間が過ぎたら使えなくすることができます。課金など利用させたくない機能を使えないようにしておいたり、一日のうち使えない時間帯(21時〜7時など)を設定しておいたりするのもいいでしょう。なぜそのような設定にするのか、どのような危険があるのかを子どもに伝えた上で、設定するといいでしょう。

同時に、フィルタリングサービスを使うことも大切です。特に小学生など低年齢で使い始めの場合は、フィルタリングサービスに入っておくことで有害サイトや違法サイトなどから守ってくれるので安心です。

いざという時に相談してもらえる関係を

子どもたちは、どのような使い方をすると危険なのか知らないことがほとんどです。たとえばSNSで知り合った人に子どもが誘拐される事件や、未成年の炎上事件などがメディアで報道されていますが、多くの子どもはニュースを知らず、危険性についても知らない状態です。家庭でそのようなリスクについて話し合ったり、安全な利用の仕方についてしっかり学ばせる機会を持ったりすることは大切です。

また、子どもの利用状況を把握しておくことも重要です。普段から、子どもと利用するアプリややり取りする相手、内容などについて会話するようにしておくといいでしょう。中学生など年齢が上がった場合は、保護者に素直に教えてくれなくなることが増えてきます。心配な方は、子どものTwitterやInstagramなどのアカウントを探してこっそりフォローしておくといいかもしれません。

すべての対策をしても、トラブルは起きることがあります。一番大切なことは、困ったことがあったら相談してもらえる関係を築いておくことなのです。「いざというときには絶対に味方になる」ということを伝え、子どもがスマホを使いこなせるように見守ってあげてください。

【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】

成蹊大学客員教授/ITジャーナリスト

ITジャーナリスト、成蹊大学客員教授。SNSなどのウェブサービスや、情報リテラシー教育などについて詳しい。書籍、雑誌、Webメディアなどの記事の執筆、企業などのコンサルタント、講演、セミナーなどを手がける。テレビ・ラジオ・雑誌等での解説等も行っている。元小学校教員。『ソーシャルメディア中毒 つながりに溺れる人たち』(幻冬舎)、『Facebook×Twitterで儲かる会社に変わる本』(日本実業出版社)等著作多数。教育出版令和3年度中学校国語の教科書にコラム掲載中。

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