中国で頻発する「ゼロコロナ」抗議デモ。習近平主席も庶民の不満を認識か?
中国でコロナ対策に反発して抗議活動が頻発している事態について、習近平国家主席が「3年に亘るコロナ禍で不満が溜まっている」などの認識を示した。抗議活動の頻発する現状に対する習主席の考えが明らかになるのは初めて。体制批判まで出始めた状況に習主席は今後どう向き合うのか?
習氏の言い訳?「不満はコロナのせい」
習主席は、今月1日、北京を訪問したEU(欧州連合)のミシェル欧州理事会議長と会談した。この会談の際の習主席の発言内容について、複数の欧米メディアが報じた。
アメリカCNNがEU当局者の話として伝えたところによれば、習主席は、抗議活動を行なっているのは「主に学生」で、コロナ禍が3年に亘っており不満を募らせていると話したという。
ただこの当局者は、習主席が中国語で「抗議(CNN記事ではprotest)」という言葉を使ったのか、コロナ対策をめぐる最近の抗議行動を正確にどう表現したかについては確認できないとしている。
また習主席は、オミクロン株がデルタ株に比べ致死率が低いため、中国政府がコロナの規制緩和に、より前向きになっているとも話し、防疫対策を緩和する可能性を示唆したという。
中国で相次ぐ抗議行動に苦慮?
中国では、厳しい行動制限を伴うゼロコロナ政策が続いているが、このところ、団地ごと封鎖され閉じ込められてしまうといった隔離方法に住民が反発するなどし、各地でバリケードを破ったりシュプレヒコールをあげたりといった抗議行動がおきている。そうした事態は主に外国のSNS上で顕在化した。
特に先月24日、新疆ウイグル自治区、ウルムチの高層マンションで火災が起き10人が死亡した際には、コロナ対策のため消防車が現場に近づけず被害が拡大したなどとされ、ウルムチで大規模な抗議行動が起きた他、北京や上海でも追悼を名目とするデモがおきた。上海のデモと見られるSNS上の映像では、「習近平退陣、共産党退陣」と異例の体制批判の声が上がっていた。
さらに名門の北京大学や清華大学を始め、複数の大学で学生たちがコロナ対策を批判する声を上げている。
ゼロコロナ緩和は目前?
ミシェル議長は、目下、頻発しているコロナ政策に対する抗議行動についても習主席との会談で議題にし、「集会は重要な基本的権利だ」と述べたことなどを明かしていたが、中国側の発表ではこの点には触れられていなかった。
習氏が各地の抗議行動や自身への退陣要求まで飛び出している事態を認識しているとなれば、対応は早いはずだ。コロナ対策の成果を「共産党体制の優位性を示す」と位置付けて、繰り返しゼロコロナ政策の堅持を説いてきた経緯を考えれば、公にはこれまでの政策の非を認めないまま、実際には、ゼロコロナ政策を緩和し、人々の生活や経済活動の自由度に幅を持たせる対策へとシフトしていく可能性は考えられる。
反体制的な言動を許さない中国で、勇気を持って上げた声が中国政府を動かしたとなれば、それは防疫対策の転換点となるのみならず、実は、強権的な体制のもとで口をつぐまされてきた庶民にとって、歴史的な成功体験をも意味する。