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「日本との違いも開きもクッキリ」韓国がアジア大会で突き付けられた厳しすぎる現実とは?

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
ソン・フンミン(写真:ロイター/アフロ)

昨日9月2日に幕を閉じたインドネシア・ジャカルタでのアジア大会。複数の韓国メディアをウォッチしてみると「ハッピーエンディング」という文字が並ぶ。

サッカーはソン・フンミン、野球は人気チアも加勢

9月1日に野球、男子サッカー、女子バレーで日韓戦があり、いずれも勝利を飾ったせいか、「宿命のライバル戦となったバレー、野球、サッカーで“韓日戦全勝”」(『XPORTS News』)「女子バレー、野球、サッカー。韓国、日本を立て続けに撃破“今日は克日の日”」(『ニュース・ワックス』)と鼻息も荒い。

もっとも、そのチーム状況からして韓国のほうが有利であることは戦前から明らかだった。

サッカー韓国代表はソン・フンミンらオーバーエイジ枠をフル活用したチーム構成であったし、野球韓国代表は全選手すべてがプロ。しかも、パク・キリャン、アン・ジヒョンなど各球団の華と言える人気チアリーダーたちもジャカルタに派遣して応援合戦を繰り広げるようにしたほどの入れ込みようだった。

(参考記事:【写真11枚】激かわ「キス顔」も!! アジア大会の“韓国代表チアリーダー”が美女すぎる!!)

期待の美女アスリートに孝子種目も大苦戦

まして、金メダルなら兵役免除という“ご褒美”も付いてくる。戦力面でも目標設定でもモチベーションでも、韓国と日本とでは大きな違いがあった。

それに、むしろ大会全体を通してみると、韓国は決して「ハッピーエンディング」とは言えなかったような気がする。女子バレーは日本に勝ったとはいえ3位決定戦でのことであったし、女子サッカーでは準決勝でなでしこジャパンに敗れている。

女子バレーはキム・ヨンギョン、女子サッカーではイ・ミナなど、人気と実力を兼ね備えた選手が多くて大会前から話題を集めたが、いずれも期待された成績は残せなかったのだ。“美女剣客”キム・ヨンギョンも、“スポーツクライミング美女”キム・ジャインも金メダルには届かった。

(参考記事:アイドル並みの人気と美貌!? アジア大会を盛り上げる“韓国7大美女アスリート”)

そのほかの種目でも韓国は金メダルを多く逃している。

例えば女子ゴルフだ。女子ゴルフがアジア大会正式種目となった1990年北京大会以降、韓国女子は個人か団体でかならず金メダルを手にした。

前回の仁川アジア大会では、イ・ボミ、キム・ハヌル、アン・シネらとともに“韓国美女ゴルファー神セブン”に数えられるパク・キョルが個人で金メダルに輝いたが、今回のジャカルタ大会では個人・団体ともにノーゴールドに終わった。

メダル量産種目であることから“孝子(ヒョジャ)種目”と呼ばれるアーチェリーも、女子個人ではノーゴールド。リオデジャネイロ五輪の金メダリストで、その美しいルックスから“アーチェリー女王”“美女弓師”と呼ばれるチャン・ヘジンなどはメダル獲得圏にも届かった。

韓国のお家芸であるテコンドーも10種目中3つしか金メダルを獲得できず、バドミントンに至っては40年ぶりにノーメダルに終わっている。

女子水泳200メートル個人メドレーで金メダルに輝いたキム・ソヨンなど新たなスターも誕生したが、今回のアジア大会は韓国にとって誤算続きだったはずなのだ。

金50個以下は24年ぶり。総合2位を逃すのは36年ぶり

それは大会を通じて獲得したメダル数にも表れている。大会前は「金メダル65個以上、連続総合2位入り」を目標に掲げていたが、今回は金メダル49個、銀メダル58個、銅メダル70個の総合3位に甘んじた。

韓国が総合2位の座を逃したのは、1994年広島大会以来24年ぶり。金メダル50個に届かったのは、1982年ニューデリー大会以来36年ぶりのことだという。

そんな韓国をしり目に75個の金メダルを獲得し、中国に次ぐ総合2位の座に躍り出たのが日本だ。それも前述したサッカーをはじめ、多くの種目が2年後の東京五輪を見据えた強化と経験の場としてアジア大会に臨み、より多くのメダルを手にした。

韓国スポーツが過渡期にある理由

そんな日本に金メダル数はもちろん、総合順位でも後塵を拝してしまっただけに、韓国スポーツの今後が心配になってくる。

韓国は2016年に、五輪などを目指すエリートスポーツの育成・強化に努めてきた大韓体育会と、社会スポーツ(レジャースポーツも含む)を統括する国民生活体育会を統合させて、すべての国民がスポーツを楽しみ参加できる“スポーツ先進国”を目指している。

だが、結果的には「アジア大会で韓国エリートスポーツの後退が顕著になった」という指摘もある。

(参考記事:派閥争いと不正腐敗に行政がメス。韓国はエリート主義と社会スポーツの共存を達成できるか)

その愛国心を刺激してくれる“日韓戦”を勝利で終えられただけに「ハッピーエンディング」だったかもしれない。だが、その一方で、日本との差が開いている現実も突き付けられた韓国スポーツ。2年後に迫った東京五輪が今から心配になってくる。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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